緊急事態宣言下において、「医療崩壊」が叫ばれました。
医師や看護師などあらゆる医療従事者たちが危機的状況下に置かれました。
三密の象徴ともいえる医療機関ですからね。
それに、感染者が集まるのも医療機関ですからね。
今なお、大変な状況が続いていると言われています。
(その一方で、町のクリニック等はガラガラなんだとか…)
***
その一方で、単発的には話題になりつつも、ずっと問題化されてこなかったのが、
福祉施設、介護施設、老人ホーム、グループホーム等の介護従事者の存在です。
新型コロナで亡くなった人の7人に1人は高齢者施設の方だと言われています。
新型コロナで最も危険なのは、高齢者です。世界的に見てもそうです。
人間の生死にかかわる相手を日々お世話しているのが、介護者たちです。
この数か月、介護者の方々も極度の緊張感の中で介護を行ってきたと思います。
…
医療従事者と福祉従事者は、どちらも三密であり、またコロナ感染による影響を強く受けます。
医療法人と社会福祉法人とで、カテゴリー的には違いますが、医療従事者も介護従事者もどちらも、「いのち(life=生活)に向き合う」という意味では、(社会的な立場や地位を無視すれば)等価であり、どちらもとてもわれわれにとって大事な存在です。
しかも、どちらも、「崩壊すれば、死者が増える」という意味でも、等価であり、どちらが上でどちらが下というのもないと思います。
けれど、この2か月を振り返ると、社会的には、後者(介護従事者)の危機についてはほとんど話題にならなかったように思うのは僕だけでしょうか。
ご存知かと思いますが、介護職の人たちは、「3K(きつい、汚い、危険)」というレッテルを貼られ、その中で、医療従事者よりもかなり安い賃金で働いておられます。その立場も、とても不安定で、雇用さえきちんと守られていないことが多々あります。(医療従事者も十分3Kですけど、給与や地位が違います)
なぜ、医療機関に比べて、高齢者福祉機関はこれほどまで社会的に無視されるのか。なぜ、介護者の危機的状況は(医療機関ほどには)叫ばれないのか。
…
医療機関は、「今」「僕らみんな」にかかわる可能性の高い場所です。病気になったり、ケガをしたら、まず病院に行くことでしょう。どこかに痛みがあって、日常生活がまわらなくなったら、医療機関に行くでしょう。連日TVで、危機迫る医療機関の報道も見て、「ヤバい」と思うことでしょう。
今、自分たちにかかわるかもしれない場所や、今、自分が必要となるかもしれない場所については、自分自身のこととして考えられるし、何かあった時に「今の自分」の助けの場になるので、「問題だ!」と叫べるわけです。
しかし、介護施設等は、「今」「僕らみんな」にほとんどかかわる可能性のない場所です。10代~50代まではほぼほぼかかわることのない場所です。当事者として考えるなら、(老人ホームの平均年齢とされる)80歳くらいまではピンとこない場所かもしれません。
けれど、人生なんて儚いもの。一瞬で自分も高齢者になっているんです。僕も目を閉じれば、昨日まで20代だった気持ちでいます。でも、現実はその倍近い年齢に達していて…😢
きっと目を閉じて、また目を開いたら、その倍の80代になっているか、もしくは灰になっているかのどちらかでしょう。一人の人間の「人生(life)」なんて、あまりにも短命で、あまりにも儚くて、あまりにも一瞬なんだと思います。
だから、僕らも、僕より若いみなさんも、あっという間に、「おじいさん」「おばあさん」になり、うまく歩くことができなくなり、うまく立つことができなくなり、トイレにも行くのが辛くなり、ベッドで寝たきりになり、…あの世に旅立つわけです。
その人生の最後の時期に、その人生の終わりを支えてくれるのが、介護者たちなんです。人生の始まりを看護者や保育者に支えてもらい、そして、人生の終わりを介護者に支えてもらい、そうやって、僕らは生まれて死んでいくんです。
何が言いたいかというと、「自分が想像できない、けれど、自分の未来にお世話になるかもしれない介護職の人たちの今の苦しい状況を理解しましょうよ!」ということです。
想像力。
社会的想像力。そういう力が今、問われている気がします。「自分さえよければそれでいい」というのは、まさに「クズの発想」です。「身近な人と自分がよければそれでいい」というのも、エゴイズムの変型に過ぎません。「未来の自分と周囲の人がよければそれでいい」が理想だと思います。「未来の自分たち」に責任をもつ。未来の自分たちについて、今考える。
介護者たちの存在に無関心でいる、ということは、すなわち自分の未来に無関心である、ということになると思います。今だけ、自分だけよければそれでいい、というのは、やっぱり「クズの思想」です。「今も未来も、自分も他人もみんながよければそれでいい」にならなければ、真の幸福な人生の終わりを迎えることはできないでしょう。
…
前置きが長くなりました。。。(;´・ω・)
昨日?、下町ユニオン・ケアワーカーズユニオンによる「政府は、緊急事態の全面解除にあたり高齢者の命と介護従事者の安全を守ってください『新型コロナ関連介護労働ホットライン』報告」が公表されました。
ここに、介護従事者からの相談内容が記載されていたので、そちらを紹介したいと思います。一つ一つの言葉がとても重く、未来の僕らにかかわることでもあるので、是非読んで頂きたいと思いました。「明日は我が身」なんです。
「利用者に移してしまうのではないかと不安。まさに三蜜状態で生活介助している。」(介護福祉士・グループホーム/大阪)
「自分が入所者に移してしまうのではないかと不安。」(介護福祉士・老人保健施設/神奈川)
「熱が出ている入所者の食事介護は、誰かがやらないといけないがガウンなど支給されず不安だ。」(特別養護老人ホーム・看護師/千葉)
「ショートステイは出入りが激しいので感染が怖い。ハイリスクの利用者さんが多いので、緊張します。」(ショートステイ・介護福祉士/東京)
「自分や他の利用者さんへの感染が怖い」(デイサービス・看護師/東京)
「4月中旬からずっと職場に訴えているのに、感染対策をしてもらえず困っている」(デイサービス・ホームヘルパー/千葉)
「『移動』が制限出来ない在宅訪問ヘルパーは、もし自らが感染したらどれだけ周りに感染を広げてしまうか解らないので不安はとても大きい。利用者が熱発しても訪問を拒否する事が出来ない為、サービスは提供する」(訪問介護・その他/神奈川)
「高齢者相手だから感染のリスクが高い。働いている人が不安だ。緊急事態宣言を解除された後が心配だ。 危険手当を出すことにしたが、給与を上げてと言われている。」(特別養護老人ホーム・経営者家族/千葉)
「介護は身体的接触が避けられないので感染が不安だ」(グループホーム・介護助手/神奈川)
「マスクを自腹で用意している」(訪問介護・ホームヘルパー/東京)
「5月初めは消毒液とマスクはほとんどなかった」(ショートステイ・介護福祉士/東京)
「マスクの配布を施設に指導してほしい」(デイサービス・看護師/東京)
「マスクと消毒用エタノールは大分改善されて来たが、今月に入り使い捨て手袋の確保が困難に。 マスクは洗濯で数回利用したり布で自作する事で、エタノールは次亜塩素やアクセルなど他の物を使う事が出来るが、 身体介護用は使い捨てゴム手袋は使い回しが出来ず、代替えや自作は無理。マスクより深刻」(訪問介護・その他/神奈川)
「入所者が感染した場合、病院に入院するまで、私たちは介護するので、その際の感染が心配なのでPCR検査をしてほしい。 自分も60代なので、感染が怖い。辞めることもできない。」(介護福祉士・老人保健施設/神奈川)
「利用者さんの家族が発熱した場合の対応が難しい。検査をやってほしい。」(訪問介護・ホームヘルパー/東京)
「自分が感染していた場合、利用者さんや家族への感染が怖いのでPCR検査してほしい」(訪問介護・その他/神奈川)
「老健で集団感染が起きているのだから、高齢者施設の職員全員のPCR検査を実施するべきだ。」(北海道)
「高齢の親や子どもへの感染が心配なので、自分だけアパートを借りている」 (特別養護老人ホーム・看護師/千葉)
「マスクの配布を施設に指導してほしい」(派遣社員/東京)
「介護の現場の大変さを厚労省はわかっているのでしょうか? 職員は一日に3回、熱のある利用者は1時間に1回、検温しているのですよ!」(ショートステイ・介護福祉士/東京)
「経営者は関係ないと思っている様子なので、感染対策をしっかりするよう行政から指導してほしい。」(特別養護老人ホーム・看護師/千葉)
「事業所単位では要望が出しにくいので、ユニオンから行政に訴えてほしい」(グループホーム・介護助手/神奈川)
「なにかあったらどうしようと思いながら、その時々の出来事に対応する。今日も何事もなかったと思う時間にはアタマがパンパンになる。最近は眉毛の下が慢性的に疲れている。眼精疲労だと思う。ストレスでいっぱい。(デイサービス・介護福祉士/東京)
「施設でクラスターが発生してすべての職員と関係者がPCR検査を受けた。陽性者だけでなく陰性でも2週間の自宅待機となり介護をやる人がいなくなり他施設から応援でなんとか現場はまわっている。法人任せで行政からの具体的な支援がない、補償もない。国や自治体から支援と補償をしてほしい。」(特別養護老人ホーム・介護職員/東京)
「施設の管理者が危機感がなく、いつ集団感染が起きてもおかしくない。心配でたまらない。介護のスタッフも感染予防の知識があまりない。行政から感染症予防の専門家を派遣して直接指導してほしい。」(老人保健施設・看護師)
「自分が最初の感染者になって入所者に感染させてクラスターが発生させてしまうのではと考えると怖くて仕方がない。家に帰っても強迫観念で外出はほとんどしていない。医者からはうつ症状だと言われた。」(老人保健施設・看護師)
「自分も感染が怖いが重症化しやすい入所者に感染させてしまったらと不安で仕方がない。緊急事態が解除されたら電車もラッシュになるので感染リスクが高くなるので怖い。ずっとこのようなストレスの中で働かなければと考えるとせめて特別手当を支給してほしい。」(特別養護老人ホーム・介護福祉士)
「無症状の人もいるので、いつ誰が感染するかわからない。とにかく検査をやってほしい。」(特別養護老人ホーム・介護職員)
「事業所の対応があまりにも各自に任されている点が疑問です。もっと根拠のある徹底した指導、または、感染した時の相談窓口や検査を率先して用意してくれるなど現場の不安感を取り除いく対策がほしいです。」(訪問介護・ホームヘルパー/東京)
「家族から介護の現場で働くことを反対されている。子どもが呼吸器が悪いので、通勤途中での感染も心配。 補償も危険手当もない。勤務日数を減らして安心して働ける職場になってほしい。行政も考えてくれると良い。」 (デイサービス・介護福祉士/東京)
「高齢者の体調や都合により、訪問介護のキャンセルが続き、収入が減った。生活が不安。」(訪問介護・ホームヘルパー/東京)
「介護施設で勤務。かろうじてコロナは出ていない。 これまで以上に神経を使い、感染対策を強化している。マスクやアルコールがなかなか入荷しない、自分で高額なマスクを購入している。2月から現在まで職員一同疲れ果てて精神的にも追い詰められている状況。感染防止の為に 親、娘達 孫達にも会えてない。いつ会えるのか 親にも会いたいと言われ でも会いに行けない。この気持ちをわかってもらえますでしょうか。精神的に堪えているが、自分を保てなくなってきている。どれだけ神経をすり減らして感染予防対策をしているのか わかって欲しい。まだ出ていない介護施設にも精神的苦痛の代償として支援給付金をいただきたい。介護従事者としての願い」(介護施設・介護職員)
*赤線部は筆者によるものです。
この相談内容から、介護者の方々の危機的な状況が見えてきます。
身体的・経済的な不安を抱えながら、今日も明日も、僕らの未来の姿である高齢者の方の命、生活、人生(Life)を支えてくれているんです。
アベノマスクもいいけれど、10万円も大事だけれど、もちろん医療従事者も大事ですけど、それと同じくらい(いや、それ以上に)福祉従事者への支援をしっかりやってほしいと僕は願います。
メメント・モリ、です。。。