医大生・たきいです。

医大生的独言。

「疲れた日は頑張って生きた日 うつ姫のつぶやき日記」を読んで

2016-05-20 23:59:59 | 読書感想文

また一週間を乗り越えましたが、レポートという宿題を週末に残してしまったのでありました。勝負は土曜の午前中。医大生・たきいです。



さて、最近出版のペースが速すぎてヤバいと噂のはあちゅうさん。ファン過ぎて新作は抜かりなくチェックしてしまいます。昨日発売となった最新作が、こちら。

疲れた日は頑張って生きた日 うつ姫のつぶやき日記
はあちゅう
マガジンハウス


「つぶやき日記」というだけあって、ネタ元ははあちゅうさんのTwitterの投稿から。つぶやきは全部で365個。カウントダウンされていくのが読んでいて心地よい。合間には短編エッセイもあります。

はあちゅうさんのガチファン過ぎてTwitterも抜かりなくチェックしているので目新しいネタこそありませんでしたが(笑)、この本は紙媒体だからこその価値があると思う。一気読みするのもいいかもしれないけれど、「頑張って生きた日」の夜にウイスキーかワインでも片手に眺めていたい本。「読む」という動詞より「眺める」という動詞がこの本には合いそう。ひとつひとつのつぶやきを味わうには、紙の本でなくてはなりません。

ちなみにぼくが本書で好きな話が「会いたい人すごろく」。45頁。もう1マスすごろくを進めたいと願いながら、はあちゅうさんにまたエゴサされるのを楽しみに本作でもこうして感想ブログを書いてしまうのです。






(はあちゅうさんが書く恋愛的20代振り返りフレーズを読むと妙に焦ってくる人(笑))

【キミスイ】「君の膵臓をたべたい」ヒロインがもつ膵疾患の鑑別を考えてみた

2016-05-16 22:07:55 | 読書感想文

筋トレ後の風呂ほど気持ちいいことはありません。医大生・たきいです。





君の膵臓をたべたい
住野 よる
双葉社


話題作の「君の膵臓をたべたい」。ちょっと前から泣けると話題の作品。しかし医療関係者的にはおやおや、と思うところは多々あって、それを指摘する声も。

この作家さんのデビュー作『君の膵臓をたべたい』(キミスイ、と略すようですね)は、実のところ私にはあまりピンと来ませんでした。いわゆる「難病もの」だっただけに、医学生として「突っ込みどころ」を色々見つけてしまい(失礼、)十分に作品に入り込めなかった覚えがあります。
【本】また、同じ夢を見ていた(住野よる) より引用―トリおんな(22)の医学生日記

一応医学生のわたくしも「突っ込みどころ」にはいくつか気が付きましたが、そんなことは気にせず
号泣しました。

GW期間の混んでいる新幹線の中で。今思うと完全にヤバい人だった。文系人間の本領を発揮しました。まだ先がある女の子の死って無条件に泣きます。石田衣良の「美丘」とか。俺って医者に向いてないんじゃないか、とかいろいろ思うところはありますがそのへんはさておき、心が洗われる作品ですのでまだ読んでない方は是非お手に取ってみてくださいませ。そしてまだ読んでいない方はこの先読まない方がいいかもしれません。

「また、同じ夢を見ていた」も気になりますね。今度読んでみよー。本著の作者の住野よるさん、今気になる作家です。

また、同じ夢を見ていた
住野よる
双葉社








さてさて、キミスイの膵疾患って一体何?というのは医学生であろうとなかろうと気になることかと思います。因みにわたくしもド文系の母に「これって何ていう病気なの?」と聞かれ「分からん」と答えました。笑

文学作品への冒瀆のような気もするけれど、ここはひとつ推理を始めてみようかと。

まず最初の「突っ込みどころ」としては、膵疾患ってそんなに若い人がなるの?っていうことです。例えば、日本膵臓学会が最近出してた論文をチラ見してみると、膵臓癌の若い患者群は40歳未満(※)に設定されていました。しかも3万超えの症例数のうち、40歳未満は1.5%に過ぎません。女子高生の膵臓癌の症例とか超激レアに違いありません。超激レアだからこそ小説になる、っていうのはあるかもしれないけど。
※Clinicopathological Characteristics of Young Patients With Pancreatic Cancer: An Analysis of Data From Pancreatic Cancer Registry of Japan Pancreas Society.Pancreas. 2016 May 11.


さておきまずは患者である「君の膵臓をたべたい」のヒロインを簡単にプレゼンテーション。

17歳女性
【主訴】「私は、あと数年で死んじゃう。(p.18)」身体的症状については特に記載なし。
【現病歴】
 13~15歳時にある膵疾患を指摘され、「余命数年」とかかりつけ医より説明を受け通院中である。「ちょっと前まで判明した時にはほとんどの人がすぐ死んじゃう病気の王様だった。」と本人は自身の抱える疾患について認識しており、現在は病について受け容れられている様子である。症状の訴えは特になく、定期通院で治療継続でフォローされている。ただし治療の内容に関しては不明。
【既往歴】
 糖尿病合併?
「リュックの中には、数本の注射器と、見たこともない量の錠剤、使用法の分からない検査機器」(p.106)
「数本の注射器」とは、インスリン自己注射のことか。
「見たこともない量の錠剤」とは、旅行のために大目に持っていただけか。
「使用法の分からない検査機器」は筆者には見当つかずだが、簡易血糖測定キット? 確かにケースに入っていると見た目はゴツいように見えるかも。
【生活歴】家族4人暮らし。
【家族歴】小説本文上特に記載なし

普通の医者はまずは「主訴」から疾患を推定していくけれど、今回は「臓器」から疾患を想起しなければいけないところが難しいところか。腹部CTの画像とか見たいけどあるわけない(笑)。CTの読影しないと先に進めない小説とか嫌ですしね。本文上は症状の言及がほとんどないけれど、ヒロインは自身の体調について強がっているだけという可能性はある。物語上、本疾患に対する対症療法は進歩したのだそうで、治療介入により症状がほとんど抑えられているとのこと。正直ここがマジかよって感じではあるし、治療の副作用も特にないっていうのも、使っている薬をさらに想定しづらくなるわけで絞り込みにくい。

さて、既に答えが出ない予感がプンプンしておりますが闘って参ります。鑑別疾患しらみつぶしには、ご存知VINDICATE+P。もしやPsychogenic?と逃げたくなってきましたがそれでは記事になりません。経過が長いことから、血管性病変、感染症等は考えにくく、
  ・腫瘍性
  ・慢性炎症
  ・内分泌疾患
あたりを主に考えてみましょうか。糖尿病の合併は怪しいとわたくしは読んでいるのだけれど、いずれかのグループに属する膵疾患により2次性糖尿病を続発したしても大きくは矛盾しなさそう。

<鑑別疾患>
#1 膵癌
合う点>極めて予後不良なこと。教科書的には早期診断が難しいことがその原因とされていて、前述の論文(※)でも40歳以下の群では見つかったときには既に進行癌のケースがさらに多いとのこと。
合わない点>原則的に高齢者の疾患。初期には症状が出ないことも多いだろうけれど、診断から数年経って何も自覚症状がないなんていうことはあるか。腹痛、背部痛、黄疸とかはあってもよさそうなもの。それに化学療法開始していて外来受診だけなんてことある?

#2 膵嚢胞性疾患
予後不良なものとしては、主膵管型膵管内乳頭粘液性腫瘍、粘液性嚢胞腫瘍あたり。
合う点>画像所見が我々の手元にないから捨てきれないところ(笑)。
合わない点>IPMNの好発は高齢男性、MCNの好発は中年女性。

#3 慢性膵炎
合う点>膵疾患であるところ(笑)
合わない点>アルコールも胆石も関係なさそう。女性だし特発性だと良心的に解釈しても、この年齢と経過で非代償期まで進行しているとは考えづらい。

#4 自己免疫性膵炎
合う点>ステロイドによる治療がうまくいっていて症状が抑えられているとすれば、元気そうにしているヒロイン像とは矛盾しない。苦しいか。笑
合わない点>治療開始しているならばすぐに死ぬ病気ではない。

……他にもあるのかもしれないけど、よくある疾患の典型例では決してないことは明らか。そもそもそんな病気あるの?という疑問が拭えません。先天性の疾患になんかあったりするのかね。身体疾患がはっきりしなければ精神科疾患を考え始める、までありえる。



【結論】キミスイの疾患、ぼくには分かりません
ギブアップです。どなたかご教示お願いいたします。






(本当はこんな暇なブログ書いていないでレポート仕上げないといけない人(笑))

「とにかくウツなOLの、人生を変える1か月」を読んで

2016-05-01 23:24:56 | 読書感想文

GWで帰省中なわたくしですが、実家のパソコンが遅すぎてポンコツなのでやや大学に戻りたい気持ちに駆られています。早く買い換えてくれ。医大生・たきいです。





はあちゅうさんの新刊が昨日発売になったので例によってご紹介致します。

とにかくウツなOLの、人生を変える1か月
はあちゅう
KADOKAWA/角川書店


本ブログご愛読の皆さんはもうご存知でしょうが、わたくしの敬愛しているはあちゅうさんとは元祖カリスマ女子大生ブロガーで、最近では「ネット時代の作家」を目指すと公言しているアラサー女性期待の星でございます。

はあちゅうさんは、現代社会に生きる我々が明日を今日よりもいい1日に彩るにはどうするかというテーマを書かせたら超一流で、ネット好きな20代には私を含めて影響を受けている人も多いよう。近年精力的にご著書を出版されておりますが、アツい本は他にも。「半径5メートルの野望」はオススメです。

最新刊は、はあちゅうさん初の小説。小説を出したいと前から宣言していた目標が達成されたとのことで、流石と言わざるを得ません。夢を叶えるってカッコいい。

この本、小説という形式をとった自己啓発本ではないかと。

一番の目的は楽しく幸せに暮らすことよ。」(p.90)
奈緒さん、自分の変化を誰かに話したい気持ちがあるなら、ブログか何かを始めたら?」(p.154)

物語に散りばめられた言葉には、はあちゅうさんのイイタイコトが詰まっているように私は感じました。これがネット時代のモノの書き方なのかもしれません。

編集者が作家の才能をさらに引き出そうとするとき、前回作とは違った路線に進ませるのが定石だと聞いたことがあります。女心を書かせたら天下一品のはあちゅうさん。次は男を主人公にした小説も読んでみたいなとファンのひとりとして希望しております。

「とにかくウツなOLの、人生を変える1か月」
1時間くらいで読み切れるのでGWのお供に是非。個人的には、前から実践してるわそれ、みたいな内容もあったけれど、何となく日々を悶々と過ごしている方にはヒントになることも多いでしょう。はあちゅうさんはこんな風にセルフコントロールしているのかなあ、と妄想の広がる一冊でもありました。






(実家にいると睡眠欲が凄い人(笑))



「真夜中にシュークリーム」を読んで

2016-03-10 23:33:37 | 読書感想文

医学書のベストセラーに「病気がみえる」シリーズがあって、既刊は全部で10巻。メジャー科に加えて産科、婦人科、今後は小児科なんかも発刊されると本の「そで」の部分には書いてある。需要が低い医学書業界で1冊10,000円が常識という中で3,000円台という小売価格を誇るから、やはり売れているのであろう。浅学菲才の私は「病みえ」の持っていないシリーズも結構あって、本棚に並ぶ「病みえ」は10巻に満たない。医学生としてはヤバめな事態かもしれないが冊数だけは私の本棚で「病みえ」を上回ろうとしている作家がいる。今日はその新作のご紹介をば。医大生・たきいです。






真夜中にシュークリーム
はあちゅう
毎日新聞出版


勘のいい「医大生・たきいです。」の読者の皆様はお気づきでしょうけれど、はあちゅうさんの新作のご紹介。初のエッセイ。

帯の「自分に甘い夜」という気になるフレーズは、82頁の一節で、確かにこれはよかった。ヒット作「半径5メートルの野望」の作者と同じ人が書いたとは思えない人間的な一面で、ますますはあちゅうさんのファンになってしまいそう。他人に対しては真夜中のシュークリーム的思考、自分に対しては半径5メートル的思考でいくのが今風な生き方な気がする。

半径5メートルの野望
はあちゅう
講談社


エッセイのいいところは、作家さんの日常に入り込めるところだろう。万城目学のエッセイが好きだが、どうでもいい日常の機微がとてつもなく心地よい。「真夜中にシュークリーム」は彼氏さんとのいちゃいちゃの描写が多すぎるところがはあちゅう好き男子の私としては少し気にかかったけれど、これがはあちゅうさんの日常なのだからこれはこれでよい。


私、何者でもないこんな時間も大好きなんだよな
(p.113)


半径5メートルには書かれていなかった、ありのままのはあちゅうさんがここにはありました。

はあちゅうファンはこれだけでもこの本を買う価値がありますが、実はこの本、「あとがき」が一番の読みどころです。ネット時代に「作家」として生きる30歳女性の覚悟と決意表明が。はあちゅうさんの今後に今後とも目が離せません。エッセイ中に出てきた執筆中の小説が手元に届く日も楽しみにしております。







(後輩に暗記力の違いを見せつけられた人(笑))

「女子高生社長、経営を学ぶ」を読んで

2016-03-06 23:59:59 | 読書感想文

試験が終わって読書と酒の毎日です。といってもまだ春休みじゃないんですけどね(笑)。医大生・たきいです。



さて、本日ご紹介したいのがこの一冊。

女子高生社長、経営を学ぶ
椎木 里佳,椎木 隆太
ダイヤモンド社


今話題の書、女子高生社長椎木里佳ちゃんによる起業家のパパ・椎木隆太さんとの対談本です。この椎木里佳ちゃん。最近はTVにも出演されていて今注目の女性ですが、このパワフルな感じがいい。こういうアクティブな女性はタイプ。笑

起業のための細かいマニュアル本というより、生き方や考え方が綴られています。「感謝、謙虚、全力」が大事なんだよと父が娘に教える姿はなんだか素敵です。

途中からちょっと捻くれた本の読み方をしてしまったのですが、どうやったらこんなに芯の通った娘さんに成長するんだろうと、そっちの方に興味が湧きました(笑)。まだ自分、結婚の予定すらないですけどね。笑

親の言葉とか行動は、子どもにすごく影響を与えるっていうことは、ちゃんと理解しながらやっていかなきゃなというのは、毎日思ってる。」
(本書p.145より)


とのことで、パパの計算高さに痺れました。椎木隆太さんは「鷹の爪」の生みの親というやり手の起業家ですが、父親としても只者ではないようです。娘に尊敬されるような父親に自分もなりたい。時間の使い方の巧みさが節々から伝わってきて、むしろパパの発言から学ぶことも多かったかもしれません。笑





「ちょっとかわいい女の子」というのは目立ちやすい分批判も多いというのをネット界を少々齧っているわたくしは感じますが、アンチにもへこたれず今後とも頑張っていただきたいです。応援してます。

「ちょっとかわいい」って失礼すぎましたが、「2020年に結婚、出産、上場」宣言をしている里佳ちゃんの結婚相手に立候補したいくらいぼくのタイプなので許してください(笑)

彼女のTwitterによると、




ということですが、次回作も楽しみにしております。がんばれ里佳ちゃん!

春休みでお暇なみなさんは、「女子高生社長、経営を学ぶ」を是非!!






(ブログネタ消化しきれずにいるくらいリア充な人(笑))