金融不安に対するEU各国の対応に温度差がある。世界金融不安への対策は国の壁がなくなりつつあるとはいえ、違いも残る。先日かみさんと、世界通貨でもあればドル危機はなくなるのではないかとの会話があった。確かに、各国通貨による差異性による利潤動機はなくなる。従い通貨危機は発生しない。だが、ひとは地域益の認識ができるかもしれないが、地球益との認識を持つのは難しいかもしれない。
金融危機がこれからもくりかえしくりかえし起こるということは、それによってグローバル化された市場経済そのものが崩壊することはないということも意味している。それは、グローバル市場経済にとっての真の危機ではない。真の危機とは基軸通貨としてのドルの危機である。市場経済は投機そのものの上に成立している。売買そのものが投機 貨幣を貨幣として支えている予想の無限の連鎖そのものが崩壊してしまうことである。そしてそれはハイパーインフレーションと呼ばれる事態に他ならない。
ハイパーインフレーションとはひとびとが貨幣を貨幣として受け入れることを拒否し、先を争って貨幣から遁走している状態である。それは、恐慌とは逆に、何らかの理由で、世の多くのひとびとが貨幣よりも商品を欲してしまうことによって引き起こされる。そして、グローバル市場経済にとっての真の危機とは、金融危機でもなければ、それに続く恐慌でもない。ハイパーインフレーションである。基軸通貨のドル危機のことである。
このドル危機がグローバル市場経済のなかで起こるとしたら、それは何らかの理由で、世界中のひとびとが基軸通貨として保有しているドルを過剰に感じることから出発するはずである。一時的にではなく、さらに下落し、もはや基軸通貨として受け入れてはくれないのではないかとのそれが広がり、受入を拒否するようになるのである。(経済学者 岩井克人さん)。
ドル危機が起これば、基軸通貨たるドルで行われていた交易と金融取引は不可能となる。世界経済は停止する。経済がメトルダウンするということは、政府機能は停止することである。同時に、日常生活停止状態でもある。この具体的光景を頭で描くのは至難である。今までになかったことでもある。ドル建て資産はごみ証券となる。1500兆円の金融資産もだ。