シニア担当のYokoです。
先週は祖父母のお墓参りに香川に行って来ました。
お天気は曇りでしたが、東京とは違うのーーんびりとした穏やかな時間を過ごしてきました。
四国と言えば八十八カ所のお遍路
お遍路は、八十八の煩悩を一つ一つ取り除き、大自然の中で生かされている自分自身を見つめ直す修行の場
八十八ケ所の札所は、弘法大師が密教の曼荼羅の世界を投影したという思想から、
それぞれを「発心」・「修行」・「菩提」・「涅槃」の道場に分けられているそうです。
香川は「涅槃の道場」
様々な苦を絶ち、一切の煩悩を滅ぼし、不生不滅、解脱の境地・・・涅槃とはそういう意味で、
讃岐を無事に巡ると、四国八十八ヶ所遍路は結願となるそうです。
八十五番札所の「八栗寺」をお参りし下山すると、数分前に着信があった事に気づきました。
相手はいつもお世話になっている介護施設
私の中で胸騒ぎがし、急いで折り返し入電
「先生、Sさんがお亡くなりになりました」
『Sさん』
今でもはじめてお会いした時の事を覚えています。
まだ慣れない施設生活
ワークの準備を覗きにくると、「これは何?」とお聞きになりました。
わたしがアートセラピーを説明すると
「あー無理無理。私には出来ないよ」
そう言って帰ってしまいました。
頭にはタオルを巻いていて、ちゃきちゃきとしている明るい印象。
何かご商売をされていたかなぁ?とすぐに思いました。
慣れない生活もありますし、はじめてやるアートセラピー
参加されるようになってからはワークの後、
作品が気に入らなかったのでしょう。貼ったものを外したりしていました。
「あそこの角の洋服屋よ」
やっぱりそうでした。
ちゃきちゃきとしていた印象の通り、ご商売をされていたのです。
私も時々覗いたりしていた洋服屋さんでした。
商店街の真ん中にあり、その商店街を知っている方なら誰もがわかる洋服屋さん
会話が少しずつ増えていき、必ず参加されるようになっていきました。
ピンク色や明るい色がお好きで、作る作品はとてもセンスがいい。
お洋服に囲まれて過ごされてきたからでしょう。
「あーSさんらしいね。センスがいいんだよ。この人は」
「いつもほんとうに素敵よね」
作品をお仲間に見せると必ずそんな言葉が帰って来ました。
そして必ず照れながらにっこり
その笑顔が定番になりました。
ある年の冬
皆さんでアートクリスマスツリーを作った時
作品のタイトルをお聞きすると、少し怒ったような顔をして
「くだらない」
私はそのままタイトルにさせて頂きました。
しばらくしてSさんは入院されました。
退院されてからすぐは参加はされませでした。
もともと痩せていた方でしたが、更に細くなり車いすになっていた事もあったのでしょう。
お姿をお見せいただくようになるまでに、しばらく時間がかかりました。
ワークではすこしお手伝いをさせて頂く事が必要になっていました。
それでもご挨拶させて頂くと、かならずまぁるい目をぱっちり開けてにっこりして下さる。
お元気な時は、ゆっくりと手を降って下さる。
笑顔だけは変わりませんでした。
私はただSさんがこの場にいて下さる事 ただそれだけでうれしかった。
昨年の10月に落ち葉のワークが最後の参加となりました。
再びの入院で体力を落とされてからは、ワークに参加はありませんでした。
『証』
「ご家族が作品にいつも使用していた落款をいただけないかと・・・」
施設の担当の方の言葉に少し私は驚きました。
落款
それは消しゴムはんこです。
お名前の一文字が彫ってあります。
作品にあなたが今日ここで作られた証として必ず押させて頂きます。
でも「消しゴム」です。
施設の担当の方もその事をご存知です。
それでもご家族が頂きたいという事でした。
「そのようなお話ならば、こちらから何か形にさせて頂いてもいいですか?
来週伺った時にお渡しします」
『涅槃の道場』で聞いたSさんの訃報
それは偶然だったのでしょうか?
もう一度お会いしたかったです。
そしてにっこりとしたあの笑顔が見たかった。
私が見上げた空には、ただただ雲が重く広がっていました。
だけれども、Sさんは晩年ほぼ寝たきりの日々を終えられたのかと思うと
重く広がる雲の向こうに青い空があるのだと思えました。
人には必ず終わりがあります。
だけれども、ワークに参加した「今この時」に間違いなくSさんはいらっしゃった。
その生きていた証
使い古された落款を丁寧に拭きました。
もう朱肉の色がしっかりと染み付いている。
それ位の時間を私たちはSさんと過ごしたのですね。
Sさんが好きだった色合いの羊毛をケースに敷いてその中に落款をお入れしお花を飾りました。
これからは娘さんの所に。。
Sさんへ
やさしい笑顔 私はほんとうに大好きでした。
どうぞゆっくりとおやすみください。
長い間ほんとうにありがとうございました。
合掌
先週は祖父母のお墓参りに香川に行って来ました。
お天気は曇りでしたが、東京とは違うのーーんびりとした穏やかな時間を過ごしてきました。
四国と言えば八十八カ所のお遍路
お遍路は、八十八の煩悩を一つ一つ取り除き、大自然の中で生かされている自分自身を見つめ直す修行の場
八十八ケ所の札所は、弘法大師が密教の曼荼羅の世界を投影したという思想から、
それぞれを「発心」・「修行」・「菩提」・「涅槃」の道場に分けられているそうです。
香川は「涅槃の道場」
様々な苦を絶ち、一切の煩悩を滅ぼし、不生不滅、解脱の境地・・・涅槃とはそういう意味で、
讃岐を無事に巡ると、四国八十八ヶ所遍路は結願となるそうです。
八十五番札所の「八栗寺」をお参りし下山すると、数分前に着信があった事に気づきました。
相手はいつもお世話になっている介護施設
私の中で胸騒ぎがし、急いで折り返し入電
「先生、Sさんがお亡くなりになりました」
『Sさん』
今でもはじめてお会いした時の事を覚えています。
まだ慣れない施設生活
ワークの準備を覗きにくると、「これは何?」とお聞きになりました。
わたしがアートセラピーを説明すると
「あー無理無理。私には出来ないよ」
そう言って帰ってしまいました。
頭にはタオルを巻いていて、ちゃきちゃきとしている明るい印象。
何かご商売をされていたかなぁ?とすぐに思いました。
慣れない生活もありますし、はじめてやるアートセラピー
参加されるようになってからはワークの後、
作品が気に入らなかったのでしょう。貼ったものを外したりしていました。
「あそこの角の洋服屋よ」
やっぱりそうでした。
ちゃきちゃきとしていた印象の通り、ご商売をされていたのです。
私も時々覗いたりしていた洋服屋さんでした。
商店街の真ん中にあり、その商店街を知っている方なら誰もがわかる洋服屋さん
会話が少しずつ増えていき、必ず参加されるようになっていきました。
ピンク色や明るい色がお好きで、作る作品はとてもセンスがいい。
お洋服に囲まれて過ごされてきたからでしょう。
「あーSさんらしいね。センスがいいんだよ。この人は」
「いつもほんとうに素敵よね」
作品をお仲間に見せると必ずそんな言葉が帰って来ました。
そして必ず照れながらにっこり
その笑顔が定番になりました。
ある年の冬
皆さんでアートクリスマスツリーを作った時
作品のタイトルをお聞きすると、少し怒ったような顔をして
「くだらない」
私はそのままタイトルにさせて頂きました。
しばらくしてSさんは入院されました。
退院されてからすぐは参加はされませでした。
もともと痩せていた方でしたが、更に細くなり車いすになっていた事もあったのでしょう。
お姿をお見せいただくようになるまでに、しばらく時間がかかりました。
ワークではすこしお手伝いをさせて頂く事が必要になっていました。
それでもご挨拶させて頂くと、かならずまぁるい目をぱっちり開けてにっこりして下さる。
お元気な時は、ゆっくりと手を降って下さる。
笑顔だけは変わりませんでした。
私はただSさんがこの場にいて下さる事 ただそれだけでうれしかった。
昨年の10月に落ち葉のワークが最後の参加となりました。
再びの入院で体力を落とされてからは、ワークに参加はありませんでした。
『証』
「ご家族が作品にいつも使用していた落款をいただけないかと・・・」
施設の担当の方の言葉に少し私は驚きました。
落款
それは消しゴムはんこです。
お名前の一文字が彫ってあります。
作品にあなたが今日ここで作られた証として必ず押させて頂きます。
でも「消しゴム」です。
施設の担当の方もその事をご存知です。
それでもご家族が頂きたいという事でした。
「そのようなお話ならば、こちらから何か形にさせて頂いてもいいですか?
来週伺った時にお渡しします」
『涅槃の道場』で聞いたSさんの訃報
それは偶然だったのでしょうか?
もう一度お会いしたかったです。
そしてにっこりとしたあの笑顔が見たかった。
私が見上げた空には、ただただ雲が重く広がっていました。
だけれども、Sさんは晩年ほぼ寝たきりの日々を終えられたのかと思うと
重く広がる雲の向こうに青い空があるのだと思えました。
人には必ず終わりがあります。
だけれども、ワークに参加した「今この時」に間違いなくSさんはいらっしゃった。
その生きていた証
使い古された落款を丁寧に拭きました。
もう朱肉の色がしっかりと染み付いている。
それ位の時間を私たちはSさんと過ごしたのですね。
Sさんが好きだった色合いの羊毛をケースに敷いてその中に落款をお入れしお花を飾りました。
これからは娘さんの所に。。
Sさんへ
やさしい笑顔 私はほんとうに大好きでした。
どうぞゆっくりとおやすみください。
長い間ほんとうにありがとうございました。
合掌
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