守り抜いて逃げて逃げて「裸の王様」になったからもう大丈夫かと思った矢先、手番は羽生先生に渡ったが、1分将棋の秒読みに追われ攻めの糸口が少しも見つからない。
無謀な攻めは逆に豊島竜王に切り札になる攻め駒を与えてしまいまさかの終了。この将棋をまさかの逆転負けだとか、トン死だなんて表現するのは人間の将棋をわかっていない人だと思う。
定石にない居玉の相掛かり戦型を後手番で終始攻めて勝ち切った豊島竜王を見事だという他ない。もの凄く力戦型の現代最先端の将棋勝負を見させてもらった。魂の震える凄い番勝負だった。
AIの評価値にだけ頼る人は、最終盤で豊島竜王が寄せきれない数値を見て羽生先生がその通り指せば逆転するだろう見ていた。リアルタイムでは私もそう思っていた。
しかし、AIの弾き出した評価値は3億通りの中の一通り、人間にははるか考えつかない長い手数の指し方であった。
それは、160手を超えた2日で16時間も闘った「裸の王様」にまず守りの鎧をつけさせて(もち駒で防御を鉄壁にして)から、詰めろをかけなくても番勝負を振り出しにするような攻防をもう一度再構築するやり方だった。
そんな人間離れした指し方を秒に読まれた狂気の中で誰が冷静に指し直せるのだろうか?
AIは所詮、人間離れした人間の発想を超えた機械なんだ。人間は上手く利用すればいい。AIの使い方、見方を間違えるととんでもない事になる。AIのできることと人間のできることをよく見定めて理解しないといけない。
昨日の番勝負は、長考の素晴らしさと激戦の苦しさとドキドキ、人間らしい最高の駆け引きと真っ向勝負が見られて、羽生先生の負けに落胆しながらも感激していた。
羽生先生、断固として先生を応援して見守らせていただきます。先生の感想戦での対応、取材に素直に応じる謙虚な姿にあらためて感服いたしました。