これで本当に事件は解決かと思われたが、次の犠牲者は朝子だった。早瀬を愛する朝子、朝子に乗り移ったナニカは朝子の心に影響を受ける。朝子は心の底から早瀬を愛していたので、ナニカにもその愛が影響したのだ。ナニカの力は弱り、最後には朝子の体から水になって排出された。水は飛鷹と早瀬によって蒸発され、ナニカはこの世から消滅した。しかし、水蒸気も空から雨になって落ちてくるかもしれない、という余韻を残しながら、三本指のサインはWaterを示す手話、という意味であったことを飛鷹の娘チカが思いつく。奇跡の人、ヘレン・ケラーが最初に覚えたサインがダブリューだ、と言う話し。
ナニカとはこの世に巣食う悪意の象徴であり、人の脳に存在する悪意を好物としてこの世に降り立った悪意のシンボルであった。殺人、戦争などという大きな悪意だけではなく、邪な心は小さくても多くの人の頭に宿る、それをナニカは餌食にしていたのだ。そのため善意の被害者の脳は食べられないし、朝子の無償の愛には敵わなかった。目に見えるものしか信じられない刑事の飛鷹と、UFOの存在を信じる早瀬、直感的に生きる朝子、そしてカルトに興味を持つ飛鷹の妻美冴、そして頭が柔らかく賢い娘のチカ、この世には悪意はあっても、多くの個性のぶつかり合いと組み合わせで成り立っている、ナニカは結局はこの世の強さには敵わなかった。この世にもある「アナザ・ヘブン」、多くの人が願う平和や愛情こそが本来のヘブンの構成要素であるというお話である。
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