天星人語

世間と空、そして(時々)海をぼんやり眺める毎日です。

【活字を散歩する】人体の核と心は見える?ー柳澤桂子さん

2024-12-23 09:09:09 | 日記帳

世界は

物質の世界、生物の世界、こころの世界に分けて、実証的な観察ができるのでしょうか。

生物の世界は、多くのことが分かってきましたが、まだ分からないことも多い。

いのちは物質であるようで、そうでないような。

遺伝子は物質のようですが、人体の核とその中にあるこころは見えるのでしょうか。

 

さて、柳澤桂子さんです。

 

あなたの本は何冊か読みました。

 

「今、私たちが地球に存在すること自体、奇跡的なことなんですね。

ヒトの固体は精子と卵子が受精して発生する。

精子は五億、卵子は四百万の中のたった一つが出会うのです。

生命は、地球に生物が誕生してから四十億年も受け継がれ、その上、生物が大量絶滅する危機を何度もくぐり抜けてきたのですからね。

なのに人間は自ら大量絶滅の危機を作り出している。

いのちの犠牲は絶えない」

(23日付日経夕刊)  

*「天星人語」、2003年3月公開

 

いのちとは何であろうか。「生物という構造の上に生じる現象」であると私は思う。体のどこを切ってもいのち”という物質は見つからないであろう。

それでもいのちはからだの隅々にまで満ちているように感じられる。

*「二重らせんの私」、198頁

自己と対象を区別して認識する思考回路が存在しなければ、私たちは食物を食べることもできないであろう。

自己意識は生存に不可欠なものである。

ところが、人間は、この自己意識を軸にして、欲望をかぎりなくふくまらせていく。

そして、この欲によって、自分の存在を苦しいものにしていくのである。

人間は欲を捨てることはできるが、自己意識までは捨てることができない。

ここに人間の限界がある。

すべての人間が自己意識をもつということは、おそらくDNAの中に自己意識の神経回路をつくる遺伝情報が記されているのであろう。

*同上、207頁

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