はるばる荻窪へ! 春木屋は昭和の東京ラーメンを代表する超名店。問答無用の老舗ラーメン店と言えるだろう。創業昭和23-24年。元祖ラーメン激戦区の覇者の味は,微妙に変化しつつも,『変わらぬ美味さ』が引き立つ東京の味そのものである。
ラーメン界で有名なセオリーがある。『春木屋理論』だ。これは,『常連客に常に変わらず美味いと言ってもらうためには,常連客に気づかれることなく,微妙に味を変えていかなければならない』という法則だ。全く同じ味でもなく,全く違う味でもなく,微妙に変化していく味,そして変わらぬ美味さ,これこそが春木屋が常に客に愛される秘訣であり,知恵であり,暗黙に働く技なのである。この理論について、武内伸さんは、当時の春木屋のご主人の言葉を紹介しつつ、次のように述べている。
「『春木屋の味は、いつもかわらない』と言われるが、『変わらない』と言われるためには、常に味を向上させなければならない」
ご主人のこうした理念にも感銘を受けた。
終戦後の昭和23年に店を開き、食糧事情がどんどんよくなるなかで、同じものを出していたら、味が落ちたと言われてしまう。ベースになる味は変えず、客の舌の一歩上の味を出しつづけることが、「変わらない」と言われる秘訣だという。
この言葉は、どんな授業よりもインパクトがあり、リアリティがあった。私はこれを「春木屋理論」と命名し、座右の銘とした。(武内伸、「ラーメン王国の歩き方」、知恵の森文庫、1999)
この春木屋のご主人の言葉は非常に説得力がある。現在のラーメン店でも同じことが言えるように思う。いかがだろうか?
さて,ここのラーメンはというと,見た目はなんてことないシンプルな中華そばって感じ。三角形ののり,チャーシュー,メンマ,ねぎ。いたってノーマルだ。が… スープを飲んでたまげた。なんと旨いスープだ!上品かつソウルフルな味わい。アツアツで舌がやけどしちゃいそう。醤油と煮干しのうま味が口の中に広がるとたまらない気持ちになる。スープの油分も結構多そう… 麺は縮れたコシの強い麺。いや~文句なしの素晴らしいラーメンだった。あらゆる意味で「濃厚化」しているラーメン業界の中でも、全然引けをとっていないインパクト十分のラーメンであった。
このラーメンがあって今のラーメンがある。これがあって,今がある。まさに伝統の一杯と言っていいだろう!
春木屋荻窪本店
東京都東京都杉並区上荻1-4-6
03-3391-4868
無休
11時00分~21時00分