ならおうは穏やかに語る

Fly Fishingを中心に難しい話からヨタ話まで支離滅裂な雑文。
(09/08/23カウンターを付けました。)

円高とデフレ、円安とインフレ

2012-11-03 23:20:44 | Weblog
ちょっと小難しい話。藤巻健史氏の「日本の家電は6重苦じゃない、「1重苦」だ」から類推した事。

円高はデフレを誘う

冒頭に掲げた藤巻氏の言は、競争相手がグローバルになったため、物が売れない事を端的に述べている。
面白いのは熱海の観光旅館のライバルがハワイってこと。
円高になると海外旅行に行く。交通費・滞在費だけではなく食費、現地の交通費全てが割安。
国内の観光業界が大変な理由はブームがどうのこうのじゃなく、円高。
電機産業だけではない。ちょっと前に一ドル100円だった。今は80円を切っている。
同じ商品が2割も高いわけだ。この辺は少し前にここで書いた内容と同じ。
家電製品を値下げして売るしか無い。デフレ。

農作物も輸入品による価格下落圧力にさらされている。
中国産野菜がどうのこうのじゃない。オージービーフ、カナダ産豚肉、ブラジル産チキン・・・。
安価な海外輸入品によって国内産農作物の価格が下がる。デフレ。

衣服も同じだ。海外縫製によって安価になるので、デフレ。

殆どの商品が円高になると価格下落圧力が作用するのでデフレとなる。

しかし、価格下落圧力が作用しないモノがある。
・公共料金
・国内輸送料金(運賃)
・給料
・年金
・・・・
これらは価格の下方硬直性があるものだ。デフレになってもガス代や電気料金、電話代は減額されないし、同じ様に輸送量も下がらない。むしろ何かをきっかけに上げてくる。我々の給料や年金も同じで、そう簡単に下げられない。

なので、給料を下げろ!年金を下げろ!と叫ぶ奴らが居るが、あれはガスや電気料金の代弁者かもしれない。

円高の恩恵
実は世界的に原油が高騰したのに、公共料金となるエネルギー代が殆ど上がっていない
これは円高による差益還元といえそうだ。きちんと計算した訳ではないが、なんとなくちょっとだまされている様な?
価格下落によって消費者は商品の選択肢が増加。さらに安価で良い者を入手できる様になった。

別な見方をすればやっと憧れていた欧米なみの生活ができるようになった。ってことかもしれない。
この恩恵は広く浅く行き渡り、デメリットである輸出産業の没落をドラマ代わりに見る層を増やした。


円高のデメリット
言うまでもなく、輸出産業の崩壊。
簡単に製品のコストを原材料と加工費にする。この加工費はいわば付加価値。
鉄の塊りを加工する事で刀にも、釘にも、鎧にも、自動車にもなる。
円高によって製品に占める原材料費が低下しても加工費(人件費が含まれる)は日本で生産する限り変わらない。
よって付加価値が高い製品ほど円高で価格競争力を失う。
極端な例だが、価格が10,000円の製品で原材料費が30%(3,000円)とする。20%の円高によって原材料費3,000円は20%安で2,400円となる。価格低下は600円。これは全体の6%(=30%の20%)。
逆に原材料費が90%(9,000円)の製品であれば、円高による原材料費の低下は90%*20%で18%(1,800円)の価格低下になる。
横流しに近い加工費があまりかからない製品であれば(殆ど素材だが)、円高による素材価格低減効果が大きいため、輸出時の価格高騰の影響は小さい。
10,000円の製品が12,000円になるのではない。
1,000円+9,000円が1,200円(=1,000*1.2)+7,200円(=9,000*0.7)=8,400円となる。
円高による加工費高騰を原材料費の価格低減がまかなってくれる。
10,000円で売ってもいい。加工賃が1,000円ではなく1,600円となり、今迄よりも600円の利益が出る。

原材料比率と海外販売価格を示すと下の図の様になる。

通貨高の比率が高くなると販売価格を100%のままで維持できる原材料比率が高くなり、究極は100%。つまり付加価値をつけてはならないということになる。

加工費が占める割合が高い程、つまり原材料から高い付加価値を与える程販売価格は上昇する。
適正な海外への販売価格は下の様になる。
海外販売価格=原材料価格×(1-円高比率)+加工費×(1+円高比率)

円高(通貨高)が200%になると原材料費率が75%でないと商売にならないということになる。
上記の話は「同じ製品」「同じ機能」「同じ付加価値」という事が大前提にある。
これは単純なブランド戦略による「高くても買ってもらう」という考えとは異なる。この戦略は「高すぎたら買わん」に繋がる。

結局、当局による円高是正が必要だってこと。自助努力でどうのこうの出来る問題ではない。
この国で原材料に付加価値をつけて売るという戦略が成立しなくなるのだ。

サプライチェインの上流は通貨高の影響は少ない。しかし、下流になるほど、ここでは加工費としたが様々な経費が上乗せされて行く程通貨高の影響は非常に大きくなる。

円安によるインフレ
これは簡単だ。原材料費が高騰するから勝手にインフレになる。強力なインフレはハイパーインフレとなる。
また、経済規模の拡大が無い場合はスタッグフレーション(不況下のインフレ)となる。

円安の恩恵
基本的に輸出型産業は大きく伸びる。国内の付加価値が海外で低く見積もられる訳だ。若干損した気分だが、仕事がある方が良いかな。
(ここはもう少し考える必要がありそうだ)
また、国内観光業が伸びる。海外からわんさかとやってくるわけだ。

円安のデメリット
海外から輸入するエネルギー、素材が高騰する。
製品も高くなるが、円高で示した様に、その製造国は利益を削って販売してくるのでそれほど製品の国内価格は上昇しないだろう。
というわけで、さっきの考えを拡張し、円高比率(通貨高比率)を円安にすると

原材料比率の低い、付加価値の高い製品程儲けが大きい。
しかし、円安比率が99%になると原材料比率が殆ど無い製品のみが利益を確保できる。
これは円安によって原材料費がもの凄く高騰するため、加工費でカバーできなくなることを示す。
原材料比率と海外販売価格を円安側に延長すると下の図の様になる。

この図は原材料費と付加価値が同じ(原材料比率が50%)製品は通貨高の影響を受けない事をしめす。

製品は原材料に何らかの付加価値を付けたものである。
この付加価値には加工費、輸送費、各工程での利益、税金等の経費が含まれる。
原材料・・・鉄の場合は鉄鉱石。
加工組立業であれば、様々な製品の部品が原材料になるだろう。
そういう意味ではApple製品はAppleブランドとデザイン以外は原材料と言える。
これは原材料比率が高い製品とも言えるね。

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