ある日の夜、意外な人から電話がかかってきた。その人(仮にTさん、とでも呼んでおこう)は、知り合いの治療家で、地元でカイロプラクティックの治療院を開業している。と言っても、特に連絡を取り合う間柄でもなく、せいぜい年賀状をやり取りする程度。だから、電話口で「Tです」という声を聞いた時は、ちょっと驚いた。しかし、もっと驚いたのは、その要件だった。「痩身、やりませんか?」というのだ。
私(sokyudo)とTさんとのやり取りを(別に録音していたわけではないので、実際のものとは少し違っているとは思うが)再現すると…
T:Sさん、治療院の方はどうですか?
S:いや~相変わらず厳しいですね。大変です。
T:ねぇ、Sさん。痩身、やりませんか?
それを聞いて一瞬、Tさんが私に「痩せろ」と言っているのか、と勘違いしそうになった(何しろ、あまりにも唐突だったので)。が、もちろんそうではなかった。しかし、私は自分の治療院で痩身をやることに、全く興味がない。ウチにも日本痩身医学協会を始め、いくつかのところから、再三に渡ってDMが来ていたので、この手のビジネスに色気があれば、Tさんからの電話を待つまでもなく、もっと早く手を出していただろう。
S:…ウーン、興味ないです。
T:どうしてですか? ウチは、これをやるようになって、ずいぶん楽になりましたよ。Sさんのところも大変なんでしょう?
S:いやぁ、やりたくないことをやってガツガツ稼ぐのも、ちょっとなぁ、って思うもんで。
しかし、Tさんは簡単には引き下がらなかった。なおも私を説得にかかるのだが、その材料が「ウチも、これでかなり楽になった。どうして、やらないのか」ということを繰り返すだけなので、あまり説得になっていない。実際のところはわからないが、どうも1人会員にするごとに、いくらかのキックバックがあるか、会の中での地位が上がるかするのかもしれない(今思えば、痩身ビジネスの実態を根ほり葉ほり聞き出せる、いい機会だったかもしれない、とちょっと残念)。ただ少なくとも、ウチの経営状態を心配して友情から言ってくれているのではない、ということだけはわかった。
結局、同じやり取りが何度も繰り返された挙げ句、
T:で、Sさん、痩身やりませんか?
S:興味ないです(キッパリ)。
T:そうですか、わかりました。それじゃあ、まぁ頑張ってください。
S:ええ、Tさんも。
ということで、電話は切れた。
耳ツボ痩身をうたっている団体はいくつかあって、例によってお互いが「元祖はウチだ」「ウチこそ本物だ」と、主導権争いをやっているようだ。だが、いろいろ調べてみると、「耳ツボ痩身」とうたってはいるが、そのほとんどは、耳ツボはむしろオマケのようなもので、実態は食事指導と、そこでの栄養分の不足を補う名目のサプリメントの販売が中心らしい(その当たりの広告と実態の差は、「苦情の坩堝(るつぼ)」というサイトに、前述の日本痩身医学協会の例が出ているので、興味があったら見てみるといい。また、代田文彦門下の鍼灸師の先生のブログに「効果がない痩身耳針」という記事もあるので、こちらも参考までに)。
鍼灸学校では耳鍼(もちろん、単なる「痩せる耳鍼」ではなく、ちゃんとした治療としての耳鍼)の授業もあって、中国で耳鍼治療を開発した老中医の1番弟子だったという先生が教えてくれたが、その時「耳鍼でどれくらい痩せられるんですか?」と質問したところ、その先生の答は「耳鍼だけでは、痩せてもせいぜい2、3kg。ちゃんと食事療法をやって、初めて痩せられる」とのこと。だから、彼ら「耳ツボ痩身」のやっていることは間違いではないのだが、別にサプリを使わなければならない理由はどこにもないのである。
そもそも、本気で痩せたいと思うなら、こんな「痩身ビジネス」などに高いカネをつぎ込むより、同じカネで航空機のチケットを買って、パレスチナやレバノンの難民キャンプで1カ月くらいボランティアでもしてきた方が、はるかに確実に痩せられるのではないかと思う。命の保証はできないが、怪しげな「痩せ薬」を飲んで死ぬ人もいるくらいだから、命の保証がないのは同じこと。あとは、痩せようとすることが、得体の知れない連中を儲けさせるだけで終わるのか、多少でも世の中のためになれるようにするか、だ。
私(sokyudo)とTさんとのやり取りを(別に録音していたわけではないので、実際のものとは少し違っているとは思うが)再現すると…
T:Sさん、治療院の方はどうですか?
S:いや~相変わらず厳しいですね。大変です。
T:ねぇ、Sさん。痩身、やりませんか?
それを聞いて一瞬、Tさんが私に「痩せろ」と言っているのか、と勘違いしそうになった(何しろ、あまりにも唐突だったので)。が、もちろんそうではなかった。しかし、私は自分の治療院で痩身をやることに、全く興味がない。ウチにも日本痩身医学協会を始め、いくつかのところから、再三に渡ってDMが来ていたので、この手のビジネスに色気があれば、Tさんからの電話を待つまでもなく、もっと早く手を出していただろう。
S:…ウーン、興味ないです。
T:どうしてですか? ウチは、これをやるようになって、ずいぶん楽になりましたよ。Sさんのところも大変なんでしょう?
S:いやぁ、やりたくないことをやってガツガツ稼ぐのも、ちょっとなぁ、って思うもんで。
しかし、Tさんは簡単には引き下がらなかった。なおも私を説得にかかるのだが、その材料が「ウチも、これでかなり楽になった。どうして、やらないのか」ということを繰り返すだけなので、あまり説得になっていない。実際のところはわからないが、どうも1人会員にするごとに、いくらかのキックバックがあるか、会の中での地位が上がるかするのかもしれない(今思えば、痩身ビジネスの実態を根ほり葉ほり聞き出せる、いい機会だったかもしれない、とちょっと残念)。ただ少なくとも、ウチの経営状態を心配して友情から言ってくれているのではない、ということだけはわかった。
結局、同じやり取りが何度も繰り返された挙げ句、
T:で、Sさん、痩身やりませんか?
S:興味ないです(キッパリ)。
T:そうですか、わかりました。それじゃあ、まぁ頑張ってください。
S:ええ、Tさんも。
ということで、電話は切れた。
耳ツボ痩身をうたっている団体はいくつかあって、例によってお互いが「元祖はウチだ」「ウチこそ本物だ」と、主導権争いをやっているようだ。だが、いろいろ調べてみると、「耳ツボ痩身」とうたってはいるが、そのほとんどは、耳ツボはむしろオマケのようなもので、実態は食事指導と、そこでの栄養分の不足を補う名目のサプリメントの販売が中心らしい(その当たりの広告と実態の差は、「苦情の坩堝(るつぼ)」というサイトに、前述の日本痩身医学協会の例が出ているので、興味があったら見てみるといい。また、代田文彦門下の鍼灸師の先生のブログに「効果がない痩身耳針」という記事もあるので、こちらも参考までに)。
鍼灸学校では耳鍼(もちろん、単なる「痩せる耳鍼」ではなく、ちゃんとした治療としての耳鍼)の授業もあって、中国で耳鍼治療を開発した老中医の1番弟子だったという先生が教えてくれたが、その時「耳鍼でどれくらい痩せられるんですか?」と質問したところ、その先生の答は「耳鍼だけでは、痩せてもせいぜい2、3kg。ちゃんと食事療法をやって、初めて痩せられる」とのこと。だから、彼ら「耳ツボ痩身」のやっていることは間違いではないのだが、別にサプリを使わなければならない理由はどこにもないのである。
そもそも、本気で痩せたいと思うなら、こんな「痩身ビジネス」などに高いカネをつぎ込むより、同じカネで航空機のチケットを買って、パレスチナやレバノンの難民キャンプで1カ月くらいボランティアでもしてきた方が、はるかに確実に痩せられるのではないかと思う。命の保証はできないが、怪しげな「痩せ薬」を飲んで死ぬ人もいるくらいだから、命の保証がないのは同じこと。あとは、痩せようとすることが、得体の知れない連中を儲けさせるだけで終わるのか、多少でも世の中のためになれるようにするか、だ。
私は「たるんだ、<お肉>を引き締める食べ物はありますか?」と訊かれたことがあります。
「んなもの、あるワケないじゃないですか!運動してください!」と答えてしまいましたが。
栄養士免許を持っているので(ペッラペラのペーパーです)たまに食べ物のことを訊かれるのですが、自分の生活を振り返って自分の体に訊いて食べてくださいな、と思います。
「やせる食品」「やせる鍼」にかけるお金があるなら、その分ジムにでも通って指導を受ければいいのに…と思います。
ケルビーノさんの書かれていること、まったく同感です。どうも「痩せたい」と思っている人の多くは、”好きなものを好きなだけ食べて、寝て起きたら、ある日突然痩せていた”というふうになることを期待しているのかもしれません。だからこそ、「痩身ビジネス」がまだまだ拡大していく余地があるのだとも言えますが。
それにしても、痩せるためには自分の欲望をどう抑えるかが問題のはずなのに、「脂肪がつきにくい油」など、欲望はそのままに、食べ物まで改造してしまう、今の社会の姿に、私個人は何やら空恐ろしいものを感じます。