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記事の要点
・米国と中国の二極体制からグローバルサウスの国々が台頭し、無極化へと進む
・人間は未確定の動物であるので、未来への進路は不明確
・政治の力は衰え、社会の結束は弱まり、軍事力の影響が拡大する
・現状のブルジョア民主主義体制は行き詰まり、人間の尊厳を実現する社会(新たな社会契約理論)が求められる
全体主義と原子爆弾が、現代における政治の意味は何か、という疑問に火を付ける。それらは私たちの時代の根源的経験であり、もしそれらを無視するなら、私たちは我らが世界たるこの世界に全然生きていないも同然だろう。
*ハンナ・アレント「政治の約束」、207頁
結び 人間の群れは家畜の群れか
ニーチェよりも100年早く、カントは書いた。
すると、ときには賢明さがうかがえるところもあるが、最終的にはそのすべてが愚かしさ、子供ぽっい虚栄心、そしてしばしば幼稚な悪意や破壊欲によって織りなされていることが分かり、最後には思わず憤慨してしまうほどなのだ。
そして最後には、ほかのすべての生物よりも傑出していると思い込んでいるこの人間というものをどう理解すればよいのか、途方に暮れてしまうのである。
*1784年、カント「世界市民という視点から見た普遍史の理念」、34頁。
人間は、自由と民主主義の意義を再確認し、自由・平等・平和の理念実現に向かう必要がある。
人間の尊厳を実現する社会を実現する。
まずは、人間は意思をもって、選挙の結果で生じる状態をコントロール(管理)しなければいけない。
しかし、それは確かに奇跡に期待する*同上「政治の約束」398頁 かの気分が増す。
人間は、独裁者に自分の運命を委ねる人生のほうが楽なのかもしれない。
これはニーチェがもっとも忌み嫌った状態である。
まだ確定しない動物である人間は、「民主主義」にうんざりし始めた
それでは、現状を書いてみたい。
天星人語は、人間の歴史は途中史という認識を持っている。
日々人間の歴史は生成され続けている。
また、歴史は確定した過去の事実だ。
さらに、人間の歴史を作る主体たる人間そのものが、「まだ確定していない動物」である。
*ニーチェ「善悪の彼岸」、148頁
現段階は地球という人間の共同体が、独裁者と核爆弾、そして地球温暖化という人間史になかった、未曾有の危機にあるというのが、天星人語の認識だ。
1789年に起こったフランス革命は、自由・平等・平和が理念であった。
社会体制は、封建制度から民主主義制度に変わり、個人の政治と経済活動の自由度が増した。
政治制度としては3権分立(主権在民を基礎にした行政・議会・司法)が定着した。
それ以降、国内外の社会的課題は選挙による政権交代により微調整されてきた。これが人間歴史の途中史である。
だが、この近代民主主義はブルジョア民主主義と呼ばれる通り、少数の経済的強者と多数の弱者を生みだし、社会を分断している。
さらに、自由(統制が進む)・平等(格差は拡がる)・平和(戦争は終わらない)は、いつまでたっても実現できない状態が続いている。
だから(言うだけの)既成政党に期待するのを諦めた有権者は、不満を聞いてくれる大衆迎合主義(ポピュリズムと表現される)の新規政党(含むトランプの共和党)に、期待するようになるのは不思議ではない。
*ポピュリズムとは、大衆からの人気を得ることを第一とする政治思想や活動を指す。
だが、権力者とその取り巻きによる権勢拡大と維持への執念はすさまじい。
選挙で多数を占めた権力者は徐々に法律を変更し、人間のこころまでを縛る。
教育・芸術・文化活動は制限される。独裁政治という権力者に甘い蜜は増大する一方。世襲制の国もある。
目先の人気取りに踊る小児化した政治家が大勢を占める。それを人々が受け入れる。そういう社会になりつつある。
デマゴーグによる扇動と戦争は、紀元前のギリシャ都市国家時代から幾度となくあった。
大帝国は生まれ消滅した。
人間は止めれない。
しかし、人間には、地球規模の社会的課題を解決できるのかという根本問題が横たわったままだ。経済の不均衡発展により、各国の利害は鋭く対立する。独裁者と核爆弾の脅威は現実化するかもしれない。
最後に、地球温暖化による生存環境激変への対策は、個別国だけの対応では間に合わないだろう。
人間には新しい社会契約理論が必要との認識が(社会の共通理解として)広まるかもしれない。世界政治は無極化・混沌状態から、新しい社会契約説による統治体制が生まれるだろうと、期待している。
原因が人間(の活動)であれ固体地球自体(気候変動の原因が)にあるのにしろ、解決には、意志ある人間の行動が不可欠だ。
間に合うのか否かは分からないが、地球に生きる人間の歴史は、人間が書き続けるものと思いたい。
減少する民主主義国と増加するグローバルサウス国
さて、いま私たちの目に映る世界を眺めてみましょう。
今存在感を拡げる、グローバルサウスという国々がある。
グローバルサウスとは
▽…アジアやアフリカ、中南米などの新興国・途上国の総称。必ずしも南半球に位置しているわけではないが、北半球にある先進国に対して南にあるため「サウス」と呼ばれる。インドやインドネシア、ブラジル、ナイジェリアなどが代表的な国だ。
外交や国際会議の場で存在感を増している。20カ国・地域(G20)ではインドネシアが2022年、インドが23年にそれぞれ議長国を務めた。今年の議長国はブラジルで、25年は南アフリカと4年連続でグローバルサウスの国が務める。サウスの盟主を自任するインドは「グローバルサウスの声サミット」という独自の国際会合を開き、途上国の地位向上にも動いている。
▽…経済成長も著しい。三菱総合研究所によるとサウスの名目国内総生産(GDP)の合計は50年にかけて米国や中国を上回る見込みだ。米ゴールドマン・サックスが予測する経済規模ランキングでは、50年には3カ国、75年には6カ国が上位10カ国に入る見通しとなっている。
出所 日本経済新聞。
グローバルサウス国同士で協調行動をとるようになってきた。が、相対的な現象に過ぎない。
欧米だけでなく、非民主主義国とも関係を維持する。
そして、我が国優先なので、世界共通課題解決を主導できるかは不明。
さらに、非民主主義的な政治体制作りに傾斜する国が増えている。
米バイデン政権主催 民主主義サミット共同宣言、署名は6割のみ 足並み乱れ
BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)によるサミット(首脳会議)
プーチンが入れば、現代の世界政治を象徴する写真となる。
近未来の世界は、米中2極から無極化に向かう
最後に米中の現状を整理したい。
世界を支配できる3つの要因
①経済:世界を支配する経済(先端技術)力がある。
②軍事:世界を支配する軍事力がある。
③政治:世界を支配する政治力がある。
まず、力の源泉力である経済力は、早ければ33年に中国が米国を抜きそうだとの予想が一般である(が、予想の前提は刻一刻と変わる)。稼いだ金を原資に世界への支配力を強めそうだ。
ただし、政治不自由、経済自由から経済不自由への変化がある。統制色強い経済不自由には思考力へ制限がかかる。
社会発展の原動力は、多様性と自由な思考である。一党独裁制の中国共産党は善、それ以外はすべて悪となると、悪影響が経済だけでなく社会全体に波及するだろう。いずれ、経済力は減少する。
人間のこころは縛れない。
次に、軍事力では世界各地に軍隊を送る機動力は米国が中国に勝る。しかし、南シナ海や台湾海峡などの局地戦力では分からない。中国には地の利がある。
さらに、中国の攻撃と防衛兵器の開発速度は凄まじい。宇宙空間にある衛星を爆破する実験も行われている。台湾防衛を米国ができるか否かは通常兵器力に依存する。中国は、上記の世界支配3大要因の2つ(経済と軍事)において米国に拮抗する。
軍事に必要な資金は際限ない。無極化した世界では、同盟関係を軸に双方の安全を維持することになるだろう。
最後に、政治力だ。ここに民主主義国の魅力があるし弱点がある。独裁国に魅力を感じる人は少数である。実際、そうした国へ移民する人はほとんどいない。
世界歴史を振り返ろう。封建社会=野蛮社会は「暗黒の中世」と後世の歴史家が批評した。生存本能を根本とする社会契約説により、「自由・平等・平和」を原動力に近代社会へ人間社会は転換した。ところが、社会矛盾は噴出し、労働者が権力を握る社会主義思想が広まった。
さらに、政治体制問わず、人間社会はいつまでたっても、この理想を実現できないままだ。従い、人間社会では歴史の逆流が生じている。
実際、地球規模では、「選挙はある非民主主義国」が多数を占め始めた。非民主主義国が民主主義国を逆転した。アフリカでは、民主主義を否定する軍事クーデターが増えている。政権批判を許さない状況が拡大している。国連安全保障理事会は機能不全状態が続く。
今後、人間はどちらを選択する(民主主義か非民主主義か)のだろうか。反対を主張でき、選挙で政権交代が可能な政治制度を選ぶのか。あるいは、政権交代はなく個人崇拝が進み、世界を解釈する・ルールを決める・刑罰を下すのは独裁者一人の人間に、自分の人生を委ねて従うようになるのか。これは封建社会と教科書に書いてある。
まずは、米国と中国の社会動向次第だ。両国とも国内政治と経済に課題を抱える。バイデン大統領で時間稼ぎとなった。しかし、コロナと物価高が襲い、左右の対立は激しくなり社会分断は先鋭化する。トランプ氏が大統領に再選される可能性はある。
*トランプ氏は有罪となり投獄される可能性を排除しない。アメリカはますます、国内政治優先へ後退し、一方で中国は矛盾が増している。
世界は米中2極から、次の秩序に向かう。米中に並ぶ極たる国は(グループはあっても)、登場しない。
一国では優勢な支配権を持てず、核を筆頭とする軍事力により、他国に軍事侵攻を行う(少数)国と中立的な立場に立つ(多数)国に分かれるだろう。
政治は弱体し、社会の統合は揺らぎ、軍(と軍事会社)の支配力が広がる。
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(注)
図と写真は日本経済新聞。