宝島のチュー太郎

酒屋なのだが、迷バーテンダーでもある、
燗酒大好きオヤジの妄想的随想録

じんかん

2020-07-12 12:52:21 | 本のこと


 久しぶりに本を読みながら落涙した。
語り口は浪花節調で、「凛然と」という形容動詞がやたらと登場する。
脳裏にはそうした否定的な感想を抱きつつも、やはり最後にはその術中にまんまと嵌められる。

 通称松永 弾正、幼名九兵衛、諱(いみな)松永久秀はこれまで、極悪非道、裏切りの人と言われてきた。
ちゃんと学んでない私でも、何とはなしにそうしたイメージを抱いてきた。
それが、垣根涼介の「信長の原理」だったか?
過日読んだそれに登場する松永弾正久秀が、魅力的だった。
事実、史実はこの際どうでもいい。
解釈の違いによって生じる松永弾正久秀その人をもう少し追いたいと思っているところに登場したのがこの本だ。


 裏切りどころか、仕える主君、延いてはその子、その家の為に生きた忠義の男。
それを守る為には、自己に対する誤解や悪評も利用する。
そんな、世間一般の評判とは真逆の人物像が浮かび上がる。

 その上で、神仏を信じないという人生観の共通する信長との魂の交流。
二度裏切る久秀を信長は許そうとする。
だが、その差し伸べられた手を久秀は振り切って自害する。
自己の信念を曲げてまで生き長らえることに意義を見出せないのだ。

 人間をじんかんと読む。
即ち人と人の世界は、九割九分九厘の「その場凌ぎ」の人と一厘の「為す」人に分けられると。

どうせ生きるなら生きた証が欲しい。
自分は何か残せたか?
と、いうことらしい。

そして、神仏を信じぬとは言いながら、得体の知れない何かの力は意識している。
それこそが「じんかん」の力ではないのか!?
そう解釈する節がある。
それは、信長もそうだ。
垣根涼介の「信長の原理」では、その不思議な現象をパレートの法則めいて取り上げていた。


 しかし、名を遺すことに然程の意味があろうか?
どうせ人生暇つぶし。
とは言え、どう生きても暇つぶしなら、情けない自分より、闊達な自分でありたい、とは思う。
但し、自分のつもりが、自分ではないということに、即ち自我は幻だと気づいた上で、目の前に現れるよしなしごとと向き合う方が、ちょっとだけ未知の世界に近づける気がする。


 なので、人生観を得られる内容ではなかったが、胆力と不屈の精神と潔さは痛快であり、そういう意味では人生訓とは成った。

 プロット的には、日夏の存在が大きかった。
結局落涙のトリガーはそこからだったように思う。

 結論として、読み応えのある作品ではあった・・・








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この本、分厚い割に開き方が快適・・・

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