意思による楽観のための読書日記

鬼麿斬人剣 隆慶一郎 ***

鬼麿は刀鍛冶、その師匠は稀代の名工源清麿、天保13年に清麿が死ぬが、そのいまわの際の遺言が金に困って作ってしまった駄作の回収、もしくは廃棄であった。ヒントは13年前に清麿がたどった旅の道すがらであり、中山道を通って野麦峠から金沢、福井、そして京とつながっている。鬼麿はそれだけを頼りに旅に出る。鬼麿の剣の腕前は大刀で鍛えられた試し切り、身長は6尺5寸、体重は32貫という巨漢、3尺2寸5分という長い刀が武器だ。

山窩一族といわれる山人のメンバーとして暮らした経験がある鬼麿、旅の途中に山人の子供「たけ」と知り合う。さらに追っ手である伊賀忍者の服部頭領の娘おりんとも道連れになり旅を続ける中で、師匠の名作と駄作の両方に出会う。駄作は折って捨て、名作はそのままにするのだが、持ち主にしてみれば「駄作」といわれて簡単に折らせてくれるわけではない。そこが物語のストーリーである。

著者の特徴の一つが公界の人たちを登場させること、このお話では山人がクローズアップされている。江戸幕府の体制の中でも公界の人たちは体制に背を向けて、もしくは無視、あるいは身を隠して生きている。網野善彦が無縁・公界・楽という著作を発刊しているが、そのなかで体制の外の人たちとして解説される海人や運送業、など士農工商ではくくれない人たちが大勢登場するのだ。

荒唐無稽ともとれる人物設定もあるが、源清麿は実在の人物、時代設定も史実に沿っているという、なぜか引きつけられる小説である。

隆慶一郎全集第六巻 鬼麿斬人剣(第3回/全19巻)

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