殺人の統計学的一考察

『ユニバーサル・カーブ』

世界で国籍や文化や民族が違っていても同じように、一番人を殺す危険な存在は若い男で、年齢別の殺人率をグラフに描くと、１０代後半から急増し２０歳代前半をピークに達する。
繁殖期の雄が同種で激しく争うのは動物では普通に見られる現象なのですが、われわれ人類も哺乳類の一種として同じ傾向が備わっているのでしょうか。
数の多い少ないはあっても、どこの国でも、どの文化でも、このグラフは同じような形になるので、ユニバーサル・カーブという名前がついた。
唯一の例外が、現代の日本社会。
１９５０年代あたりまで、日本の殺人率のグラフはきれいなユニバーサル・カーブを描いていた。
その後、殺人率の年令分布が変わりカーブは崩れていった。何が起こったのか？
総数として殺人が減った。
『戦時中』を除いて、日本の殺人率はほぼ同じ水準を維持してきたが、１９５０年代以降、殺人率は減り続けた。
これを年齢別に見てみると、均等に人を殺さなくなった訳ではない。
最大の変化は、若者の殺人が激減した。
２０代男の殺人率は、１９９４年には１９５５年の１／１３になった。１０代男でもやはり１／１０に激減した。
一方、５０～６０代男の殺人率は半減程度しか減らなかった。
最大の殺人者年齢層において殺人率が激減したことで、殺人率グラフのピークがなだらかになり、ユニバーサル・カーブからますます離れていった。
いまや最も人を殺すのは５０～６０代男である。
少年犯罪を過剰に報道する傾向があるが、その陰に隠れて、いつのまにか日本は『殺人中年おやじ』の国になっていた。
しかしなぜなのだろうか？
現在の５０～６０代は、かつて少年犯罪がピークであった時代に『少年』だった人々で、彼らは史上最悪の犯罪世代である。
『悪いやつが悪いことをするのは当然だ』という、犯罪者観に立つならば、事は簡単。
しかし殺人率自体は、最も人を殺す現在の５０～６０代についても、かつての１／２。
現代のオヤジは、かつてのオヤジほどには殺していない。
ただ、現代の若造がかつての若造よりもはるかに殺さなくなったので、オヤジの殺人比率が高くなった。
これでは世に言うところの団塊世代凶悪説では説明できない。
ユニバーサル・カーブがくずれた主因は中高年男性の殺人率が、顕著には下がらなかったから。
ほとんどの人が義務教育で教育を終えていた世代と、９割が高校へ進学する世代のはざまの世代集団(団塊の世代）で、殺人率の低下が小さい。
中年オヤジの殺人率より若者の殺人率が低いという世界で唯一の国日本。
しかし不思議なことに、近年マスコミでは『少年犯罪の凶悪化』が喧伝されている。
識者が少年犯罪の凶悪化を憂う。
『少年犯罪は凶悪化している』は今や世間では常識になっている。

私はあえて『中高年犯罪が凶悪化している』と叫びたい。！
凶悪犯罪を次々と起こしているのはどの世代か。？日本で恐れるべきは少年や若者か、それとも中高年か。？
『中高年の犯罪の凶悪化』は今や止まることを知らない勢いで日本中に広がっているのだ。
神戸テレホンクラブ放火殺人の主犯の元経営者は６６歳。
群馬県安中市の放火殺人保険金詐欺事件で逮捕された容疑者は５６歳
坂出市幼い孫2人とともに殺害されたその祖母。凶悪殺人事件容疑者は６１歳。
長崎市市長銃撃事件の犯人指定暴力団山口組系の組幹部だった城尾哲弥被告５９歳
佐賀県武雄市の病院で入院患者が間違って射殺された事件のヒットマンは指定暴力団・道仁会系組員、今田文雄容疑者６１歳
『若いもんは、なにをしとる』何で六十もすぎて、昔なら鉄砲玉なんか普通はやりませんよ。？
６３歳の元防衛事務次官が収賄の容疑で逮捕される。同じく逮捕された贈賄側元専務は６９歳。

あなおそろしや。凶暴な上に金にも汚い中高年世代。
当然の注意を受けて逆切れし、車掌に暴行するのも中高年。