なぜ、ヤクザが若いふたりを追っているのか、桃山は背後にある事件に知らず知らずに巻き込まれていく。保と一緒に訓練を受けた女性自衛官が涼子、自衛隊の再編・強化と今回の捕物が絡んでいることを桃山は掴むが、実際にはそれ以上の背景があったのだ。桃山に助けてもらった保と葵は恩義に感じてその後桃山が事件に巻き込まれて陥った窮地をなんども救う。それも自分たちが逃れるためではあるが、情の深さを保と蒼も持っているということ。その情の深さに涼子は惹かれる。涼子は桃山のような情の深い男に出会ったことがなかったのだ。
警察、自衛隊、ヤクザ、オウム真理教と思しき神泉教、北朝鮮、中国も絡んでの展開に、マシンガンや手榴弾、手製爆弾、アパッチヘリコプターまで登場して派手な打ち合いもある物語、著者がいつも主張する、日本の国家防衛の脆弱さと国民の防衛意識の薄さ、これがこの物語でもあぶり出される。自衛隊と警察の連携、政府と自衛隊、シビリアンコントロール、マスコミの意識などが、現代世界情勢にいかにあっていないかを主張する。
ガンダム好きの筆者が書き連ねる日本の現実に、問題を感じ共感するか、それはないだろうと思うかは、読者次第である。
川の深さは (講談社文庫)
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