Life is ART!

高齢者施設で活躍しているアートワークセラピスト達の旬な声をお届けします。

GOO!

2012-06-20 03:31:13 | 素敵な現場
シニア担当のYokoです。

先日紫陽花のワークを報告させて頂きました。

どれもほんとうに素晴らしくて、実は何度もブログ見返していたりしています。

あまりにも皆さんの表現が素晴らしかったので、今週の月曜日に別施設でも行いました。





部屋に入られて目の前に飛び込んで来たたくさんの紫陽花たち

その女性は驚いた表情をされました。

「綺麗よね」

「こんな色があるの」

「この形も紫陽花?」

お近くにある紫陽花をひとつひとつゆっくりと眺めながら色や形の違いを見つけては楽しまれていました。


この日は前回同様ちぎり絵で紫陽花を表現

女性は紙皿の上にちぎった紙を乗せてしばらくじーっとしていました。


「ちぎった紙を今日はこの雨のイメージの紙に貼って行きませんか?」

そうお伝えすると

「これが雨のイメージ? ちょっと違うわ。それにこの紙になんて作れないわ」

この日の台紙は見つけた時に、「これに紫陽花描いてもらいたい!」と私が見つけたお気に入りの紙

麻落水という紙です。

銀色にキラキラとしたこの紙が雨の輝きをイメージ出来て、見つけた時にぱーーっとワークのイメージ浮かんだ紙でした。

でもどうやらこの女性にはそう感じないようでした。

「そうですか。うーーん・・ではちょっと待って下さいね」

台紙の背景用にとお持ちしていた数色の紙をお見せしました。

「これ!これがいいわ!」

女性はぱっと表情が明るくなり何かひらめいたようでした。

決めた色は藍色の紙

これがこの女性のこだわり





「ねぇ これどう?」

そう見せてくれた女性の紫陽花の世界

遊びに来たかえるやかたつむり達

空からみた池のほとりに咲く紫陽花達のようではないでしょうか?

「・・・・・すごい」 言葉が出ませんでした。

すると女性はこう言いました。

「ねぇ これGOO?」



この女性はあまり行事に参加したりするのがお好きではなく、お部屋からあまり出ない。

施設の中でもお友達も少ない。

何かこの女性が楽しめるものはないか?とケア担当の方が昨年秋頃にアートセラピーをお勧めして下さいました。

施設では部屋に籠らないように様々なアプローチをします。

音楽会や外出行事、四季折々のイベント

もちろんこの女性が全てに参加をしていなかったわけではありませんが、

もっと自らが楽しめ、そして人と繋がりを持ち自分らしく過ごせる時間をと、

アートセラピーを選んで下さったのです。


最初は何をしていいのかもわからず、口にする事と言えば「これは何?」「なんで作らないといけないの?」とか

どちらかというと否定的な言葉を口にする事が多かった。

それでも毎回ケアの方が口説いてお連れしてくだり、徐々に場にも慣れていきましたが

自分がお気に召さないと作品を見せてくださらなかったり、丸めてしまったりという事もありました。

もちろん気に入った事は夢中で取り組み、笑顔も見られましたが

この女性が自分から私たちに「ねぇ これGOO?」なんて事をおっしゃったのははじめてでした。



「GOOですよ。GOO!!」

そうお伝えするとちょっと口をひねった自慢げな笑顔

そして「やったね!」と言わんばかりに握りこぶしして腕を挙げました。



こんなにもアートを通して心の表現を思いっきり楽しみ、そして更に体を使ってまで喜びを表現する。

そんな様子の女性を見た事ありません。



わたし・・・泣きそうでした。

うれしかった。

ほんとうにほんとうにうれしかった。

私はこれまでの経験で最初の戸惑いからゆっくりと慣れてそして大ファンになってくれるシニアの方との

関わりがたくさんあります。

だけれども人の喜びに慣れる事はありません。

いつだって人が心から喜んでいる姿には感動し、心が震えます。

喜びに、「もうお腹いっぱい」なんて事はないのです。



ひとりひとり同じ人などはおらず、全ての人生が異なる。

そうして培われた心の土壌から溢れ出るその人だけが持つ感性を形にしたもの。

そして描かれた紫陽花の世界

この女性だけがもつ心の表現



アートセラピーってほんとうに素晴らしい。

この世界と出会えてよかった。

こんなにも誰かの表現に触れて私自身の心が喜んでいる。

って書きながら

・・・・だめです。やっぱり思い出してもまた泣いてしまいます。

うれしくてうれしくて

私の中の紫陽花が涙で満開になりそうです。



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