長編サスペンス小説。薬物やアルコール依存症患者や性暴力、DV被害者の女性たちが暮らすシェルターで発生した住宅火災。「先生」こと小野尚子が入居者を救い焼死。盛大な「お別れの会」が催された後、警察から衝撃の事実が告げられる。「小野尚子」として死んだ遺体は、DNA検査の結果半田明美という別人のものだった。スタッフ中富優紀は、フリーライター山崎知佳とともに、すべての始まり、「1994年」に何が起こったのかを調べ始め、過去を調べるうちに、かつてその死んだ元女優半田明美を追っていた週刊誌の記者長島剛にたどり着く。一方、疑念渦巻く女の園で指導者を失ったシェルター「新アグネス寮」内では、じわじわと不協和音が・・・。真相を追ってフィリピンへ飛んだり、謎解きの要素もあり面白かった。「策士策に溺れて、自分で自分を洗脳しちまった」(P530)。「あちこちの国の工作員がやってることなんだ。所作から頭の中身まで、設定した人物になりきる。やりすぎると自分の人格までもってかれる」。(P531)「私は人は生き直すことができる、と信じたいです」。読み応えのある作品でした。
2018年7月集英社刊
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