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映画の歴代興行収入ランキングについて

2020-12-01 00:12:01 | 映画 - ベスト

 映画の入場料の売上げ金額の総額を興行収入と呼ぶ。興収などと略される。この興収の日本での歴代ランキングの1位が19年ぶりに入れ替わろうとしている。

 しかし、こういうニュースは業界向けニュースであって、業界の人だけが一喜一憂してればいい話ではないだろうか。そもそも、歴代ランキングを人数ではなく金額で順位付けしているのは、新しい映画が常に上位に来て記録が更新されるようにするためであり、それに一般の人までも見事に踊らされている。

 少し古い話だが映画雑誌『キネマ旬報』で読んだ記事に、歴代の007映画の確か全世界での動員数の発表が海外であったのを受けて書かれたものがあった。当時ジェームズ・ボンドを演じていたピアース・ブロスナン主演作が興収では上位を独占するが、動員数となるとショーン・コネリー主演作が上位を独占するというような内容だった。

 これを読んでから、公開された時代の異なる映画の興行収入を比較しても意味が無いなと思うようになった。

 ならば、観客の人数ならいいのかというと、そういう話でもない。時代によって人口も大きく変わるから。ならば国民の何%が観たという数字ならばどうだろう。それも、人口が同じでも若者や子供の比率が少ない今の日本と、そうではない昔の日本とでは条件が全然違うだろう。

 違う時代というと、レンタルビデオがなかった時代もあれば、テレビ放送もなかった時代もある(お隣の中国では逆にネットも普及した今になって映画を観に行く余裕が出てきたと映画館での興行が21世紀に入ってから盛り上がってる)。日本の映画館が定員入替え制になったのもここ10~20年弱の話である。

 このように異なる時代に公開された映画のヒット具合を単純に比較するというのはナンセンスだと思う。



◆ ◆ ◆

 以下、参考までに色々とデータ等をあげておきます。




 日本では、ここ四半世紀ほど映画館の入場料は殆ど変わっていない。価格上昇してはいるが緩やかなのである。アメリカなど他の国はインフレもあってどんどん値上がりしてる。


映画料金 比較
1994年2018年
大人料金
(総務省統計局の小売物価統計調査)
1800円1800円
平均料金
(日本映画製作者連盟)
1249円
(2013年は1246円)
1315円
米国の平均料金
(Box Office Mojo)
4ドル189ドル11



 このため、アメリカや全世界の歴代興収ランキングは新しい映画が上位に来る。


全米歴代興収ランキング TOP10
順位題名公開年全米興収
1スター・ウォーズ/フォースの覚醒2015年9億3666万2225ドル
2アベンジャーズ/エンドゲーム2019年8億5837万3000ドル
3アバター2009年7億6050万7625ドル
4ブラックパンサー2018年7億0042万6566ドル
5アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー2018年6億7881万5482ドル
6タイタニック1997年6億5936万3944ドル
7ジュラシック・ワールド2015年6億5227万0625ドル
8アベンジャーズ2012年6億2335万7910ドル
9スター・ウォーズ/最後のジェダイ2017年6億2018万1,382ドル
10インクレディブル・ファミリー2018年6億0858万1744ドル


全世界歴代興収ランキング TOP10
順位題名公開年全世界興収
(米ドルに換算して集計)
1アベンジャーズ/エンドゲーム2019年27億9780万0564ドル
2アバター2009年27億9043万9092ドル
3タイタニック1997年21億9517万0204ドル
4スター・ウォーズ/フォースの覚醒2015年20億6845万4133ドル
5アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー2018年20億4835万9754ドル
6ジュラシック・ワールド2015年16億7040万1444ドル
7ライオン・キング2019年16億5713万8876ドル
8アベンジャーズ2012年15億1881万5515ドル
9ワイルド・スピード SKY MISSION 2015年15億1525万3888ドル
10アナと雪の女王22019年14億5002万6933ドル



 当時の興収金額を2019年の物価に直してランキングしたものも発表されている。


全米歴代興収ランキング(2019年の物価に調整) TOP10
順位題名公開年全米興収
(2019年の物価に調整)
予想される動員数
1風と共に去りぬ1939年18億5058万1586ドル2億0228万6200人
2スター・ウォーズ1977年16億2949万6559ドル1億7811万9500人
3サウンド・オブ・ミュージック1965年13億0350万2105ドル1億4248万5200人
4E.T.1982年12億9773万0421ドル1億4185万4300人
5タイタニック1997年12億4005万4754ドル1億3554万9800人
6十戒1956年11億9843万1667ドル1億3100万0000人
7JAWS/ジョーズ1975年11億7244万7655ドル1億2815万9700人
8ドクトル・ジバゴ1965年11億3563万2932ドル1億2413万5500人
9エクソシスト1973年10億1179万8348ドル1億1059万9200人
10白雪姫1937年 9億9716万8333ドル1億0900万0000人


全世界歴代興収ランキング(2019年の物価に調整) TOP10
順位題名公開年全世界興収
(米ドルに換算して集計したものを
さらに2019年の物価に調整)
1風と共に去りぬ1939年37億0600万0000ドル
2アバター2009年32億5700万0000ドル
3タイタニック1997年30億8100万0000ドル
4スター・ウォーズ1977年30億4300万0000ドル
5アベンジャーズ/エンドゲーム2019年27億9800万0000ドル
6サウンド・オブ・ミュージック1965年25億4900万0000ドル
7E.T.1982年24億8900万0000ドル
8十戒1956年23億5600万0000ドル
9ドクトル・ジバゴ1965年22億3300万0000ドル
10スター・ウォーズ/フォースの覚醒2015年22億0200万0000ドル

 物価に合わせて換算した全米歴代興収ランキングとなると、21世紀の映画はトップ10にひとつも入らない。一番新しい映画で1997年の『タイタニック』、その次が1982年の『E.T.』。その次が1970年代の3作、1960年代が2作、1950年代が1作、1940年代が無くて、1930年代の2作が一番古い。

 21世紀の映画は11位に2015年の『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』、15位に2009年の『アバター』、16位に2019年の『アベンジャーズ/エンドゲーム』、29位に2012年の『アベンジャーズ』、30位に2015年の『ジュラシック・ワールド』とトップ30だと5本のみです。トップ100だと29本かな。




 ちなみに、フランスでは歴代興行成績ランキングを観客動員数で出している。なお、フランスの人口は現在7000万人未満です。


フランス歴代観客動員数ランキング TOP10
順位題名公開年フランス観客動員数
1タイタニック1997年2063万4793人
2Bienvenue chez les Ch'tis(監督&出演:ダニー・ブーン)2008年2041万3165人
3最強のふたり2011年1938万5300人
4白雪姫1938年1831万9651人
5大進撃1966年1727万3065人
6風と共に去りぬ1950年1672万3795人
7ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト1968年1487万3304人
8ジャングル・ブック1967年1569万6567人
9アバター2009年1467万7888人
10101匹わんちゃん大行進1961年1466万0594人

 やはり、21世紀の映画はトップ10内に3本だけである。

 関係ないけどフランスでも『風と共に去りぬ』の公開は日本同様に第二次世界大戦後なんだな。



◆ ◆ ◆

 現時点での日本での歴代興収1位は『千と千尋の神隠し』である。スタジオジブリの長編アニメーション。宮崎駿監督作品で上映時間は125分。2001年7月20日に日本で劇場公開された。

 メイン館は日比谷スカラ座1(現在は大幅に改装されTOHOシネマズ日比谷のスクリーン12になっている)。公開日前日の夜8時には日比谷スカラ座の前には300人近くが並んでおり、徹夜組は700人にも及び、夜が明けて公開初日の朝6時30分には2000人を突破した。全席自由席の時代である。




 公開初日からの14日間で動員数は450万人を突破、興収でも56億円を突破。20日間の動員数は660万人を超え、興収も80億円を突破。公開4週目の動員が公開1週目の動員を上回り、公開31日目に動員1000万人を記録し、興収でも130億円をクリア。公開56日目の段階で興収193億5430万円に達し、1997年に『もののけ姫』が樹立した日本映画の興収最高記録を超えた。

 69日目には動員1687万8000人に達し、1997年公開の『タイタニック』が持つ日本国内の動員最高記録を超えた(興収は217億円で『タイタニック』にはまだ40億円以上差がある)。104日目で動員1960万人、興収253億7000万円に達した。114日目(11月10日)に動員2023万人、興行収入262億円を突破し、『タイタニック』が持つ日本国内の興収最高記録を超えた。

 『千と千尋の神隠し』は公開から11週連続で週末興行成績(当時は東京都内5地区で集計した観客動員数でランキング)で1位、13週目から再び4週連続1位となったが、20週目の週末となる12月1日に客層の重なるファミリー向け映画『ハリー・ポッター』の1作目が動員数でも興収でも週末(土曜・日曜)の日本歴代記録を更新する数字で日本公開された。

―――― この段落はまだ書きかけです(300億円までの展開、再上映が興収に含まれるケースと含まれないケースなど)。 ――――




 日本映画製作者連盟(映連)によると、2001年の日本の映画館のスクリーン数は2,585で、そのうちシネコンは1,259だそうである。映画館がまだシネコンになってない都市が多かった印象。東京の銀座・日比谷・有楽町あたりにあるメイン館は、2004年や2009年に現在の全席指定・定員入替え制になった。

 当時の熱心なファンは、弁当(とは限らないけど)持参で朝の回に行き、そのまま夜の回まで居続ける。1人で5回や6回観ても、料金は1回分、観客動員数も1人としかカウントされない。今の映画館はほとんどが定員入替え制で、こんなことはできない。

 また、映連によると2001年の映画館の平均料金は1,226円。ちなみに、2018年の平均料金は1,315円で、2019年は1,340円です。2019年6月1日に各種料金(一般料金やシニア料金やレディースデイ料金など)を100円値上げした映画館が多かったのだが、2019年1月~5月は旧料金だったので年間の平均料金への影響は半減しており、2020年の平均料金はもっと上がると思われた。実際にはコロナ禍で急遽多数組まれた旧作上映は1100円などの料金だったため、年間平均料金を下げる効果があっただろう。



◆ ◆ ◆

―――― さらに続くのですが、まだ書けてません(鬼滅の興行収入の展開、2020年の公開が有利な点、不利な点など)。 ――――



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