実家に帰って、古い段ボールを片っ端から開封し、引っ繰り返し探していたのは20年ほど前に買ったはずのピアソラの評伝と10年位前に買ったはずのピアソラに自伝の2冊の本だが、何故か何れも見付からない。それどころか今は特に用のない30年前や40年前の音楽雑誌や情報誌が大量に出てきて、懐かしさもあってそれらをながめ直しては徒に時を無駄にしてしまう始末。どこに消えたのだ、ピアソラの本は。しかもまとまってあるはずのユリイカや現代詩手帳が丸ごとみつからないのも気がかりだ。まさか母が捨てた?そう言えば常々「せっかく私が断捨離してるのに、要らんものは早よ、捨てなさい!」と私を詰るのはいつもの事。確かに音源と本を買う永い習慣を止める事ができない私は、CDや本を買い、それらがある程度、溜まっては順次、実家へピストン輸送している。それは狭いマンションに4人で住む私としては仕方のない事なのだが、逆にその事は死期を想定しながら少しでも身の回りの物を減らす事に努めている独居老人である母と真っ向対立するのだ。勝手に判断して箱ごと捨てた?いや、まさか、それはないやろ。もう一度、探しに行こう。
このようにどこかにあるはずのピアソラの本を探し回っていたのは、先日中古で買った「ラ・クンパルシータ」という作品のピアソラのディスコグラフィの中での位置付けについて情報を得たかったからである。1957年という古い録音で時代柄と言うべきストリングスのアレンジが当時の映画音楽全盛を想わせるシネミュージック然とする表面的な‘古さ’に惑わされる事なかれ。音楽性そのものの高位点が音質の悪さという偏狭な理由で否定的評価に変換される昨今の音楽鑑賞意識を覆すに余りある素晴らしさがある。今作は57年の録音だが、後のピアソラの傑作群に通じるメロディとリズムの変則的妙技とも言うべき重厚感の快楽の萌芽がここにあると見る。従って、このアルバムに関しピアソラが何を語り、専門筋にどう評されているか知りたかった。57年のアナログ作品を88年にCD化し、その後一度もリマスターされず廃盤になっているのも、おそらくはマスター音源がないからか。このCDももしかしたらレコードをそのまま元音源としてCD化している可能性がある。それは曲によってレコード針のパチパチ鳴りノイズ音がそのまま記録されてしまっている事からも明らかだ。初CDから30年弱も経過し、リマスターが出ない事でオリジナルLPはおろか再発CDまでもが、幻扱いとなっているのだ。案の定、ネットで検索しても何も情報がない。Amazonはおろかdiscogsでも見当たらない。
ピアソラ本の発見を諦めた私は<幻の名盤と言われ続けたピアソラの革新的名演がはじめて登場!!>と記されたCDの帯を眺めながら本作に挿入されたアルゼンチン音楽著作権協会 駐日代表だという的場博子という人による気の抜けたようなライナーノーツの文章を読むしかない羽目になっている。全く音源の内容をちゃんと紹介もしないばかりか自慢げにピアソラと映る2ショット写真を載せたりしている。
2017.11.12
このようにどこかにあるはずのピアソラの本を探し回っていたのは、先日中古で買った「ラ・クンパルシータ」という作品のピアソラのディスコグラフィの中での位置付けについて情報を得たかったからである。1957年という古い録音で時代柄と言うべきストリングスのアレンジが当時の映画音楽全盛を想わせるシネミュージック然とする表面的な‘古さ’に惑わされる事なかれ。音楽性そのものの高位点が音質の悪さという偏狭な理由で否定的評価に変換される昨今の音楽鑑賞意識を覆すに余りある素晴らしさがある。今作は57年の録音だが、後のピアソラの傑作群に通じるメロディとリズムの変則的妙技とも言うべき重厚感の快楽の萌芽がここにあると見る。従って、このアルバムに関しピアソラが何を語り、専門筋にどう評されているか知りたかった。57年のアナログ作品を88年にCD化し、その後一度もリマスターされず廃盤になっているのも、おそらくはマスター音源がないからか。このCDももしかしたらレコードをそのまま元音源としてCD化している可能性がある。それは曲によってレコード針のパチパチ鳴りノイズ音がそのまま記録されてしまっている事からも明らかだ。初CDから30年弱も経過し、リマスターが出ない事でオリジナルLPはおろか再発CDまでもが、幻扱いとなっているのだ。案の定、ネットで検索しても何も情報がない。Amazonはおろかdiscogsでも見当たらない。
ピアソラ本の発見を諦めた私は<幻の名盤と言われ続けたピアソラの革新的名演がはじめて登場!!>と記されたCDの帯を眺めながら本作に挿入されたアルゼンチン音楽著作権協会 駐日代表だという的場博子という人による気の抜けたようなライナーノーツの文章を読むしかない羽目になっている。全く音源の内容をちゃんと紹介もしないばかりか自慢げにピアソラと映る2ショット写真を載せたりしている。
2017.11.12