意思による楽観のための読書日記

虚像の砦 真山仁 *****

TV業界の問題を中心にしながら、広告会社がメディアを牛耳っている実態、官庁が許認可権限で放送業界を監視し、「報道の自由」「中立公正」「権力の横暴監視」「メディアの情報垂れ流し」などの問題から来る、官庁、政界との3すくみ状況があることを、架空のTV局PTBを舞台に描いている。

PTBテレビのディレクター風見は、熱血報道、現場主義、事実の報道などを心がける報道部員。中東での日本人NPOからの2人とフリー報道記者1人が拉致された、との情報に情報収集に走る。自衛隊の海外派遣を進める政権を揺るがすニュースに、官邸も緊張、拉致犯人からは24時間以内の自衛隊撤退を求める声明が出されるが、時間経過と共に「自己責任」論がメディアに現れる。風見は政府による情報操作を疑い、現地に飛んで解放された3名にインタビュー、政府による情報操作の証拠を握る。

一方、PTBの報道を常々憎々しく思っている政権党の大物議員は、官庁とPTB内の権力争いを使っての情報隠蔽を工作する。これを知った風見はこれを阻止しようと奔走する。

架空の物語なのだが、TBSによるオウム真理教ビデオ事件、坂本弁護士事件を背景にした報道側の行きすぎた報道自粛や、やらせ問題、有名キャスターによる世論への影響、政権与党による報道への容喙、電通によるメディアコントロール、TV業界の下請け依存体質、TV局と地方局の問題、TV社員の高給と財務体質の脆弱さ、などなど、多くの問題をすべてあぶり出している。ハゲタカはNHKでドラマになったが、この「虚像の砦」をドラマにする勇気があるTV局がもしあったら尊敬できる、と思うほどの徹底したマスコミ批判になっている。批判だが冷たくはなく、熱血報道の記者が主人公、応援もしているのだ。

ハゲタカも面白いが、これはそれ以上、真山仁シリーズの一番のでき、だと思う。
虚像(メディア)の砦 (講談社文庫)

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