天星人語

世間と空、そして(時々)海をぼんやり眺める毎日です。

MIRAIは予測不能ですか?ー2022年書き始め

2022-01-01 11:11:11 | 人間歴史の途中経過

謹賀新年

 

 

 今年もお付き合いをお願い申し上げます。

 「自由・平等・平和」な社会に思いを馳せながら、書いて行きたいと思っています。

 皆様と思いが共有できれば、嬉しいです。

 また、皆様が書かれたブログ等に気づきや感動を与えて頂くことを楽しみにしています。

2022年は?

 目先の関心はコロナの行方がどうなるのか、だろう。現時点で新型コロナウイルスについて科学の世界では、標準となる常説がない。2020年1月のFTには新型コロナではなく、新型肺炎と書いてあった。全体として確定した事実はないのだ。

社会と新型コロナウイルスが共生する方法は - 天星人語 (goo.ne.jp)

 ウイルスは防御を突破するために変異を続ける。まだその途中経過だから、想定外(の悪い状態。良い状態もある)が起こる可能性はある。

 さらに、テロや核戦争など人間が引き起こすことは想定(思っているが言わない・書かないこと)できる。

全体主義と原子爆弾が、現代における政治の意味は何か、という疑問に火を付ける。それらは私たちの時代の根源的経験であり、もしそれらを無視するなら、私たちは我らが世界たるこの世界に全然生きていないも同然だろう。*ハンナ・アレント 「政治の約束」207頁

 また、人間が関与しない事態が起こるかもしれない。確かに偶然と必然に満ちた人間社会である。

 人間が引き起こすことは想定できるとしても、本望としては、ぎょっとする想定外もなく23年を迎えたいものだ。22年の終わりに人間はどう振り返るのでしょう。

人間が引き起こす惨事は想定できる

 2019年、国境を超える感染大爆発(=パンデミック)が発生するとの予測はなかった。

 

 スペイン風邪当時と今、国際経済の相互依存関係と医療態勢は比較できない。貿易量と死者数が違い過ぎる。

 しかし確かに予測は難しいが、あらかじめ想定できることであった。ウイルスの歴史は長く、人間の歴史は短い(新版 ウイルスと人間)のだから、感染症の怖さはすでに筆者自身も感じていた。必然の領域であった。

 さらに、人間が引き起こす大惨事もあらかじめ想定内である。国境を越える影響の大きい国家を揺るがす規模のテロと戦争である。

人間が起こす大惨事

 ところで、「想定内であるが予想外の出来事」をブラックスワンと呼ぶ。また、「事前の予想を覆す出来事」をテールリスクと呼ぶ。 

 予測とは根拠にもとづいて、前もっておしはかることだ。予想とは前もって、起こるであろう事象の結果を思いえがくこと。また、その内容をさす。想定とはある事象が起こる場合の、場面や状況を仮に決めていることだ。要は、言わない書かないが頭の中では思っていることである。

 想定  ⇒  予想 ⇒  予測 の順に確度(いつ、何が、どこで、どの程度)が上がる。だからなるほど、現代は予測が難しくなったことは確かだ。 

 起きる場所が地球外であるか、地球であるかの違いはある惑星が地球衝突コースをとっているのが判明する。あるいは、地殻変動で地球が割れてしまうことは、いつも頭の中にある想定なのでブラックスワン事態だ。 

 以上から見えない戦争である新型コロナ感染症含め大規模テロ、そして人間が人間を殺す戦争は、ブラックスワンと呼べそうだ。想定内だが今年起こると予想できなかった出来事として、22年に現実化するかもしれない。

*最後に解説を掲載。

 

フロイト「人はなぜ戦争をするのか」を読む

話変わり最後に、年末年始に読んでいる「人はなぜ戦争をするのか」について書きたい。

この本には、アインシュタインの「人間には戦争をせざるを得ない攻撃衝動があるのではないか」との質問に答える書簡などが所収される。

心理学者のフロイトによれば、人間の欲動には2種類のものしかない。*同上24頁

ひとつは、エロスで、生を統一し、保存しようとするもの。もう一つは、タナトスで、破壊し、殺害しようとするもの。後者は自己に向かうと、自殺に結び付く。

人間には戦争に駆り立てる欲動(死の欲動、自己破壊的な欲動)がある。

もちろん、この理論は単純なものではない。

フロイトの言葉では原始状態は、力の強い者が、むきだしの力を使うか、才覚に支えられた暴力を使うことで、他者を支配する状態を指す。

*同上14頁

これは、自分の人生を自己決定できない社会=奴隷社会と同一である。

近代社会は、野蛮な封建社会(集団間や個人間で殺し合っても殺した者勝ちで社会ルールはない)から文明社会(日本の明治時代は、富国強兵・殖産興業・文明開化が旗印だった)である社会状態(構成員はそれぞれが社会契約を結ぶ)を実現しようとした。 

ところが、人間界ではそうではない野蛮な事象が続いている。

ここには、見果てぬユートピア(理念上の理性的な人間だけで構成する共同社会は現存しない)ではないかという根源的課題がある。

フロイトはもちろん社会の変化を知っている。何とか戦争を防止する策を考えている。が、人間の本姓、人間の自律した行動には悲観的である。*これまで検討してきたことから、人間の攻撃的な傾向を廃絶しようとしても、それが実現できる見込みはないという結論になります。同上30頁

一方、文化の発展プロセスにより、戦争を防ぐように機能するかもしれないと結語する。*同上38頁。なお文化とは、人間がつくりだした文明の技術を、その土地の自然的特性に適応させたながら人間が営む生活の体系。自然条件によって支配されいるそれぞれの土地が文明を受け入れて自分たちの自然条件のもとでつくりだし、発達させる生活。これは輸出入できない。生活のレベルが上がり、豊かになること。文明は、人間の発明した技術の総体。仏教・キリスト教などの宗教も精神文明という。技術も宗教も全世界に輸出され、受け入れられる特徴がある。

フロイトは文化に期待するが、人間社会は、野蛮と死の共同体へ向かうのかもしれない。人間史には恐ろしい文化を記録している。これをも想定内とするには、しんどいものがある。

人間の行動は想定できる。しかも、科学の及ばない領域が残されている、と考えていた方が良いのかもしれない。もちろん人間の心理は社会背景(歴史、文化、今の社会状況)にも影響を受けることは書いておきたい。

 

フロイトの心理学には、証明していないことが含まれるとの指摘もある。*例えば、V・Wラマチャンドラン「脳の中の幽霊」214頁

人間の意識については研究が進む。意識はどのようにして生まれて人間が意識するようになるのか。謎であるが、未来、人間が証明することだろう。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

(解説)

*ブラックスワン(Black Swan)とは、マーケットにおいて事前にほとんど予想できず、起きたときの衝撃が大きい事象のことです。元ヘッジファンド運用者でもある研究者、ナシーム・ニコラス・タレブが2007年に刊行した著書『ブラックスワン(The Black Swan)』で言及したのがきっかけで、使われるようになりました。
従来、すべてのスワン(白鳥)は白色と信じられていましたが、オーストラリアで黒いスワンが発見されたことにより、鳥類学者の常識が大きく覆されました。これにちなんで、確率論や従来の知識や経験からは予測できない極端な事象が発生し、それが人々に多大な影響を与えることをブラックスワンと呼んでいます。具体例としては2008年のリーマンショック、最近では2016年6月の英国EU離脱、12月のアメリカのトランプ大統領当選などが挙げられます。また、2020年の新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は、究極のブラックスワンと言えるでしょう。

*マーケットには大小さまざまなリスクがありますが、ほとんど起こらないはずのリスクによって暴落や暴騰が実際に発生することをテールリスクと呼びます。ちなみに、テールとは、騰落率分布の端や裾野を意味する言葉。突然の政権交代やテロなどが代表的なものです。

出所 SMBC日興証券(青字解説部分)

【参考】 

 

 

 実は、「偶然と必然」にも、大きな影響を与えられた。初めて読んだ時、がむしゃらに読んだ。

 

 

 

参考情報は、アマゾンさんのアフリエイトを掲載しています。

読者様が興味を持たれた際、参照の便宜になるよう掲載しています。


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