人生はいつ、どこで、どうなるかなんて全く分かりません。
僕はポーランドには、ただ「アウシュヴィッツ絶滅強制収容所」を訪問したくて(する必要があって)やってきただけでした。ところが、クラクフに向かう途中の電車の中で、一人のポーランド人と出会い、全く違った滞在となりました。もちろんアウシュヴィッツ~ビルケナウには行きましたし、そこでいっぱい学んできました。しかし、それ以上の「出会い」があったんです。
まずはこの記事をお読みください(苦笑)
…そういうわけで、ポーランドで初となる赤ちゃんポスト「オクナ・ジェチャ(命の扉)」を目指して、ホテルを出発しました。
昨夜、ホテルのフロントの人の力を借りて、行き方(アクセス)を調べました。
オクナ・ジェチャに行くには、駅前からトラム4か、トラム14に乗って、「Bronowice(ブロノヴィザ)駅」まで行きます。そこから徒歩で、オクナ・ジェチャを目指します。
ここが、そのブロノヴィザ駅です。
(来るまでも、本当に大変でした。トラムに乗るのも、もうそれだけで一苦労でした)
こんな感じの場所です。
まさに、クラクフの郊外、といった趣きの場所でした。結構、人はいっぱい住んでいそうです。
クラクフ駅からは、だいたい15分~20分くらいかな。ドイツやオーストリアのトラムに比べると、かなりゆっくりと走るトラムでした。
どうやらこのストリートの先にあるようです。あまり人通りは多くありませんが、それなりに人の往来はあります。
住宅街、といった感じです。
この先ですかね。
このあたりで、もう僕の心はドキドキでした。
「いったいどうなるんだろう」、と。
アポイントメントも取ってない。ポーランドもロクにできない。それで、突然外国人が来たら、どう思うだろうか。
本当にドキドキでした。(しかも、初めて来た異国の地、ですからね、、、汗)
そして、遂に、、、
着きました。
ここが、教えてもらった赤ちゃんポストのある建物の住所です。
分かりますかね?
赤ちゃんポスト、、、
これが、ポーランドの赤ちゃんポスト、オクノ・ジェチャです!!
ピンクの文字がとてもかわいく見えます。パンフレットなどは置いてありません。すごいシンプルです。これまで見てきた赤ちゃんポストよりもかなりシンプルな赤ちゃんポストです。本当に、郊外のとある街中の通りにそっと存在しているかのようでした。
遂にたどり着きました。
まさか、まさか、ポーランドの赤ちゃんポストを訪問することになるとは、、、
かなり低い位置に設置されています。こんなに低い場所に設置されている赤ちゃんポストは見たことがありません。
しゃがんで、ようやく赤ちゃんを預け入れられる感じです。
ここに17人の赤ちゃんが預け入れられているんですよね。。。
ちょっと反射してますが、、、汗
(38度に温められたベッドがあって)とても綺麗にされています。
さて。
ここからが問題です。ここまで来たら、中まで見せてもらいたい。しかし、この建物、入り口がないんです。扉もないし、ドアもない。唯一、家の裏側に続く柵に頑丈層な外扉があるだけです。しかも、インターフォンが見当たらない。
しばし、立ちつくしました。「もう、帰ろうか…」、とふと思いました。「ここまで来たのだから、上出来だ。もういい、帰ろう」、と思いました。すごい葛藤しました。「ここまで来て、何もアクションしないで、帰るのか? でも、どうしようもない」、と。
ふと、建物の中2階の窓が空いていることに気づきました。英語で、「すみません!」と何度かやや大きな声で読んでみました。が、何の反応もなしこの時、僕の胸はバクバクいっていて、失神しそうでした(苦笑)。
何も返答がないので、帰ろうとかと思ったその時、、、
何やら、隣の家に住んでいる60歳くらい(?)の女性がゴソゴソと外で何やらやっているようでした。その瞬間、僕は何も考えずに、その「おばちゃん」に声をかけに言っていました。
英語で話しかけると、流暢な英語で返答してくれました。
なので、僕が日本から来たこと、赤ちゃんポストの研究をしていること、そしてこのオクノ・ジェチャの中が見たい、ということを伝えました。。
そうしたら、「あら、そう!! じゃ、私が着いていってあげるわ。いらっしゃい! どうぞどうぞ!」、と言って、上に書いた外扉の脇にあるブザーを押しました(あー、そこにあったのか、、、的な)。この、おばちゃん、すごいパワフルで、即行動!って感じの人でした。僕は、ただ黙って、着いていくだけでした。
そして、インターフォン越しに、ポーランド語で、(おそらく)「ちょっと!! 日本の大学の先生があんたのところの赤ちゃんポストを見に来てるわよ。開けてちょうだい!」、と言っていた感じでした。外扉のロックが解除され、ちょっと行くと、50代?くらいのシスターが出てきてくれました。
シスターは、ドイツ語も英語もできないようで、その隣の家のおばちゃんに残ってもらって、通訳をしてもらうことになりました。
案内してくれたシスターは、シオストラ・アロージャ(Siostra Aloja)さんという方でした。
こちらが、ポーランドの赤ちゃんポストの中です。
とても綺麗にされています。本当に綺麗でした。すごいシンプルです。
シスターが実際に、扉を開けてくれました。そして、閉めてくれました。そうすると、いわゆる「サイレンの音」が家中に響き渡りました。サイレンは、廊下のちょっと先にありました。すごいシンプル。
しかも、「お母さんへの手紙」はありません。インフォメーションもありません。何もありません。お母さんは、ただここに来て、赤ちゃんを置き去るだけです。その後の引き取りについては考えてないようです。預けたら、そこで「母子関係」は終結する、と。
すごいシンプルですが、、、(なんともいえない気持ちになりました)
赤ちゃんが保護された時に必要なものはこのボックスの中に入っています。
人形も置いてありました。かわいいですね。
保護された後に、赤ちゃんはこちらのベッドに移されて、健康のチェック等を行うそうです。
ナザレの写真も掲げられていました。
この建物、何の建物か、多分保育の世界にいる人なら、すぐに分かるんじゃないかな?!
そうです。こちらは、「母子生活支援施設」なんです。
お母さんと赤ちゃん(6か月まで)が共に暮らす施設だったんです。
ポーランド初の赤ちゃんポストは、母子生活支援施設に設置されていたんです!
いやー、ビックリですよ。
やはり、そうですかーーーーって感じもします。
シスターの話も聞けました。
設置したのは、カリタス会(クラクフ)。母子支援施設には、現在6組の母子が生活をしている。主にシスターが彼女たちの支援をしている。六か月くらいをめどにこの家を出ていくことになる。こういう施設を必要としているポーランド人は多い。外国人もポーランド人もいる。新生児のケアについてはしっかりしている施設だ。
みたいな感じでした。
PS
ちなみに、この気さくなおばちゃん、なんとなんと医学博士の医師さんでした。ウィルスの研究をずっと続けているんですって。なるほど、だから、英語があれほどまでに綺麗で、堪能だったんですね。ポーランドでは、若い人は比較的英語をうまく話しますが、年配の人は英語もしゃべれない人が多いんです。(日本も今、急いで、そういう国にしようとしているんですよね。「日本では、年配の人は英語が話せないけど、若者はみんな英語を話す」、と言わせたいんですよね。きっと。
***
偶然が重なって、ポーランドの赤ちゃんポストを訪問することができました。しかも、ちゃんと中まで見せてもらい、かつ、シスターともお話させてもらえました。なんて、一日だ、、、という感じです。
奇跡が起こったんです。
嬉しくて嬉しくて、本当に幸福を感じました。
その嬉しさから、気付いたら、こんなところに来ていました。
ヴァヴェルの世界です♪
本当に素晴らしいかつての国王(14世紀頃~18世紀頃まで)の墓地があったり、カテドラル(大聖堂)があったりするお城です。
世界中から人々が集まっていました。日本人(ツアー)ともすれ違いました(声はかけなかったけど)。
とにかく世界的に有名な観光地ですね。(僕は観光地が嫌いなので、ささっと見てその場を去りました)
いやー、何もかもが驚きですよ、、、