うだるような暑さを感じるたびに、
小学生のころ、親父に連れて行ってもらった、
荒川の鯉釣りを思い出す。
親父が仕事から帰ってくるのを、
今かいまかと待ちわび、仕掛けやら餌やら、
念入りに用意をしていたことが懐かしい。
当時、毎号欠かさず熟読していた、
『釣りトップ』で見た大鯉に魅了され、
いつかは自分も釣ってみたい!
と思ったもんだ。
友達とは、
ビン沼や伊佐沼へは行ってたのだが、
荒川は自宅から少し遠く、また危険だという理由から、
親から禁止されていた。
だからこそ、
余計に荒川への思いは大きかった。
荒川へ行けばきっと大鯉に会える!!
夜の吸い込み。
暗闇の中で響く鈴の音。
『リリ~ン!!』
その音色が響くと、
一瞬、緊張が走る。
焦って“あわせ”を入れてしまいたくなる衝動にかられるが、
親父に
『まだ待て!』
と制止される。
『鯉は吸って吐いて食べるんだ』
『まだ待つんだ』
焦らされながら待つ俺。
ほんの少し、鈴が鳴らないだけで不安になってしまう。
『逃げちゃったんじゃないの?』と・・・
しかし、親父はこう言う。
『いや、大丈夫だ、竿先を見てみろ』
『まだ喰っている途中だ』
『これからガツン!と当たりが来る』
『そしたら巻くんだ』
俺はひたすら待った。
しかし、ガツンは来ない。
しかし、竿先は揺れている。
『チャりん♪』くらいなもんだ。
もう気がついていた。
これは大鯉ではないと・・・
いつものラーヘだろうと。
親父に目で合図し、
俺は念のため“あわせ”た。
かすかに伝わってくる生命反応。
抵抗する様子は伺えない。
完全に大鯉の線は消えた。
ラーヘに100円掛けてもいい位の感触。
しかし、
真っ暗な水面から現れてきたのは、
19センチのウグイだった。
う~ん
微妙・・・
いまでこそ、
釣果は写真で記録したりするが、
当時はデジカメなんぞ無い。
記録方法は『魚拓』である。
そう、
このころ自分で釣った魚の魚拓がとりたくて、
仕方無かった時期なんである。
19センチのウグイを魚拓にして、
自宅に飾った俺。
こう暑いと、
いつも思い出してしまう甘酸っぱい出来事だ。