「日本を守る国民会議」の発起人リストがあるとの情報を書いた、1982年発行の『朝日新聞社会部 「政治」の風景』という本があった。
下が、その本をスキャンした画像。「日本を守る国民会議」の主な発起人として挙げられている福田信之と松下正寿が曰く付きである。


福田信之
筑波大学の学長だった福田信之は極端な反共思想の持ち主で、統一教会の関連団体でも多くの役職を務めていた。以下が統一教会の関連組織で福田が就いていた役職。幹部信者でもこれだけ熟す者はそうはいない。
- 世界平和教授アカデミー 企画委員長
- 日本学際会議 会長
- 国際科学振興財団 副会長
- 21世紀ビジョンの会 代表世話人
- 新しい文明を語る会 代表世話人
- ナショナルゴール研究プロジェクト 委員長
- CAUSA(カウサ〔アメリカ社会統一協会連合〕) 講師
- 日韓トンネル研究会 顧問
世界平和教授アカデミーで事務局長を務めた統一教会員の大脇準一郎氏は自身のHPで、世界平和教授アカデミー、日本学際会議、国際教育研究所、二十一世紀ビジョンの会、新しい文明を語る会、ナショナルゴール研究プロジェクト、グローバルゴール研究プロジェクト等を福田に導かれて発足させたと明かしている。
筑波大の学長だった当時、福田は原理運動に協力的な教員を積極的に集め、学内ではこれが「原理人事」と呼ばれていた。福田の関与は不明だが文鮮明の息子の文聖進も筑波大の研究員になっている。
福田には日本統一教会(統一教会日本支部)初代会長の久保木修己と親しかったという逸話もある。久保木を知らなくても『美しい国 日本の使命 – 久保木修己遺稿集』と聞けばピンとくるはず。この久保木こそ日本人初の合同結婚式参加者であり、日本統一教会の最高幹部だった人。下は久保木と福田が写った珍しい写真。
手前右の三角眉毛が福田で左にいるグレーのスーツが久保木
これは福田の著書等のタイトル。文鮮明は言うまでもなく統一教会の開祖。共著者の小山田秀夫は日本統一教会第9代会長や世界平和連合会長などを歴任した古参信者。福田はこれでも教団との関係を隠したがったのだという。
他にも、文鮮明の脱税裁判では「この判決は歴史に汚点を残す」と堂々と擁護してみせたり、世界言論人会議やICUS(国際科学統一会議)に出席するなど福田と教団の接点を挙げるとキリがない。産経新聞に載った有名な合同結婚式の賛同広告にも福田の名前はある。
松下正寿
元立教大学総長で参議院議員も務めた松下正寿も福田に負けず劣らず統一教会との親密さは尋常でなかった。以下が松下が教団の関連団体で務めていた役職一覧。こちらは横着して統一教会情報ではお馴染みの「超人類ネット」を参考にした。
- 世界平和教授アカデミー 初代会長
- 世界日報 論説委員
- 日本超教派キリスト教協会 会長
- 国際ハイウェイプロジェクト・日韓トンネル研究会 名誉会長
- 『文鮮明 人と思想』 著
- 『文鮮明と統一教会』 翻訳監修
- 『文鮮明と統一教会 その人と運動をさぐる』 監修
- 文鮮明の無実を訴えるデモ行進に参加
- 統一教会本部で松下の昇華追悼式(葬儀)が行われた
松下は自著『文鮮明 人と思想』の中で、衆議院選挙への出馬を迷った際に文鮮明に会い助言を求めたエピソードなどを述懐している。
下の写真は世界平和教授アカデミーが主催した「アジアの明日を開く国際会議」の様子。演台に立つ松下の上方に掛けられた横断幕には「サンケイ新聞社」の文字。なお、産経新聞は一時期、題号をカタカナ表記していた。
「アジアの明日を開く」国際会議
福田と松下に関しては統一教会との関係を国会でも何度か追求されており、その様子は議事録で読むことができる。下はその引用。そこでは児玉誉士夫との繋がりも指摘されていたりする。
世助言論指導者会議は、昭和五二年十月、文鮮明師の指示によって生まれ、第一回は東京で、世界日報社主催のもとに開催された。その後毎年定例となり、昨年の第六回会議は昭和五八年九月五日から九月十日まで、南米のコロンビア・カルタヘナ市で開催された。この会議は、学界工作である「科学の統一に関する国際会議」及び、「世界平和教授アカデミー」(会長・松下正寿氏)のマスコミ版である。その目的は、学界における松下正寿氏・福田信之氏(筑波大学学長)のような、統一教会と文鮮明師の擁護者となるジャーナリストを獲得するごとにある。松下氏、福田氏は月々六十万円の手当を教会本部会計から受け取り、その他に、統一教会の指令を実行する度に、一時金が支払われるという極めて優遇された立場にある。こうした人物を獲得するため、世界言論指導者会議が開催される度に、著名ジャーナリスト、学者、文化人に執拗な勧誘が繰り返されているのである。その中心メンバーは、松下正寿氏、福田信之氏、今井久夫氏、井上茂信氏等である。
衆議院会議録情報 第102回国会 法務委員会 第8号
今井久夫は元産経新聞論説委員、井上茂信は世界日報論説委員長。
◇
これらを踏まえたうえで、福田と松下が統一教会“関係者”であることに異を唱える者はいないのではないかな。これだけの関係があって関係者でないのなら、関係者とは何を指すのかという疑問が湧く。
つまり、日本会議には草創期から統一教会関係者が加わっていたことになる。福田、松下は故人だが、それを以って日本会議と統一協会の関係が絶たれたとはいえない。なぜなら、前回記事で書いた通り、日本会議中核メンバーの偽装団体を介した統一教会との交流が現在も行われているからだ。
そんな訳で、日本会議と統一教会に接点はなく人的交流すら行われていないといった、保守派・嫌韓派が唱えがちな珍説は根拠のない流言と見做してよい。安易にこの手のデマを拡散するのだけは避けたほうが無難だろう。
続 く
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