１００歳のセラピスト

「お茶を一杯お出しになるといいですよ」

そう100歳の女性は言いました。

「お茶・・ですか？？」

私は、ぽかん？としました。

「そうです。お茶を一杯お出しになるといいですよ」・・・・



今日は私のワークに参加してくださる100歳の女性のお話しです。




身長は130cm台でしょうか。

その女性はその小さな体が、更に小さくなってしまうくらいに
深々と丁寧にお辞儀をしてワークのお部屋に入っていらっしゃいます。

「おはようございます。遅くなりました。申し訳ございません」

今日もいつもと同じお辞儀です。

決して遅くなってはいないのですが、すでに先に集まっている皆様に対して
こんな風に言葉がすっと出る。

人に対する思いやりや姿勢にいつも私は頭が下がると同時に
沢山の事を学ばせていただいてます。



「普段は横になっていますので、時々こうしてこのような場所に参加しないと
　言葉を忘れてしまいますね」と100歳の女性が一言。

この言葉をきっかけに
TVばかりみているとついつい誰とも話さない時間が増えてしまう事
やはり外（お部屋から）に出て、誰かと話す時間を持つことの大切さなどを
皆さんとワークが始まる前におしゃべりをしていました。

ここは参加者が女性だけ。
女三人集まれば・・・・・のあの言葉の通り、いつもおしゃべりに花が咲きます。


一人の別な女性が

「私は主人と一緒にいても、話すことないのよ」と笑いながら一言。


あああ、実は私もそうだったりして。。
でも私の場合は、私が話しをしても主人が話しをしないな。。
とポロリ（本音？）とこぼした（口走った？）時でした・・・・


「お茶を一杯お出しになるといいですよ」

100歳の女性が私の目を真っ直ぐ見てお話しされました。

「お茶・・・ですか？」


お話しを伺うと

男性は外で仕事をしていて、沢山の方達と沢山お話しをしてくる。
だからお家に帰ってくるときは、お口も疲れているはずだから
お話しを求める前に、ちょっと一杯お茶を出して、ほっと一息つかせてあげなさい。
そうすれば、相手も話を始めますよ。

という事でした。



100歳という事は明治のお生まれです。
ですので、男性が働き、女性はお家を守るという時代に生きてこられた方です。



・・・・・・・・・・・・そうですよね。。わかってはいるのだけれど・・・

相手の様子を知る前に、ついつい自分の話ばかり。
でも聞いているんだか、聞いていないんだかの生返事にぶーーっとしたり。


そのような事、彼氏・彼女　ご主人・奥さん、お子さんやご両親、お友達などなど
自分の愛する人にしてしまうことってないですか？

（ワタシダケ？？）



そしてその100歳の女性は最後にこうおっしゃったのです。

「私もそうでしたから、私はお茶を一杯だしました。
　ですので、そのようにあなたもされるといいのではないかと私は思います。」



私は思います・・・という最後のこの6文字



指示でも指導でもなくて

私のポロッといった一言に自然と何か感じとり
ご自分の経験のひとつから、そっと一言
ご自分が思われた事を伝える。

大変失礼かもしれませんが、「おばあちゃんの人生知恵袋」のようです。


私は心がほっとあたたかくなったと同時に
たった数分で自分を振り返り、
そんな事を相手に対して思ったりしていなかったな。と気づいたり。。


もしこの言葉が何か「本」に書かれていたとしても
「ふーーん、そうねぇ～」とあまり私の心には入ってこなかっただろうなと
思います。

その100歳の女性がご自分の経験を交えて、
ゆっくりと丁寧な口調、その言葉に含まれるあたたかい温度、
その方のくりくりとした目でまっすぐに人と向き合うその姿勢。
だからこそ、私は受け取ることが出来たのだろうと思うのです。


本当にあたたかい素敵なセラピストさんです。


（あらら、私はセラピストとしてこんな事でいいのかしら？？(汗））




100歳の女性は誰よりもこだわり、誰よりも時間をかけて
アートワークを楽しまれていました。



そして終わってお部屋を出る時


「どうもありがとうございました」と


またその小さな体が更に小さくなるくらい
深々とお辞儀をして押し車を押してお部屋を後にされました。





あたたかくてそして楽しいシニアアートワークのひとときのお話でした。




written　by　Yoko