天星人語

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【数字を散歩する】数字で読む脳梗塞という病気

2021-06-12 13:05:00 | 医療・介護・健康

悩まされている病気のことを知りたい。脳梗塞に関する現状をまとめてみました。定番のヒトモノカネ分析です。

1 脳梗塞で亡くなった小渕首相

2000年4月1日、高齢者福祉施設にて

気づいていても見過ごしてしまう。人の心の隙に乗じて、危機は忍び寄る。

「つい軽く答えてしまった。『年を重ねれば誰でもそうなりますよ』と」。20年前の4月1日にかわした会話を思い出すたび、元厚相の丹羽雄哉氏は苦い後悔を感じる。「最近、言葉が出にくい」とこぼす当時の小渕恵三首相を励まそうと思っての言葉だった。

その日、介護保険制度が始まり、首相、厚相の2人はそろって都内の高齢者福祉施設を視察した。「国全体で長生きした人を守りたい」。そう話していた小渕氏は翌日未明、脳梗塞に倒れ、帰らぬ人となった。(写真と記事、日本経済新聞)

日本最大の権力者である、首相も勝てなかった病気だ。

2 脳梗塞による死亡人数は6万2千人

死因第3位に「老衰」が浮上!主な死因におきた変化 | はじめてのお葬式ガイド

 脳卒中(脳内出血+くも膜下出血+脳梗塞。統計では脳血管疾患)による死者は、年に11万人ほど。死亡原因別死者数の第三位だ。

 厚生労働省発表の「人口動態統計の概況」によると、平成29年(2017)1年間の死因別死亡総数のうち、脳血管疾患は10万9,880人で全体の8.2%を占めた。

 このうち、脳梗塞は6万2,122人(男性2万9,494人、女性3万2,628人)脳内出血は3万2,654人(男性17,881人、女性14,773名)、くも膜下出血で亡くなった方は1万2,307人(男性4,535人、女性7,772名)、その他の脳血管疾患が2,797人という結果だった。

 全国調査によるリハビリ病院に入院した患者の平均年齢は76.9歳で、男女比は42.3/57.7なので、女性が多い。

 要するに、高齢者と女性比率が高いという特徴がある。

3 脳卒中の発症者は、年間29万人

それでは毎年どれほどの人数が新規に発症しているのであろうか? 公的な統計は見つけられなかった。滋賀医科大学の研究調査による推計では、初発が22万人で再発が7万人だとしている。

4 脳梗塞は、要介護・要支援になる主な原因となる

出所 滋賀医科大学

また、同じく滋賀医科大学の推計によれば、脳梗塞患者の46%は、退院後の生活において、何らかの介助が必要である。重度の場合は、しゃべれない+筆談できないので、意思を伝えられない。涙をうっすらと浮かべているだけの状態になる(怖い)。いうことを聞かない体に、筆者も大泣きした。

脳卒中と認知症が2大要因
 
 

出所 日本経済新聞

人間は高齢になれば介護問題を誰しも避けて通れない。認知症と並んで、脳卒中が原因となることが多い。安全で有効な予防方法と治療方法が待たれる。これが、当事者と家族、そして社会の幸福になる。

出所 厚生労働省

さらに、総患者数(継続的に医療を受けている者)は推計111万人だ。統計で分かる通り、働き盛り(40~59歳)の患者数が少なくない。就労世代の職場復帰を支える体制は十分だろうか。またリハビリ病院現場では、女性の多さにも驚いた。

5 総病床数は減少するが、リハビリ病床数は増えている

 

出所 厚生労働省

出所 回復期リハビリ病院協会

承知の通り、国の方針により病床数は減少している。しかし、リハビリ病床は増加している。

6 脳梗塞の入院日数は、平均約21日

出所 日本経済新聞

6か月で退院するように見える。これは、回復期病院は最大6か月(通常は5か月)しか入院できないためだ。リハビリの現場で一緒だった患者さんには、まだ治療を受けたいので「療養型病院」に転院したひともいた。

7 脳梗塞医療費の自己負担は、平均約9万円

入院日数の総平均は22日

出所 価格コム

自己負担金額75万円~入院期間が5か月間

発生場所と大きさに恵まれると、(脳梗塞は)3週間ほどで退院できる。後遺症が残らないことも多い。しかし、リハビリ病院では、平均して約3か月間入院する。後遺症が残ると途端に人生が一変する。発症後の現実を受け入れられないひともいる。

筆者は約5か月間入院した。健康保険組合員の自己負担金額は総額75万円(リハビリ治療費+食事代+消耗品費+交通費など)だった。健康保険組合は月に135万円を負担していた。

なお、有休を使い切っても、健康保険組合員なら傷病手当金の支給がある。

なお、天星人語は民間の入院保険未加入であった。

補記

1996年以降、新しい脳梗塞の薬は承認されていない

血栓溶解薬は1996年以降、 t-PA(組織型プラスミノーゲン・アクティベータ)がFDAに承認されている唯一の急性期脳梗塞の治療薬である。
この薬は、 原則的に発症後4.5時間以内の対応が必要であり、実際に投与されているのは脳梗塞患者全体の10%未満。

この現状に対し、日本のスタートアップ企業である「ティムス」社が、2つの作用機序「抗炎症作用」と「血栓溶解作用」を併せ持つ新薬候補を開発した。

米製薬企業のBiogenに権利は売却され、ここが後期第Ⅱ相臨床試験以降を実施する予定になっている。

以上、株式会社ティムス社のホームページより引用。


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2 コメント

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Unknown (hirohiro)
2021-09-26 19:38:41
よくまとめましたね👏👏👏。
私は2015年脳出血でした。
なんとか社会復帰してます。
再発の無いように頑張りましょう✨
返信する
書き込み有難うございます (天星人語)
2021-09-27 09:41:38
劇的な改善は無くなりましたが、亀の歩みを続けています。
返信する

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