「世界を変えたいのなら、わたしたちが変わらなくては」
社会の精神的健康は、その社会を創り上げている脳の精神的健康によって決まります。
*ジル・ボルト・テイラー「奇跡の脳」 289~290頁
神経解剖学の専門家として、わたしは脳の適応性を信じていました。損傷した神経回路を修復し、交換し、保持する能力を!
それに加え、学者生活のおかげで、脳の細胞が回復するにはどのように治療すればいいかを教えてくれる、道案内の「地図」まで持っていましたから。
*同上、333頁
この記述に彼女の奇跡のような回復理由があるように思う。
周囲の治療関係者の努力だけでは無理で、当事者の素晴らしい頭脳と努力がなければ結果に結びつかなかった。
これがわたしの経験からも導かれる答えだ。
脳出血から8年かけて復帰した脳科学者がいる
彼女は、何度か読み返している本を書いている。
そして八年をかけ、流体のように感じていたからだの感覚が、ようやく固体の感じに戻っていきました。
スラローム・ウオーター・スキーを定期的に始めました。
からだを限界まで使ったことが、脳とからだの結びつきを強化するのに役立ったようです。
今では、これが完全な人生だと思える状態で生きています。
*ジル・ボルト・テイラー「奇跡の脳」、211頁
彼女のこの本には、自分のリハビリを構想することに役立ち、元気づけられることが多い。
さて、睡眠の量よりも質に関心が向く時代になって久しい。
天星人語は、質はもちろんだが、その前に時間に関心がある。
睡眠不足になると、頭が疲れ、話す力が衰える。
分かりやすく言うと、ろれつが回らないというやつだ。
さらに、血圧にも睡眠時間が関係している。
だから、時間には注意している。
睡眠睡眠睡眠
肉体的に細胞が治癒していくには、充分な睡眠を取るのがとても大事だということを口が酸っぱくなるほど強調したいと思います。
*ジル・ボルト・テイラー「奇跡の脳」178頁
手術後の数年というもの、脳が睡眠を必要としているのを無視すると、わたしの感覚系は悶え苦しみ、精神的にも肉体的にも消耗してしまいました。
もしわたしがありきたりのリハビリ施設にいて、目の前のテレビで起こされ、薬のリタリンで覚醒され、見知らぬ人が考えたリハビリ・プログラムに従うよう強制されていたら、意識はもっと散漫になり、なにかに挑戦する気も失せていたでしょう。
*同上、179頁
そう、彼女は書いている。
著者は37歳で脳出血を起こした、「気鋭の女性神経解剖学者」(同上、養老孟司さんの解説340頁)だったそうだ。
ふたたび走ることを夢見ている
五年目の終わり頃には、岩から岩へと足が着く場所を見ないで跳ぶことができるようになりました。
とても意味のあることを達成したのです。
なぜならこの時点までは、足元を見ないとダメだったんだから。
*同上、209頁
脳卒中から六年目の出来事のハイライトは、「よいしょ力」をためて、一段飛ばしで階段を上がるという夢が達成できたこと。
いろいろと夢想することは、からだの機能を取り戻すのに役立ちます。
ある特定の課題を成し遂げたときにはどんな気がするか、ということに心を集中することが、より早く機能を回復する助けになるのです。
わたしは脳卒中をおこして以来、毎日のように、スキップで階段を上がることを夢見ていました。自由気ままに階段を駆け上がったとき、どんな気持ちだったかを忘れずにいました。
心の中で、その場面を何回もくりかえし再現し、頭とからだがそれを実現するほどに調和していくまで、スキップで階段を上がるための回路を失わないようにしていたのです。
*同上、209頁
非常に元気づけられる言葉だ。
天星人語は、「走ること」を夢見ている。
リハビリ病院でリハビリ中、リハビリセンターを小走りで走る元入院患者さんを見た。
見た瞬間、自分もあのように走れるようになりたい、と心底思った。
だから、散歩中に走るまねごとをすることがある。
だが、まだ無理。
また、こんなことも書いている。
脳の可塑性
科学者の間では、脳が、入ってくる刺激に基づいて「つながり方」を変えるという、驚くべき能力を持っていることがよく知られています。
この脳の「可塑性」により、わたしたちは失われた機能を回復することができるのです。
*同上、177頁
リハビリテーションによって脳に新しい神経回路ができるのは、脳に可塑性(状況に応じて役割を柔軟に変えるという性質)があるからです。
*「脳から見たリハビリ治療」、5頁
この脳、つまりニューロンの可塑性については、科学的な証明も進んでいる。
深い心の安らぎを見つける
脳卒中により、わたしは内なる自分を発見しました。
*同上、260頁
宇宙と一体になる、左脳と右脳の世界についても深く洞察している。
読み返すたびに新しい気づきがある。
何しろ、神経解剖学の専門家が当事者として書くので、記述は具体的かつ科学的である。
最終章の「脳についての解説」を読むだけでも一冊の脳科学本としての価値がある。
科学の本であり、健康本であり、人生論ともなっている。
*同上、茂木健一郎さんの解説、344頁
希望は捨てません。頑張ります。
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