経済小説。粉飾決算や株価が過大評価されている企業を探し出し、カラ売りを仕掛けて追及レポートを発表、株価が下がったところで買い戻して利益を上げる投資ファンドを「カラ売り屋」というらしい。ニューヨークに本拠地を置くカラ売り専業投資ファンド、パンゲア&カンパニーは東京事務所を開設した。そのパートナーの北川靖は「タイヤ・キッカー」のトニーと組んで、傘下のMS法人を使って病院買収に邁進する巨大医療グループ東堂メディカル、架空売上げの疑いがあるシロアリ駆除会社東京シロアリ防除、タックス・ヘイブンを悪用して怪しい絵画取引を行う総合商社三金通商絵画部とそれぞれ対決。窮地に追い込まれた相手は、何とか株価を吊り上げ、パンゲアを叩きつぶそうと画策するのだが・・・。現代社会の問題を金融の知識をからめて、小説の形で学べた。今回は、国民皆保険を含む医療費の問題・・・「病院買収王」。成り上がりの後に経営者が豹変した企業経営者の問題・・・「シロアリ屋」。高騰する芸術作品のオークションの裏側・・・「商社絵画部」の3つ。金融市場に蠢く男たちの息詰まる攻防戦で、日本経済の病巣があぶりだされる展開で勉強になった。ただ主人公のパンゲア側の掘り下げが希薄で深まりが感じられなかった。
2021年10月角川書店刊
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