『PRTは民心把握の軍事活動である』 ペシャワール会事務局長 福元満治
先日、日本のPRT(地域復興支援策)参加についてNHKで報道された。
このプロジェクトはアフガニスタンの北部で、リトアニア軍と協力して、日本の民間人(外務省関係者)が民政支援(小学校建設のための調査)を行うというものである。
報道のトーンは、PRT参加は国際社会における日本の積極的な復興支援策として評価される、というものであった。
日本が軍民一体のPRTに参加するに至る経過には伏線がある。
それは安倍首相の時代に遡るが、首相がNATO本部に出向いた時に、PRTへの自衛隊参加を約束したことがあった。
ところが憲法の制約上自衛隊はアフガニスタンに出せなかった。
今回のことは、外務省職員を出すことで、その約束に対する対面を繕ったということだと推測される。
本音はリトアニア軍ではなく自衛隊と外務省職員をセットで出したかったということである。
ところが、PRT(Province Reconstruction Team地域復興チーム)といっても、どれほどの人がそれをご存知だろうか。
日本の評論家は、治安の不安定な地域(戦闘地域は除く)、特に軍事的な脅威にさらされる医療や教育、農業支援事業等が困難な地域において、軍の安全確保の支援を受けながら民生支援を行う軍民一体の復興事業をPRTと定義している。
どちらかというと民政支援が主体とみる。
しかし実態としては、民生支援が主体ではなくあくまでも軍事作戦をスムーズに遂行するための医療活動や教育支援である。
それは外国軍に敵意を持つ民間人対策であり、民心把握、情報確保のための手段である。
主体はあくまでも軍事活動である。
もともとの発案者は米軍だが、NATO軍がそれを引き継いだのである。
本来ならば、リトアニア軍との共同作戦を日本の新たな国際貢献などといわずとも、日本政府はこれまでアフガニスタンに対して1800億円以上の民政支援を行っているはずである。
そちらをもっと積極的に広報すれば、PRTへの参加問題など出てくるはずがない。
つまり深読みすれば今回の外務省のPRT参加は、自衛隊派兵への布石と見たほうがよい。
さらに言うと、米軍やNATO軍との軍民一体のプロジェクトが横行すれば、私たちのようなNGOの活動もそれらと同根とみなされ、反政府勢力のターゲットになる可能性が出てくる。
その上、PRTには利権が絡むのである。金欲しさや現地の有力者や業者が必要もないプロジェクトを外国軍にもちかけ、現地の農民たちに災いをもたらしている事例をいくつも経験している。
人道支援や民政支援という言葉で粉飾されたPRTの本質を、見誤ってはならないということである。 (2009、7、8)
『ペシャワール会』
ペシャワール会は、パキスタンでの医療活動に取り組んでいた医師の中村哲を支援するために1983年に結成された非政府組織。
現在はパキスタン北西辺境州および国境を接するアフガニスタン北東部で活動、自給自足が可能な農村の回復を目指し、農業事業にも取り組み、総合的農村復興事業『緑の大地計画』が実施。
2008年8月26日、ジャラーラーバード近郊でスタッフの伊藤和也さん拉致殺害事件が起こっている。
緊迫するアフガン国内情勢の急激な悪化でペシャワール会日本人スタッフ全員の帰国が既に決定されていたが、退避が間一髪間に合わなかった。
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「急激な治安悪化」 ペシャワール会中村哲医師(2008年08月29日 | 海外)
先日、日本のPRT(地域復興支援策)参加についてNHKで報道された。
このプロジェクトはアフガニスタンの北部で、リトアニア軍と協力して、日本の民間人(外務省関係者)が民政支援(小学校建設のための調査)を行うというものである。
報道のトーンは、PRT参加は国際社会における日本の積極的な復興支援策として評価される、というものであった。
日本が軍民一体のPRTに参加するに至る経過には伏線がある。
それは安倍首相の時代に遡るが、首相がNATO本部に出向いた時に、PRTへの自衛隊参加を約束したことがあった。
ところが憲法の制約上自衛隊はアフガニスタンに出せなかった。
今回のことは、外務省職員を出すことで、その約束に対する対面を繕ったということだと推測される。
本音はリトアニア軍ではなく自衛隊と外務省職員をセットで出したかったということである。
ところが、PRT(Province Reconstruction Team地域復興チーム)といっても、どれほどの人がそれをご存知だろうか。
日本の評論家は、治安の不安定な地域(戦闘地域は除く)、特に軍事的な脅威にさらされる医療や教育、農業支援事業等が困難な地域において、軍の安全確保の支援を受けながら民生支援を行う軍民一体の復興事業をPRTと定義している。
どちらかというと民政支援が主体とみる。
しかし実態としては、民生支援が主体ではなくあくまでも軍事作戦をスムーズに遂行するための医療活動や教育支援である。
それは外国軍に敵意を持つ民間人対策であり、民心把握、情報確保のための手段である。
主体はあくまでも軍事活動である。
もともとの発案者は米軍だが、NATO軍がそれを引き継いだのである。
本来ならば、リトアニア軍との共同作戦を日本の新たな国際貢献などといわずとも、日本政府はこれまでアフガニスタンに対して1800億円以上の民政支援を行っているはずである。
そちらをもっと積極的に広報すれば、PRTへの参加問題など出てくるはずがない。
つまり深読みすれば今回の外務省のPRT参加は、自衛隊派兵への布石と見たほうがよい。
さらに言うと、米軍やNATO軍との軍民一体のプロジェクトが横行すれば、私たちのようなNGOの活動もそれらと同根とみなされ、反政府勢力のターゲットになる可能性が出てくる。
その上、PRTには利権が絡むのである。金欲しさや現地の有力者や業者が必要もないプロジェクトを外国軍にもちかけ、現地の農民たちに災いをもたらしている事例をいくつも経験している。
人道支援や民政支援という言葉で粉飾されたPRTの本質を、見誤ってはならないということである。 (2009、7、8)
『ペシャワール会』
ペシャワール会は、パキスタンでの医療活動に取り組んでいた医師の中村哲を支援するために1983年に結成された非政府組織。
現在はパキスタン北西辺境州および国境を接するアフガニスタン北東部で活動、自給自足が可能な農村の回復を目指し、農業事業にも取り組み、総合的農村復興事業『緑の大地計画』が実施。
2008年8月26日、ジャラーラーバード近郊でスタッフの伊藤和也さん拉致殺害事件が起こっている。
緊迫するアフガン国内情勢の急激な悪化でペシャワール会日本人スタッフ全員の帰国が既に決定されていたが、退避が間一髪間に合わなかった。
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「急激な治安悪化」 ペシャワール会中村哲医師(2008年08月29日 | 海外)
人命が惜しいのではなく、紛争当事者の一方の肩をもつことになるからです。紛争解決や撤兵のため必要なら外務省役人や政治家は命を賭して現地に出張すべきだと思いますがね。
元々は安倍晋三がNATO軍になんとか自衛隊の参加、協力が出来ないかと考えた結果が麻生太郎政権の日本のPRT(地域復興支援策)参加で、外務省ホームページを読むと今年1月に派遣方針が決定され5月末に4人が派遣されています。
ところが安倍晋三首相がNATO本部を訪ねた当時よりアフガンの治安は極度に悪化する。
当時と今では、治安情勢が全く違うらしいのです。
特に韓国人のキリスト教関係の援助団体が拉致殺害された07年ごろからは国連もPKO(国際連合平和維持活動)を行おうとしても、そもそも維持すべき『平和』がアフガンには無いとしています。
特に地元住民からの信頼が篤かったペシャワール会の活動家の伊藤さんまでが殺害される08年以後は特に危険で、今回の軍と共同するPRTによる復興支援などは正気の沙汰ではない。
アフガニスタンでは外国軍と戦うことを肯定的(良いこと)と見る動きが強く、ペシャワール会の中村医師によると、30年近く外国の干渉により戦禍に巻き込まれてきたアフガニスタンでは外国人に対する憎しみは強くアフガンの現在のタリバンは日本の150年前の『攘夷運動のようなもの』らしい。
昔の政権を握っていた旧タリバンは今ではパキスタン北部辺境州に逼塞していて、現在アメリカを悩ましている『新タリバン』は旧タリバンとは直接的な関係はなくアメリカ軍の空爆の被害者の遺族たちの『復讐』なので、タリバン兵を一人殺害すると家族が全てタリバンになる。
これではアメリカやNATO軍は勝てない。
『テロリストはみんな殺せ』的なアメリカ流のやり方では根本的に間違っているのです。
日本の『国際貢献』ですが、日本は『何が出来るか』ではなく、
その正反対の日本は『何をしてはいけないか』が一番重要なのでしょう。
そもそもアフガン人に喜ばれる日本の自衛隊(外国軍)に出来る国際貢献などはアフガニスタンには、端から無いことを銘記するべきです。
中村医師も『何をしてはいけないかを考えるべきだ』と断言しています。
極度に閉鎖的なアフガンの『タリバン』に対する見方が根本的に間違っているのです。
昔からアフガンは2度も世界帝国であった英国を撃退しているし、隣接する強力な陸軍を持っていた超大国ソ連も敗退させソ連はそれで崩壊に至った。
アフガン人が大国を相手に勝ち続けるのは、彼らが外国勢力とは馴染まない徹底した排他性と粘り強い精神力、復讐心を持ち続けていて一族の誰かが外国軍によって無念の非業の死を遂げたら決して諦めず一族を挙げて自分の命を捨ててでも『恨み』を晴らすのが最高の美学(名誉)でもあり道徳でもあるパシュトーン族の『掟』(伝統)とイスラムとが人々の生活基盤になっているからかも知れない。
そもそも『善意』からの『支援』だから許される(感謝される)と考える日本人的な考えは甘すぎる。
タリバーンにしろ武装集団にしろ各々信じるところに拠って行動していて、その価値観がまったく異なる集団に向かって『地域住民のための支援だ』などという善意は通じない。
『民生支援』は喜ばれるどころか、受益できない人たちからは大いに恨まれていると認識すべきだろう。
『支援活動』では利益を受けることの出来た10人が(その恩恵をもたらした神へ)感謝し、後の10人は利益をもたらさなかった支援団体を恨むと考えるべきだ。
特に、今の日本が行っているアフガニスタンでの外国軍(NATO軍)との共同作業による民生復興などは百害があって一利も無い。
上から目線の愚かしい行為の見本で、被害者の出ていない今の内に、一日も早い撤退が望まれます。