「麻雀物語」といえば、1991年(平成3年)に平和から登場したデジパチで、「史上初のカラー液晶画面搭載機」として大いに注目された。本機の登場をきっかけに、他メーカーも液晶デジパチを続々と世に送り出した。
また、本機は大当りの連チャン性も強力で、初当り確率1/240に対して、保留玉連チャン率は約23%と期待出来るスペックだった。これは、大当り中に「アタッカーエラー」が起こるたび、全ての保留玉が上書きされるチャンスが訪れる為だ。
見た目の真新しさや高い連チャン性が評判となり、登場から連日、空き台がない程の客付きだった事は、当時のファンならご記憶だろう。
大当り中の「脱衣麻雀」風な画面も特徴で、デジパチにおける「お色気路線」の火付け役ともなった。
私の地元ホールでも、それまでハネモノばかりやっていたオッチャンオバチャンが、新台で入った麻雀物語のシマにズラっと陣取るようになったのが、大変印象深い。皆、大当り後のダブル・トリプルを目指し、一心不乱に玉を弾いていた事を思い出す。まさに、パチ屋に「活気」のあった時代だ。
さて、これだけ荒いゲーム性を持つ麻雀物語。ホールとしては、別に正規のプログラムでも十分に営業出来た筈だ。しかし、登場から暫くすると(1993年前後)、通常の中身とは全く異なる「裏ROM」が出回るようになった。
裏ROMは当時パチスロに多くはびこり、主にボーナスの連チャン性を高める為に使用された。伝説の裏ROM師「下田一仁」氏が脚光を浴びたのも、この時期である。
もちろん、客に都合の良い裏ROMばかりではなく、ボッタクリホール御用達の「極悪・低確率ROM」や、特定の打ち方を知る者のみが大当りや連チャンする「セットROM」など、その使い方は様々だった。
一方、パチンコにおいても、このテの裏ROMは当時から少なからず存在した。新装開店など、短時間の営業で出したいときに使用する「開店ROM」や、本来のゲーム性から一段と波を荒くしたバージョンなど、打ち手の気付かない部分で、数多くの裏ROMが使用されていたのだ。
下田氏原作の「ゴト師株式会社」の漫画やVシネマでは、こういったパチ・スロの裏ROMに関わる事象が生々しく描写されている。
当時確認された裏モノを挙げると、妙に数珠つなぎ連チャンが多発する「フィーバーキングII」、初当りや連チャン率を64段階に設定出来る「ブラボーミリオン(SP)」、確変突入率を自在に変更可能な「ウルトラセブン」(ドラム機)、大当りセット打法が仕込まれた「アレジン」(アレパチ)、電源オン⇒即・天国モードになる「綱取物語」など、枚挙にいとまがない。
まぁ、あまり悪さをし過ぎて、営業停止になったホールもあるが…(札幌「U」店などが有名)。
さて、「麻雀物語」の裏ROMには、当時タイプの異なる複数のVerがあったといわれている。今回は、その中の主な二つのバージョンを紹介する。
一つ目は、初当り確率に8段階の設定差が付いており、モーニングの仕込みが出来るタイプ。当時「P必勝本」誌が入手した裏ROMで、具体的な仕込み方法も解説されている。
(1)ゲージ棒を、アタッカー右側のスタートチャッカー(右オトシ)に突っ込んだまま電源ON。
(2)すると、通常の初期画面(白・発・中)ではなく、一ピンが二段揃った「裏画面」が出る。
(3)同時に、アタッカー下の10カウント表示部に、現在の設定値が表示される。
(4)アタッカー左側のチャッカー(左オトシ)をゲージ棒で突く度に、設定値が変わる。
(5)ここで再び右オトシをゲージ棒で突くと、モーニングがセットされる。
(6)セットが終わると通常の初期画面に戻る。
(7)最後にアタッカーのVゾーンをゲージ棒で突いて、仕込みは完了。
二つ目は、大当り確率の8段階にくわえ、連チャン率も8段階設定できる「64段階設定」バージョン。コチラは、当時の二大攻略誌の1つ「攻略M」誌が独自に仕入れた情報で、裏ROMの実物ではなく、その内容を記した内部文書の入手に成功している。
(1)ゲージ棒をVゾーンに突っ込んで電源をONにすると、液晶に「3ピン・2ピン・2ピン」という画面が現れる。
(2)左オトシ⇒大当り確率、右オトシ⇒連チャン率、ヘソチャッカー⇒モーニングに対応。それぞれの箇所をゲージ棒で突いて、設定を行う。この時、変更された内容は液晶画面で確認できる(左デジタル=大当り設定値、中デジタル⇒モーニングの有無、右デジタル⇒連チャン設定値)。
(3)大当り確率の設定は「1」が最も高く、「8」が最も低い。逆に、連チャン率の設定は「8」が最高で「1」が最低となる。残念ながら、全ての数値は明らかになっていないが、例えば「大当り設定=1、連チャン設定=5」にすると、大当り確率1/96&連チャン率61%の激甘台に、「大当り設定=8、連チャン設定=3」にすると、大当り確率1/1425&連チャン率27%の大ハマリ台になる。
これらの裏ROMが、実際にどのホールで使用されていたかは、今となっては確認する事が出来ない(当時のカバン屋や店長の話を聞きたいものだが…)。
基本的には、シマの見栄えを良くする「見せ台」(サクラ台)を作る為に使われたとの事だが、回収をもくろむ悪徳ホールなら、最低設定の渋釘台で、客からとことん搾り取った事も十分に考えられる。
当時、我々一般ファンが、雑誌などで仕入れた解析内容を信じていても、実際には得体の知れない「ブラックボックス」と対峙していたかもしれない訳で、何ともコワイ話である。
ともあれ、麻雀物語の実機を所有している方は、自分の機械が本当にノーマルかどうか、上記の方法で一度確かめてみるのも良いかもしれない。