【記事のポイント】
・患者数は減少するのに医療費は増加が続く
・原因は後期高齢者の医療費と高額な新薬
・全世代型・応能負担型社会保障制度へ
はじめに
天星人語が目標とするのは、人間の尊厳を実現した社会です。
わたしは、70歳です。カラダには、小さな故障が起きます。
さらに、脳梗塞を経験していますから、医療との付き合いが増えました。
だからそれ相応に、医療・介護・年金医療への関心が強くなりました。
最近、新聞で「医療費の膨張」に関する記事を目にする機会が増えています。
しかしですよ、
国立長寿医療研究センターで理事長特任補佐を務める鈴木隆雄さん(73)は「様々なデータから、高齢者の身体機能が若返っているのは確かだ」と指摘する。医療や介護予防サービスの充実、健康への関心の高さが要因とみる。
*読売新聞。
年寄りの身体状態は、向上しているそうです。
だったら、医療費は縮小するでしょう。
一体全体、どうなっているのでしょう。
現状
①患者数は減少
(厚生労働省、令和4(2022)年、医療施設(動態)調査・病院報告の概況)
1日当たりの外来患者数は、約126万人(2022年)です。
ピーク時の181万人(2000年)の70%です。
入院患者数も減少しています。
1日当たりの入院患者数は、約112万人です。
ピーク時の140万人(2000年)の80%です。
ところが、医療費は膨張を続けています。
②医療費は47.3兆円に膨張
75歳未満が25万2000円、75歳以上は96万5000円
総額は47.3兆円で、22年度から2.9%(1.3兆円)増加しました。
なお、患者数のピークだった2000年国民医療費、30.1兆円の約1.6倍です。
医療費膨張の要因は2つあります。
一つ目が医療費の増加です。
背景にはがんや難病に効くとされる画期的な新薬が開発され、医療費が高額になっていることがある。近年は高額な新薬が相次ぎ保険適用されており、20年に保険適用された遺伝子治療薬「ゾルゲンスマ」の薬価(薬の公定価格)は国内最高の約1億6700万円だ。
3年には認知症治療薬「レカネマブ」が保険適用された。認知症患者は高齢化でますます増える見通しだが、レカネマブの1人あたり年間費用は298万円にのぼる。
健康保険組合連合会(健保連)が各健保組合のレセプト(診療報酬明細書)を分析したところ、
1カ月あたりの医療費が1000万円以上のレセプトが23年度は2156件で、19年度比2.5倍に急増した。月2000万円以上のレセプトは同期間に4倍近く増えた。
*日本経済新聞
医療費膨張の2つ目の要因が、高齢者の医療費です。
国民1人当たりの医療費は38万円です。
ところが、75歳未満が25万2000円で、75歳以上は96万5000円となっています。
金額の違いが大きいですね。
健保連によると、加入者への保険給付よりも、高齢者への拠出金の方が多い組合数は207で、全体の15%にのぼるそうです。
③医療費全体の負担割合
*日経メディカル
このように、税金が38%、納めた保険料が50%、そして患者が12%です。
税金割合を増やす方策は、国全体の財政制約がありますので、限界でしょう。
また、健保組合の高齢者拠出金は限界で、解散する健保組合が増えるので、税金の投入が増えます。
まとめ
どうすれば良いのでしょう。
今の増加率で、医療費が膨張すれば、行き詰まりが確実です。
負担割合を5割へ増やしても、行き詰まります。
年寄りは自分の健康維持に努力しています。
内閣府が65歳以上の男女に行った「令和4年度 高齢者の健康に関する調査結果(全体版)」によれば、
「健康について日頃心がけていること」は、
「健康診査などを定期的に受ける」(67.7%) 、
「休養や睡眠を十分にとる」(67.3%)、
「栄養のバランスのとれた食事をとる」 (65.8%)、
「散歩やスポーツをする」(50.9%) となっています。
健康に気を遣っていることがわかります。
上記に紹介した身体状態の向上と合致します。
患者数も減っているのだから、限られた患者に使う医療費が膨張している原因かと思われます。
また、医療態勢も変わる必要があります。
現状の急性期重視から、予防・回復期・リハビリ・介護・在宅を重視に転換する。
根本思想としては、個人の尊厳と自由が守られる社会が良いと思う。
現実的な解決策としては、年齢にかかわらず、支払い能力(所得だけではなく資産を含む)に応じた、「応能負担」を徹底させていくのが妥当でしょう。
【参考資料】
厚生労働省 我が国の人口について