ツバメの巣は空き家となりましたが、
今度は、蜂の巣が出来ました。
開店後、
ケロマツ主任の店内放送による招集がかかりました。
面倒くさいことが嫌いなケロマツ主任の放送は、
伝えたい・・というよりは、
早く言い切ってしまいたい気持ち満載の立て板に水
その声はスマートで若い車掌さんみたいで、嫌いじゃないんですが
どんな作業をしていても、とりあえず中断して集まらなければなりません。
うう、面倒くさい「なんだろう・・?」
売価表示ミスのクレーム報告か、棚卸しに向けての新たなミッションの通達か
いい話がないのは確かだったのですが
冷気あふれる店内から、蒸し風呂の店裏に向かいます。
「はい、お疲れ様です~、あんまり良くない話です。
えっと~あそこに蜂の巣が出来ました~。あの白い台車の裏っかわ、見える~?
隣にあった廃材の山を片付けたら出てきちゃいました。
気をつけてね?刺されないでね?
言ったからね?ちゃんと言ったからね?」
赴任してきた時は頼りなげなマスオさんのように見えたケロマツ主任
漫画のデフォルメそのままに、
目が「線」に見える人に初めて会ったなあ・・と思ったものでした。
そんないつも笑ってるような線のような眼の奥が、
要所要所でキラリと光るのを見つけたのはいつだったか
別に敷地内に蜂の巣が出来たことなど、業務中断で全員に伝える義務はないけれど
地域に住む、決して若くないおばさんの集合体である「パートナー」サンたちのトラブルは
事前に出来るだけ排除し、回避しようという社員のリスクマネジメント
「刺されて腫れが引かないので、この仕事無理~」とか
「ねー、これって労災出ないのぉ?」とか
言われると面倒くさいもんね。
そんなみんなは「・・はーい」と返事をしただけなんですが、
好奇心旺盛の私たち数人は現物を見に行きました。
ミツバチじゃなかったです。
黒がメインのボディにオレンジ色が挿し色の・・
なんかスズメっぽい感じの蜂でした。
ツバメは時期が来たら旅立ってくれますが、蜂は永住でしょうし
家が更に繁栄したら大変なことになりそう。
しかし、
この予算のない店が、業者を呼んでくれるとは思えない・・
「明日、穂高さんに取ってもらうんじゃないかな~。」
主任は当然のように言います。
主任じゃなくても、社員はみんなそう判断するでしょう。
「うわ~。やっぱり穂高さんなんですか・・」
穂高さんと言うのは、このお店の用務員サンのようなおじさん。
ハクション大魔王のコスプレが絶対似合うと思ってるのは、私だけのようですが
その仕事ぶりは、まさに呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃ・・的
女子トイレが詰まったと言われては、かっぽん持って出動し、
蛍光灯が切れたと言われては2m級の蛍光灯を小脇に抱えて駆けつける
穂高さんを思い出すとき、
脚立を持ち、フロア用の大きなバキュームクリーナーを押し、スパナを持ち、植木の手入れをする
そんな姿を思い出すに違いない、
まさに何でも屋的おじさん。
ていうか、何でも屋にも限界があろう?
というミッションを押し付けられている姿を見かねて、声をかけると
「こんな年寄り、アテにしてもらえるウチが、華なんですよ・・」
とにっこり笑って
「お前らでやれよ~っ!は後ろからね?」
と、舌を出す穏やかなお茶目。
でも蜂の巣なんて、プロでもないのにどうやって取るの・・?
翌日、件の台車を見たら
蜂の巣は根っこをだけを残して、切り取られていました。
「穂高さん、蜂の巣大丈夫でした?」
眩しい朝の光を背負って店の周りを掃き終えて帰ってきた穂高さんに
私は早速声をかけました
すると、耳を疑うような返事が帰ってきたのです
>
え?
え?
何の話?
「穂高さん、蜂の巣の話ですよ・・・?」
「美味しかったですよ。あれはやっぱりフライパンで醤油と炒るのがいいね・・」
「食べちゃったんですか!」
「うん。」
穂高さんは懐かしそうに続けます。
中学高校の時は、本当によく取りました。
長野や群馬では貴重なタンパク源なんですよ。
スズメバチの巣なんかはね、厚い殻があって、火で炙っても中で生きてるから大変ですけどねえ
まあそういう時はちょっと殺虫剤をかけたりもするんですけど
基本は煙でね、花火を使うといいですよ。
「う、あ、へー・・あ、・・・で、
でも食べるなら、殺虫剤はまずいんじゃ・・」
「あはは、なぁに、子供の少々の腹下しは薬みたいなもんです。」
穂高さん恐るべし!
そしてその時思い出したんです。
あの中国の、「落ちたナゲット」「期限切れの青い肉」事件について、
5時に夢中!で中尾ミエさんがコメントしていたことを。
「なに言ってんのよう・・日本だってねえ、昔はそういうの、頓着しなかったわよぅ?
今までだって、大丈夫だったんなら、大丈夫じゃないの?」
・・よく言うなあ・・と思って見てたんですが
本当なのかも。
怖い怖いとよく見ることも出来ず、それに触れられもしなかった私達と
事も無げに捕獲して、調理して食べた穂高さん
そのひれ伏すべきトラブルシューティング
ザ・サバイバー・・ orz
幅はあるけど決して大柄ではない穂高さんの茶色い肌が
大樹の幹の様に見えました。
「あ!そうだ
あの蜂、
何蜂だったんですか?」
「ああ、あれは、
アシナガバチだったですね。」
アシナガバチかあ、
そういえばあんな巣が実家にもあった・・・
その昔、
奈良の野山で遊んでいたら、普通に遭遇する蜂でした
旧友のような蜂のはずだったのに、
私、思い出せなかった
40年の時を経て
都会ですっかり
ヘタレなおばさんになっちゃった・・
いろんなブログが見られるので登録しました。
が、
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どうぞお気遣いなく( ̄▽ ̄:)ゞ
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