
2018年4月に雑技と著作権に関する裁判の報道が出ました。
報道が出た時点で中国雑技に関する公式Wechatページでも記事やそれに対するコメントも出ていて
チェックしてましたが、雑誌「杂技与魔术」でもこうやって紹介されていたので
一人の雑技ファンとして紹介したいと思います。
ことの発端は2017年に河北省のある民間雑技団が特番で演じた《俏花旦》という演目名の空竹(ディアボロ)の演技を行ったことです。
この演技が中国雑技団の《俏花旦_集体空竹》という演目と90%以上酷似した演目だったことで
中国雑技団が著作権の侵害を訴えました。
中国雑技団のこの《俏花旦_集体空竹》はモンテカルロサーカスフェスティバルなど国内外のサーカスフェスティバルを制したことがある演目ですし
この民間雑技団がその演目をコピーしたことは間違いないと思います。
ただここで議論が起きているのが
・空竹という中国の伝統芸で著作権を認めてしまっていいのか
ということです。
言うまでもなく空竹はいろんな雑技団、雑技芸人はもちろんのこと世界中のサーカス芸人が演じている演目です。
それをある特定の雑技団の権利にしてしまったら、多くの雑技団や芸人がそれを演じられずに
露頭に迷いかねないということです。
それに対して言われているのは、中国雑技団は空竹という演目について言ってるのではなく
衣装、音楽、振り付け、演技構成が酷似しすぎていることを問題にしているという話です。
まあどっちも言わんとしていることは分かりません。
実際にこの裁判の最終的な判決がどうなったのかはまだ情報が入ってませんが、
訴えられている雑技団側は賠償金の支払いに応じてもいいし、謝罪してもいいけど
今後このような権利化をしないで欲しいと言ってます。
この雑誌は雑技協会の人が書かれていてて、権利化と法の遵守を訴えています。
雑技団や雑技芸人の方々はどう考えられるんでしょうかね。
一人の雑技ファンとして、ただ中国人ではない日本人という部外者として意見を言うと
《権利化するならその演技を演じ伝承する責任を全うしてほしい》
ということです。
もちろん今回話題になっている《俏花旦_集体空竹》という演目は中国雑技団の中でも
主力の演目の1つとしている複数のチームで演じられる体制が構築されています。
ただ権利化してこの演目を独占するならこの状態を必ず続けてほしいと思います。
実は雑技の演目の著作権を取得するというのはシルクドゥソレイユファンの間でも
馴染みのある演目にも関わっているものがあります。
それがドラリオンのバレエオンライトとダブルトラピスです。
これらは战旗杂技团(フラッグサーカス)によって権利化されており
他の雑技団は許可なく演じることができません。
では、今世界でバレエオンライトはどうなっていますか?
もしも战旗杂技团が演じているなら文句はないのですが、やってないんです。
もうこの演目は現在世界のどこに行っても見られない演目になってしまっているんです。
このバレエオンライトはその演技を完成させるまでにも長い歳月を要した演目です。
そういった沢山の人々の努力の結晶として世の中に生まれた演目が、独占され、
その権利を持つ雑技団が演じなくなった結果世の中から消えたわけです。
今はまだ当時の芸人が若いですし、その気になれば再構築できると思いますが
50年も経てば下手すりゃ本当に幻の演目です。
こんなことになるぐらいならいっそどこかがコピーしてくれればって思っちゃうんですよね。
なので権利化する以上は演技を次世代に残していく覚悟をきっちりもってほしいと
一人の雑技ファンとして願います。