【記事のポイント】
〇人手不足時代が幕を開けた
〇問題点(生産年齢人口は減少するが、就業者数は増加なのに賃金は上がらない)
〇非正規雇用者を制限すれば労働時間は増え、労働生産性は上がる
同時に、人手不足対策(=労働時間が足りない)にもなる
現状=人手不足時代が幕を開けた
すでに明らかです。
日本は人手不足の時代に入りました。
宿泊と飲食業界はじめ、介護業界の人手不足は恒常化しています。
さらに、人手不足は経済活動の障害になります。
人手不足を原因とする倒産は増えています。
それでは、日本の雇用はどうなっているのでしょう。
問題点
①就業者数は増加しますが生産年齢人口は減少です
・生産年齢人口(15歳から65歳未満の人口)は減り続けています。
一方、労働力人口(15歳以上の働く能力と意志があるひと)数は増え続けている。
働かなくてはならない理由が増えたことを推察できます。
・就業者は増えています。
男女別で見ると、女性の増え方の方が多いです。
また、15年以降正規雇用者数が微増しています。これは、女性の正規雇用者数増加が主因です。
家庭から社会に進出しているものと見られます。
定年後の再雇用者数が増えていることも就業者増加の理由です。
②増える非正規雇用者、日本が突出 賃金上昇の重荷に
非正規雇用者数の推移(構成比)
・女性の非正規雇用者数が多い。
主婦は非正規のパート、アルバイトをするひとが多いためです。
・定年後の再雇用は増えます。しかし、非正規の有期雇用(ほとんどが1年の有期契約で、
65歳まで更新し続ける)です。
・主婦が配偶者控除を受けるためと、シニア労働者が年金カットを避けるために、就労時間を調整(=働き控え)していることも、非正規(=アルバイト)が多い理由です。
求人増でも賃金上がらず 医療・介護、非正規多く
製造業からサービス業への雇用シフトは先進国で共通する。米国では同じ期間にヘルスケア・教育関連産業の雇用が20%増え、この分野で働く人の賃金は32%増えた。日本でも医療分野は市場拡大が進む。なぜ日本では賃金相場と連動しないのだろうか。
一つの理由が増加した雇用の多くを非正規社員で賄っている点だ。医療・福祉部門のパート比率は21%で製造業の2倍。経済協力開発機構(OECD)の05年の調査では日本のパートの平均給与は正規社員の48%。スイス(96%)やドイツ(74%)より低い。
女性の就業者はパートで働く比率が5割程度に達する。配偶者控除を受けるために、労働時間を減らして年間収入を103万円以内に抑える主婦も多い。同じ仕事をすれば正規、非正規の賃金をそろえる「同一労働・同一賃金」が一般的な米欧とは異なる。企業は賃金が低いパートを使い、総人件費を抑えてきた。
(青字は日本経済新聞)
③賃金が上がらない
*厚労省
・就業者数は増えますが、雇用者報酬総額は上図の通り、減少しています。
2019年は204兆円、23年は232兆円です。
*国税庁「(第11表)給与所得者数、給与総額、税額」
つまり、就業者一人当たりの収入は、長期で減り続けていることを証明しています。
ただし、近年は賃上げがあるので、持ち直しています。
その理由は、低賃金の非正規雇用者が増えたことです。
定年後の再雇用は増えますが、非正規雇用の有期雇用(ほとんどが1年の有期契約で65まで更
し続ける)です。
また、主婦は非正規のパート、アルバイトをするひとが多い。
このような働き方は、正規雇用に比べて時間当たり賃金単価が低いです。
結論=人手不足解消と潜在成長率を上げるために正規雇用者を増やす
人手不足、景気・企業業績の足かせに 非製造業で深刻に
(日本経済新聞)
厚労省によると22年の年間総実労働時間は、パートタイム労働者を含む全体が1633時間、フルタイム労働者に限ると1948時間だった。全体の時間数は20年前と比べて11%減ったが、フルタイムは3%減にとどまる。
全体の時間数が減ったのはパートタイムの比率が増えたことが主な要因だそうです。
つまり、労働時間が少ないことが潜在成長率の押し下げ要因なのです。
潜在成長率は「資本」(設備)、「労働力」(労働者数と労働時間)、そして「生産性」(時間当たりの付加価値高)の成長率の合算です。
どの要素も変えられますが、生産年齢人口が減り続け、人手不足が拡がる日本の課題は「労働力(=労働時間)」です。
非正規社員ではなく、正規社員を増やすことが潜在成長率引き上げになります。
なぜならば、短時間労働者の労働時間よりも正規労働者の方が労働時間数が多いからです。
同時に、労働時間数の増加は人手不足対策にもなります。
潜在成長率の引き上げが、日本の最大の経済課題である。
それが成長率につながります。
過去長期にわたり、潜在成長率と成長率はほぼ一致してきました。
*ただし労働力の量だけでなく質、さらに設備投資による生産性向上の課題はあります。
▼潜在成長率 企業の生産活動に必要な資本ストックや労働力を過不足なく活用した場合に達成しうる経済成長率。企業の設備などの資本、労働力、企業の技術進歩や効率化による生産性という3つの要素で計算する。
現在の経済構造を前提にした国全体の供給力として捉えられ、景気循環の影響を除いた成長の「巡航速度」を示す。景気の悪化や過熱で現実の成長率と一致するとは限らない。
(日本経済新聞)
最後に、以下の文章を紹介して、本稿を終わります。
ゆたかな社会は、各人が、その多様な夢とアスピレーションに相応しい職業につき、それぞれの私的、社会的貢献に相応しい所得を得て、幸福で、安定的な家庭を営み、安らかで、文化的水準の高い一生を送ることができるような社会を意味する。
それはまた、すべての人々の人間的尊厳と魂の自立が守られ、市民の基本的権利が最大限に確保できるという、本来的意味でのリベラリズムの理想が実現できる社会である。
*宇沢弘文「社会的共通資本」