日本会議に関する書物は以前にも読んでいる。1997年に設立された日本会議の主張と実態について解説したもの。第四次安倍内閣のメンバーの4分の3は日本会議メンバーだという。その主張と理想はどういったものか。
本書によれば、組織設立は意外に新しく橋本龍太郎が総理大臣を務めていた頃。その源流をたどると、戦前に国家神道の中核的役割を担っていた神祇院がGHQによる神道指令で解体を余儀なくされたときに、設置された神社本庁と宗教団体である生長の家がある。神社本庁はその後神道政治連盟と日本を守る会と日本を守る日本会議に分流、生長の家も日本青年協議会と日本を守る会に分流を経て、それらすべてが統合して設置されたのが日本会議である。
これらの組織が行ってきた運動としてあげられるのが2月11日の「紀元節復活」。日本書紀に記された神武天皇即位の日付を国民の祝日としようというもの。実際には「建国記念の日」として制定された。もう一つが「元号法制化」、昭和の元号は太平洋戦争後も継続して使われてきたが法的な裏付けがなかったが、1979年国会で可決、元号が法律で規定されることとなった。「靖国神社国家護持法」は、日本遺族会が提唱、靖国神社を宗教法人ではなく費用を国家として予算を負担する政府管理法人とするもの。1974年まで6回の法案提出があったが、政教分離の憲法に違反するとして成立していない。その後1979年に靖国神社において東京裁判でA級戦犯となった戦争指導者たちが合祀されたことが報道されると、昭和天皇はこれを不快としそれ以降御親拝をしなくなった。「教育勅語復活」、これも最近自民党議員から度々出てくるキーワードで、明治神宮のHPでの口語訳によれば「国民の皆さんは、子は親に孝養を尽くし、兄弟・姉妹は互いに力を合わせて助け合い、夫婦は仲睦まじく解け合い、友人は胸襟を開いて信じ合い、自分の言動を慎み、全ての人々に愛の手を差し伸べ、学問を怠らず、職業に専念し、知識を養い、人格を磨き、さらに進んで、社会公共のために貢献し、また、法律や、秩序を守ることは勿論のこと、非常事態の発生の場合は、真心を捧げて、国の平和と安全に奉仕しなければなりません」前半部分は良いようなことも言っているようでそれらは結局、個人の人権よりも重要なのは非常時には国に命を捧げることであるということ。戦後教育勅語は、1948年憲法違反であるとして国会で違憲と位置づけられたが、日本会議としてはこの精神を復活させたいという。そして憲法改正、これが現時点での日本会議最大の目標となっている。
日本会議の目指す具体的目標は次の6つ。1.美しい伝統の国柄を明日の日本へ 2.新しい時代にふさわしい新憲法を 3.国の名誉と国民の命を守る政治を 4.日本の感性を育む教育の創造を 5.国の安全を高め世界への平和貢献を 6.共生共栄の心で結ぶ世界との友好を
こうした日本会議が目指すものは、「個人」から「人」、「公共の福祉」から「公益と公の秩序」であり、憲法に緊急事態条項を憲法に定めるというのは「非常事態になったとみなしたときには、国民は法律が定めるところにより、緊急事態宣言の趣旨に従い、国家その他公の機関の指示に従わなければならない」ということで、GHQが憲法制定で目指した「非軍事化」と「民主化」の柱を無力化し戦前への回帰を封印する機能を解除することである。以上が本書の内容。
安倍内閣への支持、不支持は現時点では拮抗しているようであるが、私個人は不支持。このような日本会議の理想を日本で実現してほしくはない。それにしても日本会議が日本の頂点に祀り上げている天皇陛下、今上天皇も多分皇太子も秋篠宮も、今では日本一の平和主義者であり日本国憲法支持者だと思うが、日本会議メンバーはそこをどう考えているのか知りたいものだ。