弁護士の執念を描いた法廷サスペンス。アメリカの法曹界では、訴訟で大儲けする弁護士を「レインメーカー」と呼ぶらしい。
「法律を知らないと不幸になる」と医師の側に立ち、法律問題や医療過誤訴訟を闘っている異能の弁護士・雨守誠に、ある日総合病院から依頼が入った。2歳の一人息子を急死させた野々村喬一•結子夫妻が父で県会議長である喬太郎に唆され医療訴訟を起こす。その医療過誤で訴えられた、病院と医師を弁護してほしいというのだ。救えなかったら医師が悪いのか?自身の信念に基づき、雨守は医療現場の矛盾や不条理に斬り込んでいく・・・。「彼らを支援するのは、つまらない訴訟で潰されることなく医療活動を続けてもっと多くの患者さんを救って欲しいからだ」「医療技術が進歩すると、やがて、救えない命なんてなくなるかもしれない。但し、回復のために時間も人も、手間がかかる。それによって医療従事者の負担は拡大していくのよね、そのバランスが歪なの。だから、これは日本の医療制度の根本的な問題だと思う。」(P173)医療訴訟の背後でむりやり医療過誤を作り出そうとする弁護士。医師を守ろうとする弁護士。原告の背後には蠢く政治家。新聞記者は表裏の真相をあばけるか。病院を高値で売却しようとしている勢力も。それぞれの立場やいろんな思惑が絡んで描かれていて面白かった。
2021年10月幻冬舎刊
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