超スローライフな日々

丑のように、ゆっくりとマイペースでいきたかった2009年も過ぎ寅年ーそれから15年の歳月が経ちました。

銀時計の特攻

2008-07-28 | 
陸軍大尉若杉是俊の幼年学校魂

江森 敬治箸    

「将来の陸軍大臣」とまで嘱望された幼年学校出の青年将校は、なぜ特攻として死んだのか。戦時下の青少年の心のひだを探るルポ

靖国神社の遊就館には戦没者の数々の遺品が収められています。この本の主人公、若杉是俊大尉の遺品は、3たび拝受した恩賜の銀時計の1つと、特攻出撃を前に書かれた両親への別れの手紙です。

戦前のエリートコース陸軍幼年学校に学び、「将来の陸軍大将」と衆目が一致していた若き逸材は、自ら特攻を志願し散華(さんげ)しました。しかし身近な人間には「特攻になるなよ」と自らの心情を語ってもいます。戦時下の超エリート日本男児が遺した日記と手紙を手がかりに、特攻隊員にとって、戦争とは、祖国とは、天皇とは何だったのかを、特攻生き残りの老人たちに導かれながら、著者は探っていきます。

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塩狩峠

2008-07-26 | 
 旧天塩国と旧石狩国の国境を意味する塩狩峠は、JR旭川駅から普通列車で約40~60分の塩狩駅下車すぐ。

結納のため札幌に向った鉄道職員の乗った列車が、峠にさしかかった時、突然連結器がはずれ、最後尾の客車が逆走し始めた。

彼は線路に身を投げて、暴走する車両を止め、多くの乗客の命を救った。

長野政雄さんが殉職したのは、同駅から約3.2キロ、北側に下った地点とされ、真っ白な雪原があの日、真っ赤に染まったという。


三浦 綾子著 「塩狩峠」

カラフル―お勧めの一冊

2008-07-01 | 
 死んだはずの「ぼく」の魂にむかって天使が言った。

「おめでとうございます、抽選にあたりました!」。そうして、ぼくは輪廻のサイクルに戻るために、下界にいるだれかの体を借りて(天使業界では「ホームステイ」というのだそうだ)前世で犯した悪事を思い出さなくてはならなくなった。

 乗り移ったのは「小林真」という自殺したばかりの14歳の少年。

ところが、真は絵を描くのが得意な以外は、親友と呼べる友だちもいない、冴えないヤツだった。

 父親は自分だけよければいい偽善者で、母親はフラメンコの先生と浮気中。しかも、好きな女の子は、中年オヤジと援助交際中ときた。

 しかし、ホームステイの気楽さも手伝って、よくよく周りを見回してみると、世界はそんなに単純じゃないってことが次第にわかってくる。



森田芳光の脚色で映画化。著者は、講談社児童文学新人賞受賞作「リズム」でデビューした児童文学界の森絵都。

 周りを見渡せばすぐにいそうな登場人物との距離感が、物語をよりリアルにみせてくれる。

中学生が主人公であるが「世界はたくさんの色に満ちている」というテーマのとおり、どの世代にも共感できる本で、すべての大人にもおすすめしたい。(小山由絵)

徒然草(百三十七段)花はさかりに

2008-05-29 | 
 誰もが一度は読む古典…兼好法師の「徒然草」。

先日亡くなられた川田アナのブログで自身の気持ちを引用され、一段と有名になったようです。
 
  花は盛りに、月はくまなきをのみ見るものかは。雨に向ひて月をこひ、たれこめて春の行方も知らぬも、なほあはれに情深し。咲きぬべきほどのこずゑ、散りしをれたる庭などこそ、みどころおほけれ。

 解釈はそれぞれあるようですが、綺麗な花のみでなく、蕾の花、枯れた葉など花の全てありのままを受け入れ自然の姿を味わい楽しんだ気持ちを表現したものであると捉えたいものです。

 月はくまなきを見るものかは。雨に向ひて月をこひ… 昔の日本人は完全でないものに対する美意識をもっていたようですね。

 それにしても、なんだか去り逝くものの哀れを感じ胸がキューンとしめつけられる想いです。


手紙

2006-11-25 | 
 友人から今、「手紙」という本を読んでいると聞いた。なんでも娘さんが読んで感動したので、そのあと読むようにと貰ったそうだ。家は娘がいないのでこんな話を聞くと実に羨ましく思う。

 ここのところ目がかすみがちで、最近あまり本を読んでいない。以前に、この友人と一緒に目医者に行ったことがあるが…。

 友人が、実に解りやすくこと細かに、ストーリーの説明をしてくれた。映画化され今月封切りされるそうだが、休日にはぜひ観てみたいと思っている。

 今年、直木賞を受賞した東野圭吾の社会派小説を、生野慈朗監督が映画化。
 01年夏から02年秋まで朝日新聞日曜版で連載された原作は、犯罪者の家族に突き付けられる厳しい現実という衝撃的で重いテーマが、大きな反響を呼んだそうだ。

 映画版には、原作になかった感動のラストシーンが用意されているそうだ。

 沢尻エリカちゃんも出演しているそうなので、今日観に行こうっと!

 (story) 
 工場で働く20歳の武島直貴は、職場の人間ともまるで打ち解けず、人目を避けるように暮らしていた。それというのも唯一の家族である兄・剛志が、直貴の学費欲しさに盗みに入った邸宅で老婆を殺してしまったからだった。

 兄が罪を犯したのは、自分のせいだ。そう自責する直貴は、せめてもの償いにと服役中の兄から届く手紙に丁寧な返事を書き続けていた。

 そんなある日、更生した元服役囚と出会った直貴は、一度はあきらめたお笑い芸人の夢に再び挑戦しようと決意する。

ちょっと若返るドラマの中へ

2006-08-20 | 
リリアン

作:山田太一  絵:黒井健
小学館 1,500円(税抜き)

男の子の前に、突然見知らぬ少女が現れた―。
あなたは、はじめて大人の世界につま先をつけた瞬間を、おぼえていますか?
 男の子が地面にマルを描いている。急に女の子が訊く。「このマルはなに?」。
男の子が顔をあげると、まばたきをしないお人形のような顔。知らない子だ。
男の子は、「このマルのなかへはいっちゃダメ」って言う。そして、ここからドラマが始まる。
 もうすぐ一年生にあがろうという男の子が主役で、大通りから少し脇に入ったとこの小さな食堂の前の道が舞台だ。女の子はマルのなかに入りたがるが、男の子はダメと言う。ここはユウちゃんしか入れない。すると女の子は、すーっと宙に浮く。抱きあげたのは大きな男で、ちょっとこわい。大男はそのまま大通りのほうへいってしまう。
 読者は、どきどきしながら男の子と一緒になりゆきを見つめ、ドラマの中に入っていくことになる。お話はファンタスティックに広がり盛り上がり、小さな謎解きがあって、再びあの大男が現れる―。四月。男の子は一年生になっている。そして、今度は劇場の楽屋口の石段に腰かけたあの大男を見かける。そんな二人の対話劇。
 夢と本当はちがうんだ―と男は言う。男の子は口惜しいような、つまらないような、やりきれないような気持ちになっている。男の子は、大人への階段を一つ昇るのがやるせないのか。
 女の子の名はリリアンだと聞かされたって……。
 ――まるで山田さんのテレビドラマでも見ているように引き込まれる。そこを描く黒井さんの、やわらかで夢のようにぼうとした、そしてあの時代を偲ばせるセットの前で、ゆうらりと繰り広げられていく二人のドラマ……。
 このところどっさりと出回っている、アイデアを絵でカバーしただけのような絵本とはちがって、これはしっかりとした物語絵本だ。たっぷりした読後感が広がる。この一冊をじっくり読み、黒井さんの絵の中に溶けこめた読者は、それこそ二人が作ったドラマの中に入っていったようなもの。出てくると、子供はちょっぴりトシをとり、大人はちょっぴり若返っている――ような感を抱かせる異色の一冊だ。二人の足許に大きなマルを描きたくなる。

 ☆今江祥智(いまえ よしとも)
  1932年大阪府生まれ。教員、編集者のかたわら1960年に『山のむこうは青い海だった』を出版。小説、絵本、翻訳など著書多数。1990年までの作品は『今江祥智の本』全37巻(理論社)に収められている。
 
 

潮音(しおのね)

2006-04-23 | 

わきてながるゝ
やほじほの
そこにいざよふ
うみの琴
しらべもふかし
もゝかはの
よろづのなみを
よびあつめ
ときみちくれば
うらゝかに
とほくきこゆる
はるのしほのね

by 島崎藤村