Dr.keiの研究室2-Contemplation of the B.L.U.E-

恋愛交差点32-人はなぜ結婚をするのか? そして、しないのか?!

不定期連載、恋愛交差点32話です。

これまで「愛」にかかわる伝統的な概念を見てきました。

エロス、フィリア、アガペー(カリタス)…。

前回の第32話の記事はこちら

これらの愛の概念を踏まえたうえで、次に「結婚」について考えていきましょう。

***

みなさんは、結婚についてどう考えていますか?!

結婚は、ずっと「するのがあたりまえ」と考えられてきましたが、近年はその前提が壊れています。

「結婚なんてしなくていい」

「結婚なんて、最初からまったく考えていない」

という若者もホントに増えてきました(まだ少数派ですけど…)。

事実、50歳の時点で一度も結婚をしていない人(生涯未婚者)の数は増えています。


引用元はこちらです


この表を見ると、1990年頃からぐんぐん未婚者の数が増えています。

2030年には、男性の3人に1人が、女性の4人に1人が生涯未婚者になると推測されているそうです。

(2023年の生涯未婚率は、男性が28.25%、女性が17.85%となっています)

1980年頃までは、もう誰もかれもが結婚しており、結婚できていたわけですが…、、、

それ以降、結婚しない人、結婚できない人が増えている、ということですね。

男性の未婚率はほぼ3割まで達しようとしていて、今後が気になるところです。

世界的にもだいたい同じかんじです

この話には、二つの考え方があります。

①無理やり結婚しなくてもよい、自由な時代になった。

②結婚したくても、結婚することができない苦しい時代になった。

おそらくどちらも「正しい」んだと思います。

はるか昔に結婚した人たちは、「誰でもいいからとにかく結婚しなきゃいけなかった」と言います。

今は、個々人の判断(?)で、結婚することも、しないこともできるようになりました。

そういう意味では、「進歩した」とも言えそうです。

が、、、

その一方で、結婚したくてもできない人も多く生み出しているのもまた事実です。

こちらのサイトにもありますが、生涯未婚者のうちの8割の人が「いずれ結婚する」と答えています。

つまり、結婚する気持ちはある、ということになります。

結婚したい、でも、結婚できないという人が多く出ているのもまた、今の時代の特徴であります。

男女共同参画局によると、「結婚に対する意思について、独身者(これまで結婚経験無し)を見ると、「結婚意思あり」としたのは、20代では女性64.6%、男性54.4%と、20代では女性の方が男性よりも割合が高いが、30代では男女ともに46.4%40代以上は、女性は割合が減る傾向にある。一方、男性の場合は、40~60代も2~4割が結婚願望を持っている」とのこと。

女性たちは20代で結婚を希望しつつも、どんどんその希望は消えていく。

男性たちは20代で結婚を希望しないが、どんどんその希望は募っていく。

なるほど、、、

この非婚化によって、あるいはその非婚化と同時に起こったのが「少子化」でした。

(*この非婚化と、あと「晩婚化」もまた、少子化の一要因になっています!)

当然の話ですが、結婚しない人の数が増えると、子どもの数も減ります。

独身者が増えるということは、当然「子ども家庭」の数も減るわけです。

今の時代、未婚のシングルマザーという道もありますが、まだまだ少数派です。

データ的には、11万人~12万人くらいしか、未婚のシングルマザーはいません(11万~12万もいる、とも言える話でもありますが、、、)。


離婚79.5% / 非婚・未婚 10.8% / 死別 5.3% / その他 4.4%

引用元はこちら


非婚・未婚は、ひとり親家庭全体の10~11%ほどとなっています。

しかも、経済的な支援も日本は乏しいので、未婚シングルマザーの家庭はとても厳しいものがあります。

未婚シングルマザーはまだまだ少数派です。

制度的にも、シングルマザーへの支援はすごく薄っぺらいんです。

だから、「予期せぬ妊娠」をしたら、嫌な相手であっても結婚するしかないんですね。で、どうしてもその相手が嫌なら、中絶するしかない、という考えに至ります。

これもまた、大きな問題であります。

いずれにせよ、結婚する人の数が増えなければ、当然子どもの数も増えません。

とはいえ、非婚化はもうなかなか止められないところまできています

これは、先進国のほぼすべての国で起こっている現象でもあります。

特にフランスでは、非婚者の数が多いで有名な国でもあります。


日本とフランスを長年行き来していて、両国で大きく異なると感じるのもの1つに「結婚」や「家族の在り方」があります。日本ではいまだに「異性と結婚をして、子どもを産み家庭を持つ」ことが、男女とも“理想的”な生き方とされていますが、フランスでは結婚することだけが幸せな生き方ではないという考え方が普通になっていますし、家族の在り方も多様化しています」(ドラ・トーザン)(引用元)


フランスは今、結婚の制度(婚姻制度)そのものを拒否し「脱結婚化」に向かっているそうです。

結婚制度から自由になろう、と。

そして、家族の在り方も多様化してきている、と。

結婚したくてもできない人の多い日本とはちょっと事情は違いますが、結婚しない人の数が増えている、という意味では共通しています。

ただ、結婚したくてもできない人の多い日本と違って、フランスや他の先進国では、結婚しなくても幸せな家庭を築くことができるんですね。家族のバリエーションも豊富ですし、もっと自由で気ままなものになっています。

ここで問いたいのは、

そもそもなぜ人は結婚をするのか

ということです。

動物の世界には、婚姻制度なんてものはありません。

動物の世界は、オスとメスの世界であり、弱肉強食の世界であります。

人間の世界においてのみ、「結婚」があり、その「制度」があるわけですね。

では、なんで人間は結婚なんてものをするのか?

これ、ちょっとやそっと考えただけでは、答えは出てきません。

(*婚姻制度は、歴史的にもすごく複雑で、特にヨーロッパやアメリカ(欧米)で法的にガチガチに作られたものであります。(明治時代以前の日本の婚姻制度なんてゆるいものでありました…)

でも、「なぜ結婚したのか」については、わりといろんなデータがあります。

まずは、僕もかつて愛読していた『ゼクシィ』によると…


1位:これから先もずっと一緒にいたいと思ったから
2位:これ以上の人には出会えないと感じたから
3位:安心できる場所が欲しかったから
4位:子どもが欲しいから

引用元はこちら

ゼクシィは結婚の専門雑誌👆


となっています。

1位と2位は、簡単に言えば「永遠の愛(ロマンティックラブ)」を感じたからということでしょうか。

最高のパートナーと一生を共にしたいと思う気持ちは、まさにRomantic loveであります。

Romantic loveについての過去の記事(恋愛交差点21)はこちら

(「ロマンティック・ラブ・イデオロギー」という言葉は知っておくといいかも!)

3位は、いわゆる「親密圏」への願望、ということになりそうですね。

安心できる場所=安心できる人(また安心を与えられる自分)、なかなか難しそうですね…(;´∀`)。

相手も自分も安心を与えられる人じゃないと、安心できる場所ってつくるの、難しいですからね。

4位は、まぁ、そうなんでしょうけど、フランスみたいに未婚でも安心して赤ちゃんが産める社会になるのもまた、一つのアンサーかな?!とも。

でも、「子どもが欲しいから」で結婚して、それで幸せになれるんでしょうかね?!

特に若い時は注意が必要だと思います。というのも、「赤ちゃんが欲しい」で結婚しても、結構多くの人がその後に苦しんでいるケースが多いので…。子どもが欲しいからという理由で結婚するのって、分かる話ではあるけど、それって理由になるのかなぁって思うところではあります。

(若くして「赤ちゃんが欲しい」と強く思い、あまり相手を吟味せずに結婚して、その後、その相手に幻滅して離婚する若年夫婦をわりと多く見てきました…)

この4つの理由のどれを見ても、ソクラテスの言う「徳」(知識、勇気、節制、正義(&ケア))がないと、結婚しても、すぐに壊れちゃいそうですね…。

次に、男女共同参画局が出した調査結果を見てみましょう。

少しコンパクトにまとめると・・


結婚したい理由(独身の男女の比較)

20~30代、40~60代の男女ともに「好きな人と一緒に生活がしたいから」が約5割、

20~30代では「子供が欲しいから」「家族を持ちたいから」「精神的な安らぎの場を持ちたいから」「一人でいるのは寂しいから」が2~3割、

40~60代では「家族を持ちたいから」「精神的な安らぎの場を持ちたいから」が約2割となっている。

結婚したい理由(独身の男女間の差)

20~30代では、女性優位なのが、

経済的な安定を得たいから」(女性17.0%、男性7.4%)、
「老後が心配だから」(女性15.9%、男性7.8%)、
「両親や親類を安心させたいから」(女性19.6%、男性12.4%)、
「子供が欲しいから」(女性26.9%、男性19.9%)、

男性優位なのが、

「好きな人と一緒に生活したいから」(女性51.4%、男性52.7%)、
社会的に認められたいから」(女性5.9%、男性7.1%)、
家を守る必要があるから」(女性1.5%、男性2.7%)となっている。

40~60代では、

「経済的な安定を得たいから」(女性16.8%、男性4.0%)、
「家から出たいから」(女性7.5%、男性1.4%)

「好きな人と一緒に生活をしたいから」(女性44.0%、男性49.0%)
「一人でいるのは寂しいから」(女性13.6%、男性18.6%)

引用元はこちら


これらを見ると、大きくわけて5つの要因があるかなと思います。

①相手との間に「永遠の愛」を見たから(ロマンティック・ラブ)
②精神的な安らぎを得たいから(親密圏への希求、孤独の回避)
③経済的な安定を得たいから(お金、老後の心配)
④子どもが欲しいから(親になりたい、家庭をもちたい)
⑤社会的承認・地位を得たいから(家、親、親族への配慮)

こうやって見ると、ゼクシィの結果と重なる部分もありますね。

でも、この5つを見ると、すごく利己的な感じもします。

特に②、③、⑤は、かなりエゴイスティックな理由での結婚になっているように思います。

①については、エロス的な要素が強いですが、リスクもそれだけ高いように思われます。

④については、それが結婚の理由なのか…、という気もしなくもないですが、わりとこの理由で結婚に踏み切った人も結構多くいるように思われます(つまり、相手は(よほど酷くなければ)誰でもいい、というような…)

この5つが主な「結婚する理由」になりそうです。

こう見ていくと、結婚する理由って、そんなに深い理由ではないのかも…と思えてきます。

っていうか、結婚する理由ってそんな単純なものではないのかな?!って。

言葉にして、これ!っていうような理由ってないのかもしれません。

壇蜜さんの結婚理由はとても印象的です。ひとりで生きられる自信がついたから、と

また、「予期せぬ妊娠」をした場合は、理由も何もないわけでして…。

赤ちゃんができたし、相手もそれほど嫌でもないし…、と思い、結婚に踏み切る人も少なくないでしょう。

結局は、自分がどの時点でどのタイミングで結婚するかを決めなきゃいけないって話でもあります。

自由恋愛の時代だからこそ、だれとどう結婚するかを自分で決めなきゃいけないってことですよね。

ただ、いずれにしても、結婚をする場合、誰か一人を「選択」しなければいけません。

神谷美恵子さんは(1982年に出した本の中で)こう語っています。

そもそも相手をえらぶには何らかの価値基準が要るし、異性への姿勢、態度といったものが関与する。ここで大きくものをいうのは幼時からふんい気[雰囲気]のように吸収してきた両親たちのありかたであろう。同じ親から生まれた、性質のひどくちがう子どもたちの場合でも、異性に対する態度がきわめてよく似ていることが多い。すでにこういうかたちで親は無言のうちに子の結婚にまでプラスにもマイナスにも影響を及ぼしてしまうのだ」(神谷美恵子、こころの旅、p.111)

最後に、、、

28歳女性のHさんのお話を聴いてみましょう。

激しい恋愛感情を抱く相手じゃなくて、妥当な相手がよい、という話です。

今(結婚)を考えるんだったら、すごい好きな人と結婚しなくてもいいんじゃないかって。結婚生活が円満に進む人と結婚した方がいいのかなって。結婚して子どもが欲しいのが強ければ恋愛感情が強くなくても、結婚生活が円満に続けば、例えば仕事をしてるとか、感情の起伏が少ないとか、家族を大事にするとか、あるじゃん。そういう条件を選んだ方が恐らく良い(大森美佐、「愛-性-結婚」の現在地、現代思想vol.49-10, p.114. 下線部筆者)

ですって。

28歳にもなると、恋愛感情を優先しなくなるんですかね?!

それよりも、「円満な結婚生活」、「結婚生活の円満さ」を求めているように思われます。

その円満さを、どちらか一方が死ぬ時まで続けられる人が、Hさんの理想?の結婚相手となります。

これって、言うのは簡単ですが、その「円満さ」を何十年とキープし続けるのは、至難の業のような気もしませんか?!

お互いが互いに尊重し合い、お互いが「円満な結婚生活」を過ごせるよう、お互いが努力しなければなりません。結婚後は、同じ屋根の下で、共同生活をしながら、「家庭」をまわしていかなければなりません。

家族を生きる主体・当事者となるわけですからね。

ここが、生まれてきた家庭との大きな違いだと思われます。

車の比喩を使えば、生まれてきた家では、後部座席に乗って黙っているしかない。けれど、自分が築く家では、運転席に乗って、自分で運転して、自分で行く先を決めなければいけない。しかも、その車には、ハンドルもブレーキも二つあって、二人で運転しなければいけない、ということになりますね。

大変なことであります。

***

ってことで、今回は「結婚」についての一般的な見解について見てきました。

みなさんはどうやって、どのタイミングで、誰と結婚するんでしょうかね?!

あるいは、誰とも結婚しない、という道を歩むのでしょうか?!

次回のテーマは、「夫婦とは何か」について考えたいと思います。

思想史的には、「良妻か、悪妻か、どちらがよいか」であります。

ソクラテスの名言があります。


By all means marry; if you get a good wife, you'll become happy. If you get a bad one, you'll become a philosopher.

いずれにしても、結婚しなさい。もし君が良妻を得たならば、君は幸せになるだろう。もし君が悪妻を得たならば、君は哲学者になるだろう。

Heirate auf jeden Fall! Wenn du eine gute Frau bekommst, wirst du glücklich. Wenn du eine schlechte Frau bekommst, wirst du Philosoph.(参考


これもまたとっても論争的であります。

今の時代で言えば、「良夫」「悪夫」の問題でもあります。

これについて、次回、考えてみましょう!

夫婦とはどうあるべきか?!

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