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(90年代のパチンコ・パチスロ情報がメイン)

「フィーバー」「ブラボー」は商標?

2014-04-25 01:40:00 | その他パチ・スロ関連

皆さんは、「商標」について、それなりの知識をお持ちだろうか。

 

商標を簡単に定義づければ、「商品または役務(サービス)に付するマーク(標章)」である。

 

有名どころでは、「コカコーラ」のロゴマークや、「ヤマト運輸」のクロネコマークなんかがそうだ。

まぁ、著名でなくとも、企業が商品に付するオリジナルの商品名などは、大抵が「商標」となる。

商品を製造・販売したり、サービスを提供したりする企業が、「このマークを付した商品(サービス)は、私共の会社が提供するものです」とアピールする為の、「識別用マーク」ともいえる。

 

ある企業が、1つの商標を長い間使っていると、消費者やライバル会社は、その商標が付いた商品を見ただけで、「これはA会社が作っている、あの商品だな」と、即座に判断するようになる。

そうして一定の「信用」が備わった商標は、一つの「知的財産権」と考えられる為、自社の商標を他人に使われないよう、権利として保護する必要がある。また、その商標を認識して商品を買う消費者の為にも、商標に備わった信用をむやみに壊してはならない。

 

その為、各国には「商標権」という権利により、商標を保護する制度が存在する。わが国では、保護を求める商標について、まず特許庁に「商標登録出願」を行い、それが一定の「登録要件」(識別性、独自性など)を満たしていれば、特許庁が「商標登録」という一種のお墨付きを企業に与える。そうして発生した権利が、「商標権」である。

 

登録によって商標権が発生すると、その商標(登録商標)を特定の商品に使う事ができるのは、原則として商標権を持つ者だけとなる。また、無断でその商標を使った第三者に対して、使用差止請求や損害賠償請求などを行うことも出来る(刑事罰もある)。それだけ「強い」権利なのだ。

 

ただ、一旦登録したからといって、未来永劫その商標を登録しておく必要はない。商標の登録を長年維持するには、それなりの費用(登録料、存続料、更新料)も掛かるし、すでに使わなくなった古い商標を、わざわざ守らなくても良いケースも出てくる。

そこで、商標権の有効な権利期間は、登録日から一応「10年」(分割で5年)となっており、引き続きその商標を守りたい場合は、10年(分割5年)ごとに更新申請をして更新料を特許庁に支払い、商標権を存続させればよい(更新の上限はなく、永久に存続させる事も可能)。一方、更新の時期に更新料が支払われなかったものについては、権利期間の満了をもって「失効」となる訳だ。

 

 

なぜ、突然こんな話をするかというと、パチンコメーカー各社が有する台の「冠名」が、商標と大きく関係しているからである。

 

ご存じのように、三共といえば「フィーバー」、平和は「ブラボー」、西陣は「ルーキー」「ターボ」、ニューギンは「エキサイト」、三洋は「パニック」、大一は「アイドル」、京楽は「スカーレット」、奥村は「ドリーム」「アドバンス」、豊丸は「ドン」という具合に、かつてはメーカー毎に、「冠名」ともいうべき名称があった。

メーカー各社はもちろんの事、ホールや打ち手にとっても、「この冠名が付いた台は、このメーカーの作った機種」と言う風に、他社の台とハッキリ区別することができた。

こうした冠名を、「過去の遺物」として決別した会社がある一方で、昔からの冠名を使い続けるメーカーも存在する。

冠名は、「パチンコ機」という商品に使用されれば、立派な「商標」である。また、「フィーバー〇〇」、「ブラボー〇〇」のように機種名の一部であっても、(冠名はこのケースが多い)、それが商標の重要な部分(要部)と判断されれば、やはり保護すべき対象となる。

もちろん、メーカーが「フィーバー〇〇」という機種名全体を権利として強く保護したいと思えば、その機種名で出願すれば良い。実際、SANKYOは「フィーバーマキシム」「フィーバーレジェンド」「フィーバーキング」といった過去の「名機」の名称につき、特許庁に商標登録出願をして登録が認められ、現在も商標権を有する(出願及び登録の時期は、全て2000年以降)。

ともかくも、自社の有する大切な「冠名」を、他メーカーに無断で使用されない為にも、やはり「商標権」による保護が必要となる訳だ。

 

では、その冠名について、各メーカーの商標登録の現況は、どうなっているのだろうか。

そこで、「特許権」や「商標権」といった知的財産権に関するデータベースを無料で提供する、「特許電子図書館」(IPDL)のホームページにアクセスしてみた。

同サイトにある「称呼検索」という商標の検索機能を使うと、たとえば「フィーバー」と名のつく商標が、どの企業によって、現在どれくらい登録されているかをザッと調べることが出来る。

なお、商標を登録するには、その商標をどんな商品(orサービス)に使用するかについて、特許庁への出願の段階で「指定」しておかなければならない。これを「指定商品」(サービスの場合は「指定役務」)という。「パチンコ機」は、特許庁指定の商品区分でいう「第28類」(遊戯用器具)の商品だ。検索の際は、指定商品を「遊戯用器具」に絞る必要がある。

あとは、それぞれの冠名と商品区分(「28」、類似群コードは「24B02」)を入力してデータ検索すれば、各メーカーの商標登録に関する「現状」が分かる。

 

その調査結果が、コチラ。

「アイドル」(IDOL)
登録第1227152号  登録日:1976年10月21日
権利者:株式会社大一商会  指定商品:遊戯用器具 ⇒権利存続中

「フィーバー」(FEVER)
登録第1725413号  登録日:1984年10月31日
権利者:株式会社三共  指定商品:遊戯用器具    ⇒権利存続中

「ルーキー」(ROOKIE)
登録第2361530号  登録日:1991年12月25日
権利者:株式会社ソフィア  指定商品:遊戯用器具  ⇒権利存続中

「ブラボー」(BRAVO)
登録第3281882号  登録日:1997年4月18日
権利者:株式会社平和  指定商品:遊戯用器具    ⇒権利存続中

「エキサイト」(EXCITE)
登録第4861850号  登録日:2005年5月13日
権利者:株式会社ニューギン 指定商品:遊戯用器具 ⇒権利存続中

ご覧のように、上記5つの冠名は、各メーカーが商標登録出願を行い、特許庁により商標登録され、現在も商標権が存続している。引き続き、各社はそれぞれの冠名をパチンコ機に使用する意思があり、他人の使用も防ぎたい訳だ。よって、他メーカーが、これらの登録商標(冠名)を自社の機械に無断使用する行為は、明確な「権利侵害」となる。

もっとも古く冠名を商標登録したのが大一商会で、「アイドル」は登録から既に37年が経過。また、ご存じ三共の代名詞「フィーバー」も、商標権の存続期間は既に30年近くと長い。

一方、ニューギンが古くから用いた「エキサイト」の冠名は、商標登録が2005年と意外にも遅い。もし、同社が「エキサイト」を昭和期から登録していれば、アレパチ「エキサイト」(1992年)を出してきた藤商事と、一悶着あっただろう。

また、昭和から平和の代名詞的存在である「ブラボー」も、登録は1997年と遅めだ。

なお、「登録日」というのは、特許庁による「原簿への最終登録」が行われた日であって、各メーカーが特許庁に商標登録の「出願」(申し出)をした日は、それより前になる。

 

 

他方、以下の冠名については、パチンコメーカーではない別の会社が、古くから商標権を有する。

「パニック」(PANIC)
登録第0914351号 登録日:1971年7月31日
権利者:株式会社タマス  指定商品:遊戯用器具  ⇒権利存続中
・昭和46年以来、「パニック」は株式会社タマスの登録商標である。一方、三洋が「パニック」と称する台の販売を開始したのは1980年代で、厳密には「タマス」の商標権に抵触した可能性もある。ただ、同商標の正当な「使用権」をタマスから得ていたかもしれないので、これ以上突っ込まない(笑)。因みに、タマスは卓球用品の製造・販売会社である(「バタフライ」ブランドで有名)。まぁ、卓球会社とパチンコメーカーには競業関係がないとも考えられるので、権利侵害の問題は起こらないと考える方が自然か。

「ドリーム」(DREAM)
登録第2120131号  登録日:1989年3月27日
権利者:株式会社タカラトミー  指定商品:遊戯用器具  ⇒権利存続中
・奥村が初代「ドリーム」を販売開始したのは「1988年8月」で、タカラトミーが商標「ドリーム」を登録した日よりも前である。しかし、タカラ社が特許庁に出願(申し出)をした日は、1985年7月29日で、奥村の「ドリーム」販売よりも前だ。商標法では、他人の出願前から使用していた周知な商標について、「先使用権」という正当な権利を認めているが、他人の出願後に使用を開始した場合は適用されない。やはり、厳密にはタカラ社の商標権に抵触した可能性もある。ただ、タカラ社から正当な使用権を得ていた可能性もあるので、これ以上突っ込まない。

 

なお、「スカーレット」(SCARLET)については、現在のところ、指定商品「遊戯用器具」について、商標権を有する者はいない。よって、京楽が、かつての冠名「スカーレット」を再び使用したいと思えば、特許庁に商標登録出願して、権利が認められる可能性もあろう(「スカーレット」は「真紅」という色(品質)を表す言葉であり、識別性、品質誤認など登録を妨げうる問題はあるが…)。

 

 

あと、少々面白い所では、「真っ赤な太陽」という登録商標がある。かつて、京楽の代名詞として知られたブランドネームだが(昭和期の台枠などに用いられた)、今現在、パチンコ機について「真っ赤な太陽」の商標権を有しているのは、なんと「タイヨーエレック」である。

「真っ赤な太陽」
登録第4761676号  登録日:2004年4月2日
権利者:株式会社タイヨーエレック  指定商品:遊戯用器具  ⇒権利存続中 ※追記:その後、失効した模様

なぜ、タイヨーエレックがこの商標を2000年以降に商標登録したのかは不明だが、もし京楽が、かつてのブランド名を再び使用したいと思っても、権利者であるタイヨーエレックの許諾なくしては、使用できない事になる。何だか理不尽な気もするが、それが「商標権」というものだ。もし、京楽が「真っ赤な太陽」のブランドを、現在まで使い続けていれば問題となろうが、平成以降の機種に使用された様子はないので、京楽の反論も難しいだろう。

 

それから、「デジパチ」「一発台」「権利モノ」「ハネモノ」といった類の一般的な言葉については、既に業界内で普通に用いられる俗称(普通名称)に過ぎないので、「識別力ある商標」とは認められず、登録の要件を満たさない(2004年に「デジハネ」が商標登録されている⇒権利者:サミー)

だが、意外な事に、「電役」という名称については、大一商会が90年代初頭に商標登録出願を行い、無事に登録された後、現在に至るまで商標権を有する。「一般電役」は普通名詞で登録されないが、「電役」はOKということだったのだろうか。まぁ、電役機といえば大一(フルパン、アニバーサリー1&2、ミリオンパンチetc)というイメージを持った時期もあるが…。他メーカーが「電役」の名を一切使用できないとすると、やや違和感が残る。

「電役」
登録第2547264号  登録日:1993年6月30日
権利者:株式会社大一商会  指定商品:遊戯用器具  ⇒権利存続中

 

その他、有名なところでは、「アレパチ」がタイヨーエレックの登録商標で、「パチコン」がユニバーサルの登録商標である。

「アレパチ」
登録4496646号  登録日:2001年8月3日
権利者:株式会社タイヨーエレック  指定商品:遊戯用器具 ⇒権利存続中

「パチコン」
登録第2669464号  登録日:1994年5月31日
権利者:株式会社ユニバーサルエンターテインメント  指定商品:遊戯用器具 ⇒権利存続中

 

 

今回は、「商標」絡みで、雑然といろんな情報を書いてみたが、多少なりとも興味を持って頂けただろうか。たかが商標と思うかもしれないが、細かく調べてみると、案外面白いものである。

★追記★
パチンコNOW・1998年1月25日というと、あの牧野館長の回ですかね。解説の守ピーが、レア台揃いのコレクションルームに訪問していたような…