意思による楽観のための読書日記

「副作用のない抗がん剤」の誕生 奥野修司 ****

そんな抗がん剤があれば良いのに、と誰でもが思う。P-THPというのがその名称。抗癌剤による治療の苦しみは、ブログや書物でもよく目にする、それはがん細胞は正常細胞からできた遺伝子異常であるからで、がん細胞を攻撃する薬なら正常細胞も攻撃してしまい、副作用というよりその薬剤効果そのものの作用であるから。がん細胞は代謝の頻繁な細胞によく発生するのは、細胞の代謝に伴う遺伝子複製のプロセスで発生するコピーミスから遺伝子異常が発生して、発ガン性物質や免疫細胞活動低下、悪環境などの複合的な原因でコピーミスの修正ができきれない場合があるから。高年齢化に伴いコピーミス確率と修正失敗確率は同時に上昇するため、年齢が多くなる速度の三乗の速度でがん細胞発生確率は高まるという。

そしてこの抗癌剤P-THPを開発したのは前田浩、がんの基礎研究で国内最高の賞といわれる日本癌学会の吉田富三郎賞を受賞している。また2016年にはトムソン・ロイター引用栄誉賞を受賞、ノーベル賞受賞者予想の常連となっている。P-THPの特徴は、薬が腫瘍だけに届く仕組みを持っているから。前田浩がP-THPを完成させたのは2012年、しかし既存の抗がん剤を加工して開発したため価格が安く、利益をあげられないため2017年時点では製薬会社に相手にされていない。

がん細胞は正常細胞の遺伝子異常で、その原因は1.有機塩素系化合物やトランス脂肪酸などの発ガン性物質 2.肝炎ウイルスや最近が引き金になるもの 3.DNAの自然発生的な変異 これらに共通するのが活性酸素だと前田浩は言う。

一方、がん細胞の特徴は1.増殖能力が無限 2.他の細胞への浸潤力が強い 3.離れた場所にある別の細胞に転移できる 正常細胞はコピー回数が50回を超えるとそれで死んでしまうのに対し、がん細胞は無限に増殖、血管やリンパ節に浸潤して拡大し、ある特定の部位に発生したがん細胞は異なる部位の細胞に血管やリンパ節を経由して転移する、こうしたメカニズムは全く解明できていない。30億年を超える生命誕生からの進化過程でがん細胞も生き抜いてきたことを考えると、がんを撲滅するのは生命誕生から進化してきたプロセスをすべて解き明かすに等しいのではないかと、無力感をも感じることがあるという。

それでも、発生してしまったがん細胞の増殖を抑制し、副作用がない抗がん剤を開発できれば、一定のQOLを維持しながら残る人生を楽しく過ごせる、つまり治癒ではなく共存は可能ではないのかという希望を持てる、これがP-THPである。

活性酸素の消去、発生抑制には抗酸化物質が重要であり、ビタミンCやビタミンE、カロテノイド、フラボノイド、ポリフェノールなど従来から広く言われている野菜、果物を多く摂ることが重要。特に野菜を生で食べるよりも熱を加えて摂取することが抗酸化力向上には有効だという。熱で壊れると言われるビタミンCも、野菜に含まれるビタミンCは熱してもほとんど壊れないで残る。フラボノイドやポリフェノールが多く含まれるのは紅茶、玉ねぎ、りんご、緑茶。免疫力活性化のためには発芽玄米。ターメリックやクルクミンも活性酸素の消去には有効だ。避けたいのが酸化した食用油、リノール酸が含まれた大豆油やコーン油などの食用油で、オレイン酸やα-リノレン酸が多いオリーブオイルが推奨される。本書の内容はここまで。

日本人の二人に一人は死ぬまでにはがんに罹り、三人に一人はがんが原因で死ぬと言われる。本書の内容はがんが治る抗がん剤ではなく、副作用のない抗がん剤である。その上で、がんになってしまわないようにする心がけと、なってしまってからの対応が重要だということ。つまり、癌の原因解明と治療法確立にはまだまだ時間がかかりそう。だから、がんにならないように知識を増やして、しかし楽しみながら一生懸命健康に心がける。それでもなってしまった場合には、楽にその後の人生を過ごせる道を探そう、ということ。できるかな。

がん治療革命 「副作用のない抗がん剤」の誕生


↓↓↓2008年1月から読んだ本について書いています。

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