日本のテレビを見れば、北朝鮮指導者の車に乗り込むところを取ろうとしている。
日本のジャーナリズムはその程度のものである。
2018.6.12 05:00更新
【米朝首脳会談】
織田邦男元空将「最悪のシナリオを語ろう」 北非核化は失敗、在韓米軍撤退→防衛ライン対馬海峡へ南下、「活米」重要に
https://www.sankei.com/politics/news/180612/plt1806120001-n1.html
史上初めての米朝首脳会談が12日に開催される。その結果は日本にどのような影響を与えるのか。元航空自衛隊空将の織田邦男氏に聞いた。(石鍋圭)
米朝首脳会談がまもなく始まるが、日本の安全保障にとっての最悪のシナリオを語ろう。現実的視点から最悪の事態を想定し、備えておくことは安全保障の基本だからだ。
結論からいうと、北朝鮮が核という「宝剣」を捨てることはない。金正恩朝鮮労働党委員長は、トランプ米大統領に対して非核化を約束するだろう。その見返りに、トランプ氏は段階的な制裁緩和に踏み切る。非核化を達成するまでには少なくとも2~3年を要するだろうが、その間、白旗を上げている相手にびた一文も制裁を和らげないという措置はとれない。
こうなると、会談後の時間は北朝鮮側に圧倒的に有利に作用する。北朝鮮が息を吹き返すには制裁緩和が大前提となるからだ。一方、非核化は失敗に終わるだろう。「完全かつ検証可能」というが、そもそも検証など不可能だからだ。
考えてもみてほしい。米国防情報局(DIA)は北朝鮮の保有する核弾頭を最大60発と報告している。しかし、ほかの有力な機関やシンクタンクでは保有核弾頭を約20発とするなど分析はばらばらだ。おそらく米国のインテリジェンスでも正確な数は把握し切れていないのだろう。
北朝鮮にとってこれは大きなチャンスだ。大規模な査察が入るとはいえ、検証は北朝鮮の申告に基づいて行わざるを得ない。仮に30発を20発と申告して廃棄すれば、10発は手元に残る。核能力は1発分でもあれば十分。インドやパキスタンのような立場を手に入れたい金氏は、いかにトランプ氏を出し抜くかの算段を立てているはずだ。
もう一つの焦点は2万8千人の在韓米軍の扱いだが、トランプ氏が撤退させる可能性は十分ある。もともと在韓米軍は北朝鮮の南進に備えて張り付けた「トリップワイヤ」の意味合いが大きい。今や北朝鮮には現代戦に耐え得る戦闘機や戦車はなく、南進の心配はない。トランプ氏が非核化の約束と引き換えに、コストの大きい在韓米軍の撤退を選択することは想定しておくべきだ。
最も恩恵を受けるのは中国だ。韓国に配備された米軍の高高度防衛ミサイルシステム「THAAD」どころか、在韓米軍そのものが消える。朝鮮半島への影響力は中長期的に揺るぎないものになるだろう。さらに南北の平和協定が成立すれば、その先には親中色の強い連邦国家の誕生さえ現実味を帯びる。米国との「太平洋分割」を目指す中国にとって、米朝首脳会談は重要なステップになる。
翻って日本は目と鼻の先に親中反日の連邦国家を抱えることになる。しかも核能力付きだ。国防上の脅威は格段に上がり、従来の安全保障戦略を前提から再考しなければならなくなる。
具体的には、防衛線が現在の38度線から対馬海峡まで南下する。これは敵の脅威圏が西日本全域にまで拡大することを意味する。韓国空軍はF15ストライクイーグルなど強力な戦闘機を備える。現在は力のベクトルは北を向いているが、180度反転すれば、その対地攻撃能力は日本にとって侮りがたい。専守防衛の縛りの中で空自が制空権を維持し続けるのは至難だ。中国による南西諸島への進出にも引き続き備えなければならない。防衛力のあり方を抜本的に見直す必要がある。
まず隣接する核保有国との向き合い方を整理すべきだ。日本にはアレルギーがあるが、核抑止力をどう捉えるか、非核三原則を維持するのかなどを国民レベルで議論すべき局面に入っている。戦闘機部隊を柔軟に振り分ける運用も考えてはどうか。西日本全域が敵の脅威圏内に入ることを踏まえれば、制空権維持のための「虎の子」を特定の基地に固定するのは得策ではない。日米同盟は重要だが、追従ではなく米国の関与を積極的に引き出す「活米」の視点がより重要になる。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます