意思による楽観のための読書日記

グローバリゼーション 人類5万年のドラマ ナヤン・チャンダ ***

すべてはアフリカから始まったとして、ゲノム分析でルーツが分かる話を紹介。Y染色体マーカーを遺伝子分析するとその種類が分かり、ルーツもある程度特定できるという。筆者のM168マーカーは3万1000年から7万9000年前にアフリカで生きていた男性を起源とし、筆者が持つその他のマーカーM89(東地中海レヴァント・マーカー)、M201(1ー2万年前に北インドのインダス川流域に達した)、M52(インド西部)と至る遺伝子分析により、アフリカのアダムが中東を経由しインドに至ったことが分かったとのこと。同様にオーストラリアマーカーといわれるM130、ユーラシアマーカーのM20、イラン・中央アジアのM9、シベリア南部から中国西部のM175などがあるという。こうした人類の広がりは食料調達と気候変動がもたらしたが、人類拡大のエンジンとなったのが、商人、布教家、戦士、冒険家だという。ローマ帝国の商人がインドとの通商を確立する上ではモンスーンの利用は不可欠であった。エジプトとインドの間を帆走するのに30ヶ月かかっていたのが、モンスーン(季節風)と潮流を活用することで3ヶ月へと劇的に高速化、18世紀に蒸気船が出現するまでその輸送速度は3ヶ月であったとのこと。モンスーン活用の発見前は1年20隻だった交易船が発見以降、ほとんど毎日出入りすることとなったとのギリシャ地理学者ストラボンの記述もある。ずっと時代は下って20世紀、大西洋をまたがる電信ケーブルが光ケーブルに変わられ始めたとき、1983年にはNYとLondonの間で同時に接続していた人数は4200人だったものが、1990年代に敷設されたケーブルにより130万人に激増、これは新たなモンスーンの発見であるとしている。商人と同様、布教、戦士も世界を駆けめぐっている。こうした世界の攪拌は民族分布の思いがけない様相を示している。ギリシャ以外の最大のギリシャ人都市はメルボルン、カンボジア人いとってはロングビーチなど。ビジネスでは低価格ホテルの経営者はインド系グジャラー人、食料品経営者は韓国人、レストラン経営は中国人などなど。そして帝国の拡大は遺伝子の拡大でもあった。チンギスハーンのY染色体はアジアに住む男子の8%のDNAに存在する、これは1600万人に相当する、とのこと。そしてウイルス、細菌による民族征服である。武力よりもウイルスの方が他民族征服の力になっていたこともよく分かっている。 ジャレドダイアモンドの銃・病原菌・鉄―1万3000年にわたる人類史の謎とは違った切り口、マクニールの「疫病と世界史」とも違う、壮大な人類の拡散物語の解説本である。上下で5000円はちょっと高いか。
グローバリゼーション 人類5万年のドラマ (上)
グローバリゼーション 人類5万年のドラマ (下)

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