Shevaのブログ
サッカー、テニス、バレエ、オペラ、クラシック音楽 そのほか
 



 ハイランド・フリング。

※ネタバレしてます。これから見る方はご注意ください。

ブルノンヴィル版の作曲家:レーヴェンヨルドの音楽は叙情的で、可憐で美しい。
ドラマティックな部分もあるけど少ない。チャイコのようなドラマティックさはない。
悲劇的シーンでも美しい音楽なのだ。
叙情的で、まさにロマンチック・バレエの世界だ。

私はこれを聴きすぎて、すっかり好きになってしまったので、今回の音楽は、やっぱマシューだなあと思って初日は苦笑していた。

音楽が短いので、ぜったい音楽を足してくるだろうと思っていたが、解説書にもあるように、冒頭にはスコットランドのカントリーミュージックが流れる。
舞台はまるでノイマイヤーの「ニジンスキー」がそうだったように、客電が落ちる前から、もう既に幕が開いていて、始まっている。

クラシックでない音楽をクラシックに混ぜてくるのは私には少々、ん…?だった。Play Without Words でも使った手法、ジャズにまぜるポピュラーミュージック、ほどにはしっくりこない。

序曲の悲劇的な部分は、ゾンビであるシルフの登場に使われる。

またマシューの逆転構造が展開している。
古典の「ラ・シルフィード」ではシルフは森の浮遊する妖精であるが、この作品では、ズバリ、ゾンビである。Living Dead.死んだ人間たちの化け物、幽霊である。まあいってみれば「ジゼル」のウィリーね。

逆転構造といったのはこういうことだ。
シルフの踊る音楽は、古典版では魔法使いマッジの率いる森の悪霊、化け物、魑魅魍魎たちの音楽である。
マシューは「スワン・レイク」でザ・スワンの登場の音楽をロットバルトの登場の音楽を使った。マシューにとって、聖なるものと邪悪なものは表裏一体なのだ。切り離して語れるものではない。シルフたちは美しいロマンティックチュチュではなく、まるでレイプされて殺された後のような衣裳で現れる。
そしてシルフたちに羽根が生えているのは同じで、しかもその羽根がむしりとられるところまでいっしょ、しかももっとストレートな犯罪性をもったやり方で…。
ほんとマシューあんたは怖いやつ。ゾンビの見すぎだ。ヒッチコックの見すぎだ。スティーブン・キングの読みすぎだ。

クラシック音楽の鳴らし方も、古典版のようなロマンティックな部分を意図的に排している様だ。
ジャーーーーン!!とすごい大音響で鳴らす。びくっ!
これはホラー作品だったのね~
ぜんぜんロマンテイックな「愛と幻想」の真逆じゃん。「恐怖と阿鼻叫喚の」シルフィードじゃ!
お子様見に行って大丈夫かな?

さて、序曲の軽快テンポアップ部分に入ると、トイレに乱入してくる酔っ払った友人たち。

序曲が終わると暗転、セットが反転しエフィーの?部屋になる。
酔いつぶれている男たち。
うるさい一晩じゅうついていたテレビを消す友人。この曲はパンフによると「ブリガドーン」だそうです。ここもクラシックでない音楽の使用シーン。

一人になったジェームズの元に現れる、シルフ。
このシルフが古典版では、可憐ではかなげでひたむき、快活で無邪気。マシュー版では悪戯好きで嫉妬深く、やきもち焼きでおきゃんで、やっぱ古典版とキャラだいぶかぶってる~

ジェームズに新聞を持たせて読ませて、だんなさま、新聞どうぞ、私はアイロン掛けよ!って普通の主婦の甘い結婚生活のおままごとをしてみて、急に「ばっかばかしい~ やってられっかよ!!」とキレて、いろいろ破壊しまくる。
まるでグレムリンか、リロ&スティッチか。
このへんがすごい好き~
しかも同じようにジェームズにも破壊を強制する。
当然帰ってきたエフィーはびっくりし、怒り、仲間みんなでおかたづけをさせられる。

古典版ではママが出てきて、さあ、婚約よ、指輪の交換しましょうね、おめでとう! 一方のガーンは横恋慕
マシュー版では、結婚生活とは、女というものは(こんなにうざい)とジェームズに味あわせる。
ガーンはスマイル(ピース)のTシャツでだっさ~い!とうざがられている。

家をめちゃくちゃにしたのは、シルフじゃなくてやっぱり、結婚生活への暗い思いに耐え切れないジェームズの行為だったのだろう。きっと。
スワンレイクの王子がスワンの幻影を見るように。

ジェームズは自分に惚れているマッジの好意を利用して、好き放題ドラッグを仕入れている。報酬はマッジへの熱いキス!
マッジもいいかげん嫌気がさしている。次第に、「もうあんたのキスなんかいらないわ!」となる。

古典版のジェームズは、傲慢で年寄りを邪険に扱い、自分に不幸な予言をされると激こうして、足の悪いマッジを引きずり回し、殴ろうとする。
それを押しとどめるエフィー。
ガーンは「まあ一杯」とマッジに酒を飲ます。いい気分になったマッジはガーンはエフィーと結婚する、ジェームズは死ぬ、と予言する。
単純馬鹿なガーンは喜ぶ。
マッジはその不吉な予言を実行するため行動を起こす。まさに有言実行。

さて、マシュー版では?

その前に、このように、ジェームズは傲慢なアロガントな自分本位の人間でなくてはいけない。エフィーは俺のもの、シルフも俺のもの。俺のものは俺のもの。お前のものも俺のもの。しかしケンプのジェームズは違う。優しすぎる。ジェームズ・リースも優しすぎる。(見てないけど。ごめん。)多分アダム・ガルブレイスが一番キャラは近いんじゃないかな~

ということで次いつ行こうかな~

じゃなくて、ジェームズがヤクに溺れざるを得ない必然性もわからんかった。デンマーク王立バレエの「シルフィード」はジェームズがすごい、傲慢なのだよ。こうでなくてはいけんのよ。

さて、マッジのトランプ占い。こっくりさんみたいなもんで、みんなで手をつないでトランス状態。笑える~ 中学生の頃やりませんでしたか?
ここ好き~ マッジの表情がいいです。
マッジは単純に意地悪をしてみたかった。自分の予言がほんとになるなんて思ってない。ただ、いけず男と幸せバカのエフィーに意地悪したかっただけ。でも、いったん物事を口に出すとそうなってしまうものだ。単純バカなガーンは大喜び。

いよいよ結婚式の日。
みんなおめかししてやってくる。一同列をなして行進。どこへ行くのかと思ったら、教会へ! メンデルスゾーンの結婚行進曲が流れる。みんな袖に入っていて、舞台上には孤独なシルフ。
これ! マシュー・ワールドだよねえ。
幸せの絶頂と、その反対のものを平行させて見せていく。
「くるみ」でもありましたね。幸せなシュガーとくるみ、泣いているクララ。
踊り狂うスワンと泣き叫ぶ王子。

そして車椅子のおばあちゃんはママのママなのかな? 笑える~

結婚式のお祝いのダンス、群舞の部分は群舞、ソロダンスの部分も群舞~ おいおい。スワンレイクはもちっと原振付をいかしてたよん。

ガーンは秘密を発見する。なんだ? この○は。捕まえちゃえ。
この次のジェームズの行動が衝撃的だった。
私にとっては1幕のラストの方がすっげ~衝撃的だった。
そう!だったのか!
マシューすげえ~~
すごい~
悲劇を笑いで表現するマシュー。
1幕には250点をあげたいです。

十字架をきるガーン。うれしそうな顔で。

いやー、これはボーン版、スワンレイクの3幕の幕切れに相当する衝撃だった。
やっぱ天才やねー。

いやもちろんラストもうならせる演出ですよ!

2幕。

またさっさと舞台が開いて、休憩タイムから舞台が始まっている。
ここは2幕の?序曲とマッジたちの毒のスカーフ作りの場面が、シルフ(ゾンビ)の踊る音楽、になっている。やっぱりシルフたちはまがまがしいものなのだ。
シルフを追って、(魂が)ここにやってきたジェームズ。

ここは廃材置き場、ごみ置き場。捨てられた車のヘッドライトが不気味に光る。

ブルノンヴィル版、2幕のシルフたちのシーンは、美しいチェロのソロで女性のソリストが踊るところで始まる。そしてヴァイオリンのなんとも美しいメロディで踊る、シルフィード。

マシュー版では音楽がどうだったか、記憶にない。ごめんなさい。

メロディアスな可憐な叙情的な部分を排していた気がするのだが…。

上着をかけるとこかな?
上着が移動してびっくりするジェームズ。

ジェームズとシルフの出会い。
夕焼けのような背景で横に並んで美しく踊るシルフとジェームズ。ユニゾンのダンス。

ジェームズとシルフがいい感じになると、シルフたちがはあはあ興奮する。(爆~)

そして袖で一発やってきて(下品でごめんなさい)、(スワンレイク)、またカーセックス。(カー・マン)。それだけで爆~ カーセックスの間中、シルフたちは恍惚の踊り。

ジェームズがシルフの踊りの真似をして、踊るところも爆~
ウィルうまい!

しかしシルフ役を男にしても充分いけると思います。ストーリー的にも。メイクでわかんないし。ぜひ、シルフ男ヴァージョンが見たいなあ。

4人のビッグスワンじゃない、ビッグ・シルフのうちの一人でもいいです。
(みんなでかかった)

しかし幸せは一瞬。ジェームズは彼本来のわがままを抑えきれなくなる。
男は女を従わせるもの。やられちゃった女はおとなしく従うしかない。それでもさらに!要求はエスカレートしていく。ジェームズを束縛するエフィーのように、今度はジェームズが自由なシルフの自由を奪うことに躍起になりだす。なんて人間はわがままなのでしょう。

そして衝撃の結末へ!
これだけは語れんな~

古典版の話。
マシュー版とだいぶ違う。

シルフを独占したいジェームズ。マッジがひらひらさせている魔法のショール。
「これがほしいのかい?」
「そうだ」
「何だよ、その態度は。人に物を頼む時はひざまづいてお願いするもんだろ!」
「お願い…します。」
「さあ、これだ。これをこうやって巻くんだよシルフの腕に、ぐるぐるぐるとね。」

そして悲劇が。
古典版で、マッジにくってかかるジェームズ。

「どうしてこんなことをしたんだ!」
「それはお前が望んだことだろう?」
「お前はシルフィードを自分だけのものにしたかったんだろ? あたしはそのお手伝いをしてやったんだよ。言いがかりはやめてほしいね。」

ぐうの音も出ないジェームズ。

古典版では、シルフを結果的には自分が殺してしまったショックで気を失っているジェームズを、マッジが、たたき起こして、エフィーとガーンの結婚式の行列を見させる。そしてシルフの昇天まで見させる。なんて残酷なマッジ。でもマッジはそのショックで昏倒し、死んでしまったジェームズを見て絶叫して泣くんだよ。何それ。
やっぱ愛と憎しみは裏返し。

このシーンがマシュー版でないと思ったら、やっぱ最後におまけがあったね、というわけで。

ワザリング・ハイツ。
Heathcliff, it's me, Kathy, I've come home , I'm so co-o-o-o-o-old. Let me in your window ----

 

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