超スローライフな日々

丑のように、ゆっくりとマイペースでいきたかった2009年も過ぎ寅年ーそれから15年の歳月が経ちました。

十三夜

2007-10-23 | 
 きょうは十三夜。

 仕事帰りに、空を仰ぐと綺麗な月が煌々と輝いていました。てっきり満月だと思っていたところ、左側がおおきくかけていました。

 だが、そんなことはどうでもよく「十三夜に曇りなし」といわれるように、あまりに夜空に映える月の美しさに、つい足を止め、暫くうっとりと眺め、久し振りにロマンチックな気分に浸ることができました。

 十三夜といえば、二十五歳という若さで亡くなった明治時代の女性作家樋口一葉を思い出す方も多いのではないでしょうか?

 彼女の短編「十三夜」では、鬼のような夫のわがままに耐えかねて、離縁を決意して実家に戻ってくる娘に、父親は「かわいい子供のことを思えはどんなつらいことも辛抱できよう、今までの辛抱ができたならばこれから後もできぬはずはあるまい。おまえが口に出さなくてもお前の苦労は親も察するし弟も察する、涙は各自に分けて泣こう。」と懇々と諭す。

 娘は泣きながら「離縁をと言ったのもわがままでございました。私さえ死んだ気になれば、四方波風立たず、あの子も両親の手で育てられます。」と応える。

 十三夜の月が照らす座敷での場面である。十三夜の月は満月ほど明るく華やかな趣はないが夕方から夜半過ぎまでの闇を照らすその明るさは、離縁をめぐる親子のやりとりやその帰り道、身を持ち崩して車夫になった初恋の同級生との偶然の再会を照らすにはちょうどよい明るさであった。