恋愛交差点35話です。
前回は赤ちゃんが誕生した後の夫婦関係について語りました。
今回は、夫婦関係の終わり、つまり「離婚」についてお話したいと思います。
離婚とは、夫婦関係の終わりであり、また双方にとっての新たな旅立ちでもあります。
新たな旅立ちというと、聞こえをはいいですが、とても大変な作業になります。
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離婚とは何か。
これはとても大きな問いであり、一言でこれ!という答えはありません。
定義的には「婚姻関係にある生存中の夫婦が、法律上の婚姻関係を解消すること」であります。
法的な婚姻関係の解消が離婚であります。
その離婚をする理由は実に多種多様であり、一つとして同じ理由はないなって思います。
ただ一つ(心理学的?に)言えることは、
「もうこの二人ではやっていけない」
とどちらか一方(あるいは双方)が固く決意している、ということです。
多くの場合、夫婦の一方が離婚を決意し、もう一方はそれに気づいていない、という風になっています。
離婚の背景には、夫婦の一方の長い長い蓄積といいますか、長く苦しい日々の生活があります。
離婚を決意する夫婦の一方は、もうそれまでに何度も何度も「もうすこし頑張ってみよう」「もうすこし信じてみよう」「僕(私)が耐えればやっていける」、「せっかく結婚したのだから…」、「あとすこし、もうすこし…」と、自分に言い聞かせ、ず~っと我慢してきたんです。
なので、離婚話を切り出す、という時点で、相当な覚悟と決意があるわけですね。(それは、レベルは違えど、恋愛関係の解消においても同じことがいえると思います)
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他方で、離婚話を切り出された方は、たいてい「ええ? なんで??」と驚くわけです。突然、離婚話を打ち明けられて、その時に初めて動揺するわけです。(動揺しなければ、とっくの昔に夫婦の関係は壊れていたということになります)
「どうして?」「なんで?」「何が悪かったの?」「いきなり突然何を言い出すのか?」「お前は正気か?」…
離婚を告げられた方は、まさに「寝耳に水」であります。
その後、告げられた方は、カッとなって怒ったり、あれこれと説得を始めたり、しゅんと落ち込んだり、感情的な大きな揺れを経験します。そして、どうにかやり直せないか、と考えるのです。
でも…
離婚を切り出す方は、それ以前からず~~っと思い悩んできたんです。ずっと頑張ってきたんです。ずっと我慢してきたんです。耐えに耐えてきて、もう無理だ…と決意したからこそ、離婚話を切り出しているんです。
ここに夫婦間の大きな隔たり(温度差)があるんです。
離婚を告げられた方が何を言っても、何をしても、どうふるまっても、離婚を告げた方の気持ちを変えることはできません。なぜなら、離婚を告げた方は、別れを固く決心しているからです。
この話は、かつて僕が翻訳したシュトロバッハさんの本に詳しく書いてあります。
この本を読んで、離婚する夫婦の間にある溝についてよく学べました。
離婚を告げる側と告げられる側では、まったく異なる状態にある、ということについて知りました。
もちろん夫婦双方がどちらも「離婚したい」と強く思っているケースもあるので、一概には言えませんが…。
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このシュトロバッハさんの本の中で、自身の離婚を受け入れ、乗り越えていくプロセスを、(末期がん患者の)「死の受容」のプロセスを明らかにして有名となったキュープラー・ロス(Kübler Ross)の5段階モデルで説明している箇所があります。
ロスのこの本は1969年に出版されました。
キューブラー・ロスの名著『死ぬ瞬間』。
原著である『On Death and Dying』も入手できます。
ロスの死の受容のプロセスは以下の通り。
👇👇👇
自らの死を知り、ショック(Shock)を受けたのちに、歩み得る道として…
STAGE1 Denial and Isolation(否認と孤立)
「いや、私のことじゃない。そんなことがあるはずがない」
「他の人と間違えているんだ」
「一人にして。放っておいて」
STAGE2 Anger(怒り)
「どうして私なのか」
「どうしてあの人じゃなくて、私なのか」
「もっと私に気を配れ」
STAGE3 Bargaining(取引き・交渉)
「お願いだから…」
「神は私をこの世から連れ去ろうと決められた。そして私の怒りにみちた命乞いに応じてくださらない。ならば、うまくお願いしてみたら少しは便宜をはかってくださるのではないか」
STAGE4 Depression(抑うつ・絶望)
「…」
「もう闘う力はない…」
STAGE5 Acceptance(受容)
「これが運命だったんだ」
「これが私の人生なんだ」
というようなプロセスを歩む、とロスは考えました。
これはあくまでも可能性としてのプロセスであり、誰もがこの道を歩むというものではありません。
でも、(個人的には)STAGE4までは、だいたいの人が通る道だと思います。
…
自分自身の死を受け入れるのに、5段階のプロセスがあるとロスは語りましたが、それと同じように、離婚の受容についても、そのプロセスがある、とシュトロバッハさんは言うのです。
離婚を告げられた方は、ロスのこの5段階のプロセスを経て、離婚を受容していく、と。
もちろん誰もが必ず受容できるというものではありません。
受容できないこともあります。
むしろ、受け入れられる人の方が少ない…かもしれません。
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離婚を告げられた方がこの離婚の受容をすることが、その後の夫婦関係にとって極めて重要になってきます。
特に「子どものいる夫婦」においては、この受容があるかないかで、その後の未来が変わってきます。
夫婦の双方が自分たちの離婚を受け止め、受容し、そしてそれを克服することではじめて、「新しい子ども家庭」のヴィジョンが見えてきます。
「私たち夫婦の離婚はやむを得ないとして、今後どうやって我が子を育てていくか」
という話もできるようになってきます。
もちろん離婚はとてもデリケートな問題なので、夫婦の双方が完全に受容することは極めて困難だとは思います。ただ、ある程度しっかりと受容しないと、その後の関係を維持することはできなくなります。
日本の離婚家庭の問題はまさにこの点にあると言えるでしょう。
海外に比べて、離婚調停委員が身近にいないんです。
子どものいない夫婦の離婚であれば、きれいにさっぱり赤の他人と割り切ることもできるでしょう。でも、子どものいる夫婦の離婚の場合、子どもにとっては、いつまでもずっと「パパ」と「ママ」であることには変わりありません。
男性と女性の関係、夫と妻の関係は切れることになっても、子どもがいる限り、パパであり、ママであることを降りることはできないし、また、それを子どもはーその根本においてー望んでいません。
子どもをもつ夫婦が離婚を決める際、どこまで双方が冷静に、そして、どこまで子どものことを考えてこれからのことを決めていけるかがとても大切になってきます。
「親権」についても、本来であれば、子どものことを一番に考えている方の親がもつものだと思います。女性だから、とか、稼ぎがあるから、とか、そういう理由ではなく、子どもを第一に考えているから、という理由で、親権問題も考えたいところであります(なかなかそうはならないんですが…)。
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最後に、、、
離婚は、別れであり、悲しいものですが、その一方で、「新しい未来」への第一歩です。
離婚は、一つの男女の関係の終わりであり、また、双方の新しい人生の始まりでもあります。
キューブラー・ロスも、上の五段階の後に「希望」について語っています。
離婚の先には、希望があり、またより輝かしい未来が待っているんです。
離婚をネガティブなものと捉えるのではなく、「自分自身の成長のためのステップ」と考えたいところであります。
実際に、離婚をしたことで、ぐっと人生が広がった人はたくさんいます。
ずっと辛く苦しい日々が続いていたけど、離婚を契機に、一気に自由と解放を感じている人も多くいます(女性だけでなく、男性も…)。
最初はなかなか離婚という現実を受け入れられなかったとしても、結果として、「こうなる運命だったんだ」と受容し、そして、次の未来に向けてその第一歩を踏み出すことができるなら、それはそれで「正しい選択」だった、と言えるでしょう。
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というわけで、今回は「離婚」の話でした。
恋愛交差点という観点からすれば、離婚もまさに「交差点」の話だと思います。
離婚もまた、恋愛の一つの帰結と言えるでしょう。
次回は、その離婚の先、「再婚」について考えてみましょう。
再婚とは何か。再婚によって人はどうなるのか。
子どものいるパパ、ママの再婚は、どうなるのか…。
離婚後の男女の恋愛について語ってみるのもいいかなと思いますので。
ステップファミリーやパッチワークファミリーについて考えてみましょう!
ステップファミリーのきほん!
ギクシャク家族がふんわり家族になるまで、ですって!
ステップファミリーの本もいっぱいでています。