映画の入場料の売上げ金額の総額を興行収入と呼ぶ。興収などと略される。この興収の日本での歴代ランキングの1位が19年ぶりに入れ替わろうとしている。
しかし、こういうニュースは業界向けニュースであって、業界の人だけが一喜一憂してればいい話ではないだろうか。そもそも、歴代ランキングを人数ではなく金額で順位付けしているのは、新しい映画が常に上位に来て記録が更新されるようにするためであり、それに一般の人までも見事に踊らされている。
少し古い話だが映画雑誌『キネマ旬報』で読んだ記事に、歴代の007映画の確か全世界での動員数の発表が海外であったのを受けて書かれたものがあった。当時ジェームズ・ボンドを演じていたピアース・ブロスナン主演作が興収では上位を独占するが、動員数となるとショーン・コネリー主演作が上位を独占するというような内容だった。
これを読んでから、公開された時代の異なる映画の興行収入を比較しても意味が無いなと思うようになった。
ならば、観客の人数ならいいのかというと、そういう話でもない。時代によって人口も大きく変わるから。ならば国民の何%が観たという数字ならばどうだろう。それも、人口が同じでも若者や子供の比率が少ない今の日本と、そうではない昔の日本とでは条件が全然違うだろう。
違う時代というと、レンタルビデオがなかった時代もあれば、テレビ放送もなかった時代もある(お隣の中国では逆にネットも普及した今になって映画を観に行く余裕が出てきたと映画館での興行が21世紀に入ってから盛り上がってる)。日本の映画館が定員入替え制になったのもここ10~20年弱の話である。
このように異なる時代に公開された映画のヒット具合を単純に比較するというのはナンセンスだと思う。
以下、参考までに色々とデータ等をあげておきます。
日本では、ここ四半世紀ほど映画館の入場料は殆ど変わっていない。価格上昇してはいるが緩やかなのである。アメリカなど他の国はインフレもあってどんどん値上がりしてる。
1994年 | 2018年 | |
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大人料金 (総務省統計局の小売物価統計調査) | 1800円 | 1800円 |
平均料金 (日本映画製作者連盟) | 1249円 (2013年は1246円) | 1315円 |
米国の平均料金 (Box Office Mojo) | 4ドル18 | 9ドル11 |
このため、アメリカや全世界の歴代興収ランキングは新しい映画が上位に来る。
順位 | 題名 | 公開年 | 全米興収 |
---|---|---|---|
1 | スター・ウォーズ/フォースの覚醒 | 2015年 | 9億3666万2225ドル |
2 | アベンジャーズ/エンドゲーム | 2019年 | 8億5837万3000ドル |
3 | アバター | 2009年 | 7億6050万7625ドル |
4 | ブラックパンサー | 2018年 | 7億0042万6566ドル |
5 | アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー | 2018年 | 6億7881万5482ドル |
6 | タイタニック | 1997年 | 6億5936万3944ドル |
7 | ジュラシック・ワールド | 2015年 | 6億5227万0625ドル |
8 | アベンジャーズ | 2012年 | 6億2335万7910ドル |
9 | スター・ウォーズ/最後のジェダイ | 2017年 | 6億2018万1,382ドル |
10 | インクレディブル・ファミリー | 2018年 | 6億0858万1744ドル |
順位 | 題名 | 公開年 | 全世界興収 (米ドルに換算して集計) |
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1 | アベンジャーズ/エンドゲーム | 2019年 | 27億9780万0564ドル |
2 | アバター | 2009年 | 27億9043万9092ドル |
3 | タイタニック | 1997年 | 21億9517万0204ドル |
4 | スター・ウォーズ/フォースの覚醒 | 2015年 | 20億6845万4133ドル |
5 | アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー | 2018年 | 20億4835万9754ドル |
6 | ジュラシック・ワールド | 2015年 | 16億7040万1444ドル |
7 | ライオン・キング | 2019年 | 16億5713万8876ドル |
8 | アベンジャーズ | 2012年 | 15億1881万5515ドル |
9 | ワイルド・スピード SKY MISSION | 2015年 | 15億1525万3888ドル |
10 | アナと雪の女王2 | 2019年 | 14億5002万6933ドル |
当時の興収金額を2019年の物価に直してランキングしたものも発表されている。
順位 | 題名 | 公開年 | 全米興収 (2019年の物価に調整) | 予想される動員数 |
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1 | 風と共に去りぬ | 1939年 | 18億5058万1586ドル | 2億0228万6200人 |
2 | スター・ウォーズ | 1977年 | 16億2949万6559ドル | 1億7811万9500人 |
3 | サウンド・オブ・ミュージック | 1965年 | 13億0350万2105ドル | 1億4248万5200人 |
4 | E.T. | 1982年 | 12億9773万0421ドル | 1億4185万4300人 |
5 | タイタニック | 1997年 | 12億4005万4754ドル | 1億3554万9800人 |
6 | 十戒 | 1956年 | 11億9843万1667ドル | 1億3100万0000人 |
7 | JAWS/ジョーズ | 1975年 | 11億7244万7655ドル | 1億2815万9700人 |
8 | ドクトル・ジバゴ | 1965年 | 11億3563万2932ドル | 1億2413万5500人 |
9 | エクソシスト | 1973年 | 10億1179万8348ドル | 1億1059万9200人 |
10 | 白雪姫 | 1937年 | 9億9716万8333ドル | 1億0900万0000人 |
順位 | 題名 | 公開年 | 全世界興収 (米ドルに換算して集計したものを さらに2019年の物価に調整) |
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1 | 風と共に去りぬ | 1939年 | 37億0600万0000ドル |
2 | アバター | 2009年 | 32億5700万0000ドル |
3 | タイタニック | 1997年 | 30億8100万0000ドル |
4 | スター・ウォーズ | 1977年 | 30億4300万0000ドル |
5 | アベンジャーズ/エンドゲーム | 2019年 | 27億9800万0000ドル |
6 | サウンド・オブ・ミュージック | 1965年 | 25億4900万0000ドル |
7 | E.T. | 1982年 | 24億8900万0000ドル |
8 | 十戒 | 1956年 | 23億5600万0000ドル |
9 | ドクトル・ジバゴ | 1965年 | 22億3300万0000ドル |
10 | スター・ウォーズ/フォースの覚醒 | 2015年 | 22億0200万0000ドル |
物価に合わせて換算した全米歴代興収ランキングとなると、21世紀の映画はトップ10にひとつも入らない。一番新しい映画で1997年の『タイタニック』、その次が1982年の『E.T.』。その次が1970年代の3作、1960年代が2作、1950年代が1作、1940年代が無くて、1930年代の2作が一番古い。
21世紀の映画は11位に2015年の『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』、15位に2009年の『アバター』、16位に2019年の『アベンジャーズ/エンドゲーム』、29位に2012年の『アベンジャーズ』、30位に2015年の『ジュラシック・ワールド』とトップ30だと5本のみです。トップ100だと29本かな。
ちなみに、フランスでは歴代興行成績ランキングを観客動員数で出している。なお、フランスの人口は現在7000万人未満です。
順位 | 題名 | 公開年 | フランス観客動員数 |
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1 | タイタニック | 1997年 | 2063万4793人 |
2 | Bienvenue chez les Ch'tis(監督&出演:ダニー・ブーン) | 2008年 | 2041万3165人 |
3 | 最強のふたり | 2011年 | 1938万5300人 |
4 | 白雪姫 | 1938年 | 1831万9651人 |
5 | 大進撃 | 1966年 | 1727万3065人 |
6 | 風と共に去りぬ | 1950年 | 1672万3795人 |
7 | ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト | 1968年 | 1487万3304人 |
8 | ジャングル・ブック | 1967年 | 1569万6567人 |
9 | アバター | 2009年 | 1467万7888人 |
10 | 101匹わんちゃん大行進 | 1961年 | 1466万0594人 |
やはり、21世紀の映画はトップ10内に3本だけである。
関係ないけどフランスでも『風と共に去りぬ』の公開は日本同様に第二次世界大戦後なんだな。
現時点での日本での歴代興収1位は『千と千尋の神隠し』である。スタジオジブリの長編アニメーション。宮崎駿監督作品で上映時間は125分。2001年7月20日に日本で劇場公開された。
メイン館は日比谷スカラ座1(現在は大幅に改装されTOHOシネマズ日比谷のスクリーン12になっている)。公開日前日の夜8時には日比谷スカラ座の前には300人近くが並んでおり、徹夜組は700人にも及び、夜が明けて公開初日の朝6時30分には2000人を突破した。全席自由席の時代である。
公開初日からの14日間で動員数は450万人を突破、興収でも56億円を突破。20日間の動員数は660万人を超え、興収も80億円を突破。公開4週目の動員が公開1週目の動員を上回り、公開31日目に動員1000万人を記録し、興収でも130億円をクリア。公開56日目の段階で興収193億5430万円に達し、1997年に『もののけ姫』が樹立した日本映画の興収最高記録を超えた。
69日目には動員1687万8000人に達し、1997年公開の『タイタニック』が持つ日本国内の動員最高記録を超えた(興収は217億円で『タイタニック』にはまだ40億円以上差がある)。104日目で動員1960万人、興収253億7000万円に達した。114日目(11月10日)に動員2023万人、興行収入262億円を突破し、『タイタニック』が持つ日本国内の興収最高記録を超えた。
『千と千尋の神隠し』は公開から11週連続で週末興行成績(当時は東京都内5地区で集計した観客動員数でランキング)で1位、13週目から再び4週連続1位となったが、20週目の週末となる12月1日に客層の重なるファミリー向け映画『ハリー・ポッター』の1作目が動員数でも興収でも週末(土曜・日曜)の日本歴代記録を更新する数字で日本公開された。
―――― この段落はまだ書きかけです(300億円までの展開、再上映が興収に含まれるケースと含まれないケースなど)。 ――――
日本映画製作者連盟(映連)によると、2001年の日本の映画館のスクリーン数は2,585で、そのうちシネコンは1,259だそうである。映画館がまだシネコンになってない都市が多かった印象。東京の銀座・日比谷・有楽町あたりにあるメイン館は、2004年や2009年に現在の全席指定・定員入替え制になった。
当時の熱心なファンは、弁当(とは限らないけど)持参で朝の回に行き、そのまま夜の回まで居続ける。1人で5回や6回観ても、料金は1回分、観客動員数も1人としかカウントされない。今の映画館はほとんどが定員入替え制で、こんなことはできない。
また、映連によると2001年の映画館の平均料金は1,226円。ちなみに、2018年の平均料金は1,315円で、2019年は1,340円です。2019年6月1日に各種料金(一般料金やシニア料金やレディースデイ料金など)を100円値上げした映画館が多かったのだが、2019年1月~5月は旧料金だったので年間の平均料金への影響は半減しており、2020年の平均料金はもっと上がると思われた。実際にはコロナ禍で急遽多数組まれた旧作上映は1100円などの料金だったため、年間平均料金を下げる効果があっただろう。
―――― さらに続くのですが、まだ書けてません(鬼滅の興行収入の展開、2020年の公開が有利な点、不利な点など)。 ――――