意思による楽観のための読書日記

風花病棟 帚木蓬生 ***

著者が小説新潮に1999年から2008年まで毎年掲載していたシリーズ短編をまとめたもの。戦争中の父親世代が従軍医として戦地に赴いた際の記録をたどったチチジマ、震える月、大学病院、開業医などのストーリーなどなど、医師としての良い思い出やストーリーが綴られている。印象的な短編がいくつかある。

「藤籠」、患者の一人が病室から見える山肌の藤が滝のように見える、と言う。春の5月頃にそれがまた見られればいい、という希望を抱いているが、病状は思わしくない。医者は先輩の医師から教わった言葉を思い出す。「処方薬の中で一番効くのはなんたって『希望』なんだよ」その藤のある山に藤籠を作るために伐採に行く機会にも、病室から見える藤だけは残そうとする。しかし患者は4月に息を引き取る。

主人公は「チチジマ」では従軍していた父島で航空機で墜落した米軍兵士が救助されるのを目撃するが、戦後の学会で偶然その空軍兵士だったという医師と出会う。
その後家族ぐるみの交流を続ける日米の医師の話。

「震える月」の主人公の父親は太平洋戦争で従軍医師としてベトナムにいた際にベトナム人の少年兵士タムの命を救う。戦後医師として学会に出るためベトナムに行くことになる主人公はタム少年の息子が医師として同じ学会に出席することを知り再会する。そこで父親の知らざる一面を知る話。
いずれの短編もすっと読める良い話ばかり。
風花病棟

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