人が生きてきた時間を封じ込める―それが、肖像彫刻。美大卒業後彫刻家になるも食えず挙句の果てに嫁に愛想を尽かされて息子と出て行かれた。40代で夢を追い求めてイタリアに渡り、修行の末8年後帰国するがモノにならず。53歳のバツイチ高山正道が、芸術の道を諦め、姉の薫の伝手で八ヶ岳を望む農村に移り住み「ローマナート タカヤマ」の看板を掲げ銅像職人として再出発する。やがて彼の作った作品には、文字通り魂が宿ってしまう噂が。亡き両親、高名な学者、最愛の恋人・・・周囲の思惑そっちのけで、銅像たちが語り始めた意外なホンネ。作った作品に振り回される主人公の姿は可笑しさいっぱいで、思わず笑えます。日常の生活からいつの間にか人間の心の奥が出現してくる人間の愚かさと愛しさが胸に迫る人生賛歌の人生ドラマでした。
2019年3月新潮社刊
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