相続税対策のスキームとして、売買価格と相続税評価額の差を利用した節税対策が行われています。所謂「タワマン節税」と呼ばれるスキームでしたが、近年「財産評価通達6項」にある「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。」により、財産評価基本通達と異なる評価方法により否認されるケースが増えています。
内容について、考察したいと思います。
被相続人92歳 平成24年逝去
物件購入(H21年) 2棟
購入価格 13億8,700万円
借入額 10億5,500万円
相続税評価額 3億3,366万円
鑑定評価額 12億7,300万円
売却価格(H 25年) 5億1,500万円(1棟のみ)
借入額10億5,500万円に対し、相続税評価額3億3,366万円となり7億2,134万円の債務超過が発生します。この債務超過を活用し、既存の資産に対する債務控除により相続税を減額させ相続税額は「0円」となっています。
これを「財産評価通達6項」により鑑定評価による価額とするのが適正として争われております。
争点
・財産評価基準で適正に評価している。
・資産家でなければできないスキームであり公平性を欠くのか。
・評価額の乖離が「著しく不適当」であるのか。
・「銀行稟議書」にも「相続税対策」とあることから、明確な租税回避ではないか。
注目点
・購入価格や相続後の売却、借入額は争点でない。
・債務控除についても、争点ではない。
・立証書類に銀行稟議書が、提出された。
・購入から相続、売却の期間。
・土地からの購入かつ売却が前提。
確かに、借金によりもともと持っていた財産の相続税がなくなるの公平性を欠くような気がします。とはいえ国税庁が示している財産評価基準に従って評価しているのに違う評価をさせるのはズルい気もします。
資産家は、大なり小なり相続税対策をしています。今回、やりすぎた感じは否めませんが裁判所がどのように判断するかが楽しみな事案です。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます