NPO法人 専攻科 滋賀の会

盲・聾・養護学校高等部への専攻科設置拡大、そして広く特別な教育的ニーズを有する青年たちの教育機会の保障をめざす滋賀の会

サンデー専攻科&勉強会が開催されました

2015年06月28日 09時36分44秒 | 会員募集のお知らせ

先週の6月21日(日)午後に今年4月開所の学ぶ作業所「プリズム・カレッジ」にて勉強会を実施しました。

場所はJR能登川駅そばの美味しいエクレア・ショップの裏手になる静かな場所になります。お洒落なヨーロッパ調の建物で、非常に良い環境下で事業運営されていると感じました。

 このエクレアショップは大盛況で、すぐに売れ切れるので予約が必要とのこと。筆者も買いそびれた一人です。。

 梅雨の晴れ間がのぞく日でした。スペイン町なおしゃれな建物が学び舎です

当会立岡理事長より開会の挨拶.県内の関係者の皆様の連携強化を訴えました.

プリズム・カレッジの田中先生に取り組みと現在の状況、通所されている学生の皆さんの様子や学びの実践についてご紹介いただきました。加えて、参加者の方々とも意見の交換も行いました。

田中先生からのプリズムカレッジのご紹介メッセージです。

「はじめまして社会福祉法人蒲生野会プリズムで自立訓練事業(生活訓練)の担当をしている田中です。はじめに法人全体の紹介を少しさせていただきます。私の所属している社会福祉法人蒲生野会は旧八日市市に本部を置く障害者支援を行う法人です。法人スタートは重度の障害を持つ人の入所施設からです。開設順に紹介をしていくと、東近江地域障害者生活支援センターれいんぼう、暮らしサポートセンターさんライト、放課後等デイサービスサンライズ、多機能型事業所プリズムとなります。活動範囲は主に東近江圏域(2市2町)です。

 プリズムカレッジでは障害を持つ青年期を迎える方が社会人として生活していくためには仕事が出来る力だけでなく、良き余暇(休日やアフターファイブ)を過ごす力も大切ではないだろうか。卒後すぐに働ける力がある人もいれば、じっくりと時間をかけて成長していく人もいるのではないだろうか、そういった子どもの豊かな発達と人格形成を行う場が必要ではないかという思いから事業所を立ち上げました。反面、そのような場所が無かったこともあり、進路に迷われている実態もあったと思います。具体的に大切にしていることは次の通りです。社会人生活を豊かにするための実生活に役立つ学び。仲間とともに考え、学んでいく。自分のやりたいことの発見。課外学習、実習、研修旅行といった様々な豊かな体験です。これらのことを意識し日々活動をしています。

 プリズムカレッジが始まって約2ヶ月が経とうとしています。利用者はもう学生じゃない、しっかりしないといけないという意識をすでに持ち始めています。一人でバス、電車を利用し通所してくる方、毎日お弁当を自分で作ってくる方、朝は苦手だけど休まず通所してくる方それぞれの目標は違いますが、それぞれが日々頑張っています。この2ヶ月での変化は挨拶が少しできるようになった、規則正しい生活ができるようになったなど、多くの人からみるとできて当たり前のこのようなことばかりですが、利用者や利用者家族、支援関係者からすると大きな1歩のように感じます。こんな利用者を見ていると、田中昌人氏の全障研京都集会(1967年)での講演(3つの可逆操作の段階)での1節「ゆっくりと通り過ぎる人もあれば、ひと休みする人もある。寝ころぶ人もあれば、転げる人もあれば、道草をする人もあれば、走っていってしまう人もいる。いろいろなんです。でも道は同じなんです」が連想させられます。人間の発達する早さは人それぞれ違います。ましてや知的障害、発達障害などのある子ども達は障害を持たない子ども達よりも時間もかかると考えられます。こういったことを考えると学ぶ権利者、発達の主体者として、そして今後は一社会人として生活を目指す人間として、豊かな人格形成、生活力をつける場の保障はされるべきだと考えています。」(以上)

                        

そして近隣の公民館では青年の方々を招いてのサンデー専攻科です。

先日出版されました「えほん障害者権利条約」(ふじいかつのり/作・里圭/絵)の発売を機に、障害者権利条約とは何か?どのような困っている事が直接本人さんに関係するか?を森本先生がわかり易く講義いただきました。

今回講義いただきました森本先生からの今回のサンデー専攻科開催にあたっての学習指導要旨をご紹介いたします。

サンデー専攻科「社会科」

      会 場  :   プリズムカレッジ (授業者:森本 創 対象:10名前後)

      日 時  :   平成27年6月21日(日)  13:30~15:30

 

 

  1. 主題名  国連「障害者権利条約」を学ぶ
  2. 主題設定の理由

(1) ねらいとする価値について

 2006年12月13日に国連で採択された「障害者権利条約」は、それまでのさまざまな人権条約を基礎につくられたものであり、これからの人類の目指すべき未来社会を指し示すものである。2014年1月、日本はこの「障害者権利条約」を世界で141番目に締結したが、まだまだ多くの課題を抱えている。「Nothing About Us Without Us(私たち抜きに私たちのことを決めないで)」この条約を貫く当事者本位の精神を学ぶことを通して、自分たちの身近な問題について自らが考え、その解決に向けて積極的に行動する姿勢を培うことをねらいとする。

(2) 生徒の実態

 生徒は、普段の学校や作業所や家庭生活の中で、さまざまな悩みを抱えているが、それらを解決するためのスキルを十分には獲得していない。また、法律や国際条約についての興味関心は低く、自分たちの生活とどのようにつながっているかということについて、日常的に意識することはほとんどない。しかし国連「障害者権利条約」を学ぶことを通して、自らの権利意識を高め、前向きに生活する態度を身につけることができると考える。

(3) 資料について

 作者のふじい かつのり氏は、国連「障害者権利条約」の内容の検討にあたって、日本の障害者代表として深くかかわり、また我が国が本条約を締結するために大いに貢献した。つまり国連「障害者権利条約」について、日本でもっともよく知ると共に、本条約に対して熱く強い思いを持つ人の一人だといえる。その作者が、より多くの人たちにこの権利条約を知ってほしいとの願いから執筆した絵本を基礎資料として、条約への理解を深める。さらに、事前に全生徒に書いてもらっておいたアンケートを活用し、グループワーク通して自分たちの身近な問題について考え、そのことが条約の内容と深くかかわっていることを理解する

3.  ねらい

 ○国連「障害者権利条約」の大切さとその内容を大まかに理解する。

 ○自分たちの身近な問題が、権利条約と深くかかわっていることを大まかに理解する。

 ○自らの権利意識を高めると共に、他者への理解と共感の態度を培う。

4. 本時の展開

 

学習活動・主な発問

予想される生徒の反応

配慮すべき点

導入(15分)

 講師と参加者の自己紹介

1.条約について考える。

○「条約って何?」「国際連合(国連)は何をするところ?」

○「日本にはどのような法律がある?」

○「条約と法律との関係は?」

 

 ・国と国との約束(法律)

・道路交通法、教育基本法、刑法、民法、障害者総合支援法、障害者差別解消法、日本国憲法など

・日本国憲法>条約>一般法

 

・法律名が分からない場合は、どのような社会のルールがあるか考える。

・法律とその他のルールとの違いについて考える。

・図を描いて説明する。

展開前段(40分)

2.資料「えほん障害者権利条約」を読んで考える。

①「障害者権利条約」はいつどこで生まれたか?

・国連のマークの意味を考える。

②「人権」について考える。

 

・「障害者権利条約」以前の人権条約は?

 

③「障害者権利条約」がどのように広がっていったのか考える。

 

④なぜ日本ではなかなか批准されなかったのか考える。

⑤日本の国内法との関係について考える

⑥⑦⑧条約がしっかりと守られたらどう変わるか考える

「障害」って何?

・自分自身がしたかったけれどできなかったことについて発表し、それがどうすればできるか考える

 

 

・2006年12月13日国連で生まれた。

・北極を中心にオリーブ(平和の象徴)が世界を包む。

・すべての生きている人が持つ権利。死んだ人や生まれる前の赤ちゃんは?

・世界人権宣言、人種差別撤廃条約、女性差別撤廃条約、子どもの権利条約

・世界地図を見ながら、ジャマイカの位置を確認する

・世界地図を見ながら、エクアドルの位置を確認する

・日本は国連加盟193か国中141番目

・国連は条約を守っているかどうかチェックをする

・Nothing About Us Without Us(私たち抜きに私たちのことを決めないで)の意味を考える

・障害が変化する概念であることを理解する

・あらかじめ絵本をデジカメで撮影し、PPでスライドにする。

・ゆっくりと読む。

・国連の中でもっとも新しい人権条約

・日本では妊娠12週目~が人として認められている。

・さまざまな差別について考えてみる。

 

・首都キングストン

 人口270万人

 ブルーマウンテン山脈

 ウサイン・ボルト

・障害者自身がかたちだけの批准に反対

・条約を守らないとどうなるか?

・自分たちの暮らしが具体的にどう変わるかイメージする

・何人かに発表してもらう

 

⑨絵を見ながら町がどのように変わったのか理解する

⑩条約が守られるためには常に努力が必要なことを理解する

⑪障害者権利条約の大切さを再確認する

・バリアフリーの意味について考える


 ・条約が守られるよう自分ができることについて考える

・障害のある人にやさしい社会はすべての人にとってやさしい社会である

・困っていることを口にする→どうすればよいか考え相談する→実際に行動する

 

休憩(10分)

アンケート内容の確認

円形に椅子の移動

展開後段(45分)

3.自分たちの生活と障害者権利条約がどのように関係しているか理解する

・アンケートをもとに、どうす

ればよいかみんなで考え、条

約との関係を確認する

 

○家で困っていること

・お小遣いが少ない

・携帯電話を買ってくれない 

・部屋に勝手に入ってくる

・お父さんとお母さんが喧嘩ばかりしてる

○学校や作業所で困っていること

・好きな人がいるがどうすればよいかわからない・乱暴で嫌なことをする人がいる

・給料が安い

・職員や先生がちゃんと話を聞いてくれない

○そのほかに困っていること

・一人で出かけたい

・選挙に行ったことがない

・一人暮らしがしたい

・休みの日に野球やサッカーがしたい

・第28条相当な生活水準及び社会的な保障

・第9条1(b)通信手段の確保

・第22条プライバシーの尊重

・第7条2児童の最善の利益

・第23条家庭及び家族の尊重

・第14条身体の自由及び安全

・第27条労働及び雇用

・第7条3意見表明権

 

・第20条(a)移動の保障、第9条2施設サービス利用の確保

・第29条政治的及び公的活動への参加

・第19条(a)居住地の自由

・第30条文化的な生活、レクリエーション、余暇及びスポーツへの参加

まとめ(10分)

4.一人ひとり今日の感想を発表する

・自分の権利を守ると共に、人の権利を守ることの大切さに気づく

 

 

・人の話をしっかりと聞く

講義中の森本先生

参加者の学生の皆さんからは、「先生のお話しや会話を通じ、すっきりした!」という意見や、「もっと勉強したい!!」等というコメントを、事後感想に記載いただきました。やはり、当会や事業所の皆様、教諭・教育関係者の方々の協力をいただき、今後もサンデー専攻科を続けるともに、学びに触れる機会を創らなければならないと感じました。それには、前述の方々との連携を強固なものにしなければならないと思います。

今後とも専攻科滋賀の会への参加いただきますよう、よろしくお願いいたします!(HK)

コメント
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