共通するのは、
1. 日本に帰っても自分の居場所などない。(貧困、長男相続次男以下は丁稚奉公、両親死亡など)
2. 現地での活動に参加(ビルマ、インドネシア、ベトナムなどの独立運動)
3. 女性と知り合い結婚(現地人から紹介、子供をもうける)
戦後の日本の復興と発展を知り、ある人は里帰りを何度かしているがやはり元の場所に戻っている。便利になった日本は住みにくそうだというのだ。自然がない、効率一辺倒、知り合いがいない、親類が冷淡など。経済発展は人間の幸せにプラスに働くことはないのか、というのが本書のテーマなのだろうか。女性と暮らし、子供や孫に囲まれた生活を捨てたくない、これが自分の幸せなのだと皆口をそろえて言う。幸せとは子孫を残し、子供や孫たちが幸せになることである、というのが多くの証言者の言葉である。
あまりに多くの戦友たちの死を見てきた人たちの後ろめたさ、「自分だけが生き残ってしまった」「生きて虜囚の辱めを受けず」という日本軍の教えはここまで人々の心に根ざすのか、という問いかけでもある。イチローや松井が大リーグで活躍するニュースには目を通して喜んでいる、というのも共通する証言である、やはり皆さん日本が好きなのであり、それでも日本には帰りたくない、こういう心境なのである。本書は研究所ではなく証言集であるだけに、何の先入観もなく証言を取りまとめている、これがこの本のおもしろさであろう。
帰還せず―残留日本兵六〇年目の証言 (新潮文庫)
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